第35話 王子フォルター


ブーストクオーツは砂の国の砂の下に眠ると言う古代都市への道を開く事が出来ると言う強力な魔力増幅の魔法石だ。


ブーストクオーツを手に入れる事。それが王族である私、フォルター-プロテ-ベインの使命なのだ。我が国を滅亡から救うにはそうするしかないのだから。


その奇跡の魔法石は砂の国と石の国に住むと言う魔女が持っていた。


砂の国の我が王族はその古代魔法文明の生き残りとされ、代々古代の文献と遺跡の守護者の地位を引き継いできた。


しかし、私の祖父が王の時代、遺跡を守るべき祖父は何故か古代遺跡の発掘を行ったのだ。

そこから砂の国は大きく変わった。変わってしまったのだ。


聞くところによると、発掘を始めた古代遺跡に突然巨大な砂嵐が起こったかと思うと、そこには2人の少女が立ってたと言う。


その少女はこう言った「光の国を暴くものは何人たりとも許す事が出来ない」と。


古代遺跡の発掘に携わっていたもの達は数人を除いてほぼ全員が消えた。


生き残ったものによると「消えた」そうなのだ。


我々は彼女達を畏怖の念を持って魔女と呼んだ。


魔女は古代魔法都市の遺跡から現れたのは間違いない。一体遺跡の中でどうやって彼女達が生きていたのか?

それは遺跡を調査しなければわからないだろう。


しかし、このままでは遺跡の発掘はもう行われる事はないのだ。

魔女の1人であるナノはその力で祖父を退位させ、私の父を隷属させて傀儡の王にしてしまった。

そして砂の国に多くの魔物を呼び寄せ、二度と遺跡の調査を行おうとしようとするものが出ないようにしたのだ。



そもそも砂の国の王は古代魔法文明の遺跡の守護者たる役割を持っている。

王家に伝わる文献にもその事がしっかりと書かれている。


その役割を放棄して王命で遺跡の発掘を行おうとした我が祖父に原因があるとしても今の状況は我慢できない。


今の砂の国は魔女が居座ったせいでもう無茶苦茶なのだ。

魔物のせいで交易が滞り、コブ馬を使った砂の国の伝統的商業が衰退している。


このままでは古代遺跡どころか、砂の国が遺跡になってしまうだろう。


その魔女ナノの力が弱まった。

理由はもう1人の魔女であるミシャが魔女の力の源であるブーストクオーツをグラッドと言う男を使って魔女ナノから奪ったからだと聞いた。


ブーストクオーツがあれば古代遺跡の入り口を開き魔女の秘密がわかるかもしれない。


私は傀儡の王である父に命じられ魔女ナノの駒使いのような事をさせられている。


しかし、それはチャンスでもある。魔女の秘密を知り、いつかこの状況を変えると思っていた。そのチャンスが到来したのだ。


私はミムスと言う石の国の冒険者にナノの名代の王子と言う肩書きを使ってグラッドからクオーツを奪うように依頼した。

報酬は1000ペルサ。第三者王子である私が出せる最大の報酬である。


しかし、約束した日になってもミムスは現れなかった。

そして今日、とうとうグラッド達がやってきたわけだが、ミムスは既にブーストクオーツを持って消えてしまった後だった。


奴はもっと高く売れる相手を知っているのだろう。売られる前に見つけ出さねば。


私は石の国への道を急ぐ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る