第27話 ミムスの裏切り


楽勝だったな。俺はグラッドから奪った虹色に輝く宝石を眺める。

ブーストクオーツは太陽の光に当たると虹色に輝くらしい。これは高値になる。


ブーストクオーツは魔力を大幅に増幅させる魔女の秘宝。

これを砂の魔女に売ったらいくらで買ってくれるだろうか。

いや、宝石商に持って行ってもかなりの値がつくだろう。


俺の頬が自然と弛んでくる。


俺が魔法石を使えないんて事はない。人前では使って来なかっただけだ。


そして今回は暗黒の魔石を使わせてもらった。


この魔法石は一定範囲の人間などの生物に幻影を見せる効果がある。

くらった奴は目の前に黒いモヤがかかったような状態になるらしい。

相手の視覚を奪えばどんな奴も簡単に片付けられるからな。

グラッドも楽勝だった。


グラッドには悪いがあいつはもう助からないだろう。俺の剣があいつの胸を貫いたのだから。


少し罪悪感はあるがまあいい。

後はブーストクオーツをいかに金に変えるか。それだけだ。


————


周囲を探してもミムスの姿は見当たらなかった。


僕が戻って来るとグラッドの体から大量の血が流れ出していて、ライが必死に止血しようと自分の衣服を切り裂き包帯のようにグラッドの体に巻いている。


「えっ!?グラッド!!!」


「何してたんですか!?止血を手伝ってください!」


ライが甲高い声で僕に助けを求めてくる。


僕は慌ててグラッドに駆け寄り、切り裂かれた衣服を傷口に重ねるがすぐにそれも赤く染まってしまう。


どんどんグラッドから血が溢れて来るのだ。

どうしたらいいんだ!!!


このままだとグラッドが死んでしまう。僕が慌てふためいている今もグラッドの血で布が染まっていく。


ふと、僕はナノに錬成してもらった魔法石の事を思い出した。願い事を叶えてくれるのならグラッドの命を救えるかもしれない!


すぐに魔法石を取り出して両手で包む。そして強く強くグラッドの命を助けてほしいとお願いした。


すると、魔法石が緑色に輝き、しばらくして光が消えた。


「今の光は何!?グラッドの傷口が塞がっているわ!!」


そうライが驚きの声をあげる。


僕も慌てて傷口を確認すると、確かにさっきまで溢れて出ていた血が止まっているのだ。


「良かった。この魔法石のお陰だよ。ふーー」


僕は安堵のため息をつきその場に座り込んでしまった。


「本当に良かったです」

ライもホッとした表情を見せる。


彼女はどうやら本心でグラッドを救いたいと思っていたようだ。


「ライは女性だったんだね。どうして今まであまり話をしてくれなかったんだい?」


「それは、、。いえ、、あの、ミムスは何処にいったのでしょう」


「そうだ。ミムスが見当たらないんだ。ライは本当に何も見ていないの?」


「はい。突然黒い霧のようなものが現れて、何も見えなくなったんです」


また魔物だろうか?


「グラッドが意識を取り戻すまで、とりあえずここでキャンプしよう。ミムスがもし無事なら戻って来るはずだし」


「そうですね。では私がタープを貼ります。火をお願いしてよろしいでしょうか?」


そうして、僕たちは山の裾野あたりでグラッドの回復を待つことになった。


グラッドに何があったのか?

本当にライは何も知らないのだろうか?

ミムスは何処にいったのだろう?



あれからライはまた口数が少なくなった。


ライはウソは付いてない気がするけど、何かを隠しているのは確かだ。



そして、不安な夜が訪れる•••

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