第36話 霞む景色に


フォルター王子が石の国へと向かう一方。

 同時刻、レイト一行は頂上に向かい歩みを進め、高度は遂に雲が手に取れそうな程に達していた。


▣▽▣▽


 霧が目の前を覆い、真っ白な世界が広がっていた。まぁ、かろうじで周囲に何があるかは分かるんだけどね。


「ねぇ、グラッド。どうでも良いんだけどさ……」


 僕は、さっきとても重大な事を思い出した気がした。本当は、思い出さない方が良かったかもしれないけれどね。


「───バジリスクストーンってさ、僕たちが倒さなきゃいけなかったんじゃないの?」


『へ?』

「あ、そう言えばそうでしたね」


 グラッドは、完全に忘れていたのか目が点になっている。対するライは、すっかり忘れてたよ、笑って納得していた。


『え、だってさっきライがバジリスクストーンを倒したよ!』

「忘れたの? 依頼は、僕とグラッドの2人で受けたんだよ。ライが倒したら無効だよ、無効!」


「あ~、そうですね。私が必死だったのもありますが、倒しちゃったものは、倒しちゃいましたし」


 ごめんなさいねぇ~、と少し冗談交じりに口元に手を当てている。そういうところが、女の子っぽいんだよな。グラッドは、この事を知らないんだから、もう少し警戒して欲しいんだけど。


「そうなんだよ、ライ。僕らは君への報酬をどうしたらいいかい? ほら、元はバジリスクストーンの魔法石が報酬だったからさ」


 どんなもん?  、と聞くもののやっぱり他のもので代用しないといけないからな、と思っていたら彼女からは、とんでもない言葉が返ってきた。


「? なにを言っているんですか? あんな洞窟なんかよりも、ここら一体の方が、バジリスクストーンの縄張りですよ?」


「え?」

 そうなの?


『あ、そう言えば、登り始めたころ自分で言った記憶あるわ』


 あれ? 言ってたっけ?


 ライの当たり前ながら衝撃的な言葉に、僕とグラッドは頭が真っ白になり石と化していた。

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