第37話 赤い果物
ライによれば洞窟より、この山脈一体の方がバジリクストーンが生息しているようである。
「そろそろお腹が空いてきたよ」数日間歩き続け、僕は疲労困憊となっていた。
『はあ、レイトは疲れるのが早いなあ』グラッドはどうかしているのだろう。毎回僕が弱音を吐いてもグラッドは活力が漲っている。
その時後ろから声がした。
「それなら分担しますか?レイトさんは食べ物を探して…グラッドさんはバジリスクトーン退治。私はレイトさん一人だと心配なのでついて行きますね」僕はこの案はとても良い案だと思った。
これだと僕とライが食べ物を探している間に討伐クエストもクリアできる。
僕を舐めないで欲しいというところではあるが、食べ物を持ち帰るのには2人いた方が当然有利だろう。
『ライ、お前天才か?』
「へ?」
『じゃあ手分けして、終わったらまた此処に戻るように‼︎』グラッドは快活に前へと進んでいった。
「あいつ、心変わりが早いな…じゃあ僕達も行くか」僕は呟いた。
「はい、行きましょう!」
「あ、これ使わなくなったのでレイトさんにあげます」ライは僕に木製の鞄を手渡した。
鞄の裏にはアランド王国製を表す風の紋章が刻まれていた。
「ありがとうライ。君もアランド王国出身なんだね」
僕とライは食べ物を探しに、西の方角へと進んでいった。
________数時間後
霧がかかっていた一帯から遠く離れた得たいの知れない森へへと辿り着いた。
森のすぐ隣には透き通った水の流れる川と、川の奥には人の住んでいない古屋を僕とライは目にした。
木と木の隙間から太陽の光が差し込んでいる。
後ろを見ると何かの赤い実が何個も実った木が無数に生い茂っている。
ライは目を輝かして森周辺を探索していた。
その時ライから突然声がした。
「あ、レイトさんあれはカダナヒスですよ」ライは赤い実に指を指した。
どうやらあの実はカダナヒスというようだ。
「ほら、収穫しよう」横を見るとすでにライは数十個ほど赤い実を鞄に収穫していた。
僕も慌てて赤い実を木の鞄に詰め込んだ。
_______
「ふう、ある程度収穫できましたね…」ライは呟いた。
数十分で100個ほどの赤い実が収穫できた。
僕とライはお互いの鞄に詰めたカダナヒスの個数を数えた。
「2、4、6、8、10、12、14…」正確に数えると176個も収穫していたのだ。
思った以上の数に僕達は目を丸くした。
「凄いねライ。美味しそうだよ。何よりも、早く食べたい」僕はどうしても食欲を抑えることは出来なかった。
「この実は簡単に焼くだけで美味しく調理出来るんですよ」ライの知識量にいつも感心させられる。
「へえ、そうなんだ」僕は枯れ木や木の枝を集めて火を起こし、赤い実を満遍なく熱した。
実は少しずつ色を変えていく。
僕が起こした炎が周囲を照らしている。
ライは一つの実を口にした。
その時ライの表情がガラッと変わる。
「世界一美味しい~‼︎コイツはやめられないです!」ライは今までで1番とも言える喜びを見出した。
それほどか?と思いながらも僕も一つ口に入れた。
久しぶりに食べる食べ物は人生で一番とも言える美味しさであった。
___その頃グラッドは…
レイトとライはまだかとグラッドは途方に暮れていた。
日が沈んでもレイト達は中々帰ってこないのだ。
どうせ食べ物が美味しすぎて永遠に食べ続けているのだろうと思っていたが、その予想は命中である。
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