第31話 魔法生物
第31話 魔法生物
「ミムスを雇ったのは僕だ。あいつは信用できると思ってた僕が馬鹿だったんだ」
「気にしても仕方がないよ。ミシャが何とかしてくれるって。あんな凄い魔法石を作れる人なんだよ」
僕はミシャの事は何も知らないけど、グラッドを励ますためにそんな事を言った。
「そうだな。じゃあ行こう!ここからはもっと厳しい山越えになる。人里がない代わりに魔獣がいる。気を引き締めて進もう」
僕たちは山越えを目指して歩き出す。
グラッドは病み上がりと思えないくらい元気だ。魔法石って万能だよね。死にかけていた人間とは思えない。
逆に僕はかなり足が疲れてきて足が重い。
「そろそろ休まない?」
「もうばてたのか??ライはどうだ?休みたい?」
「まだ大丈夫だ」
ライはそっけなく答える。こうしているとグラッドが倒れて慌てていた時の女性らしさは無い。
ライは何故自分の事を隠そうとしているのだろうか?
やはり、ライを信用しすぎるのはダメだと思う。
グラッドを助けようとしていたのは本心だったと思うけど、ミムスと共謀していないと決まったわけじゃない。
そんな事を思いながら歩いていると、山の斜面に洞窟があるのが見えた。石の国の時のように整った洞窟ではなく、ここは土山を掘ったような洞窟だ。
「この洞窟で少し休憩しよう。雲も出てきた。もしかすると雨が降るかもしれないからね」
確かに空には先ほどはなかった黒い雲が立ち込めている。
一雨来るのかもしれない。
歩いている時は暑くて気づかなかったけど、風が少し強くなりひんやりしている。雨に打たれると体温を奪われてしまうだろう。
「そうだね。僕もここで雨雲をやり過ごした方がいいと思うよ」
「僕が中の様子を見てくるよ」
グラッドが洞窟に入って行こうとする。
「少しお待ちください。洞窟はバジリスクストーンが住み着く場所としては最適です。私は石化を無効にする魔法石を持ってるので、私が入ります」
ライがグラッドの肩を持って洞窟に入るのを止めて、自分が行くと言い出した。
「確かにそうだね。ライってかなり優秀な冒険者だったんだな」
グラッドの言う通りこういった注意ができるのは確かに優秀だと感じる。
石化無効の魔法石???
その言葉に引っかかる。
そんなものが必要と言う事はバジリスクストーンのストーンとは••石化••?
「バジリスクストーンって、石の化け物ではなく、相手を石化する魔物なの?」
「知らなかったのかい?
正確にはバジリスクストーンの片目は魔法石なんだ。石化の魔法石を使うのがバジリスクストーン。
ケルチと同じように古代に人がバジリスクと言う毒蛇を元に魔法によって生み出した魔物だと言われているんだ」
「古代文明では魔法で生物を改変していたと言う事!?」
「そう言われているね」
「でも、目が魔法石って、そんな生き物なんてあり得ないよ」
「生き物というより魔法生物=魔物だね。魔物も稀に大きな魔力を手に入れると繁殖するんだ。
バジリスクストーンが繁殖したとすれば何か大きな魔力源がこの山に入ってきたのかもしれないね」
「何だか信じられない話だな。僕の国では魔法は書物の中だけの話だったんだから。
砂の国や石の国の魔法には驚かされっぱなしだよ」
その時、空が光って点滅する。
グラッドやライの顔が一瞬白く輝いた。
バリバリバリ!!ドーン!!
遅れて音の衝撃派がやってくる。
「雷か!近いな、これは大雨が来るぞ!」
「では、先に私が入ります。何かあれば合図をしますので」
ライが剣を片手に洞窟のなかへ踏み込んでいく。
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