第26話 古の文明都市と魔女姉妹



 「わざわざそれを言いにここへ?あの調査団は光の都市を探しているのよ?だから沈めたの。」

「それは光の都市を守護する事とは違う。あなたは人々に魔力を向け、ケルチに変えてしまった。サンドワームの数を増やすことまでして何が守護なのよ!」


 時折ミシャの身体に稲妻のような光が走る。


「ナノ、いい加減砂の国から手を引きなさい。私達は光の都市を守護することを誓ったはず。それが何?砂の国の国王をそそのかして今じゃ砂の国の王女気取り?砂に沈めた人々を元に戻して。」

「ミシャ、それを言いにここまで来た訳?あんただって今じゃ石の国の王女気取りじゃない。」

「ナノ、それは違う。私が古の文明都市の者なのは隠して過ごしている。あなたのように魔力を人々に向けたりしない。さぁ沈めた人々を元に戻すのよ!」


 砂の国の王城では魔女姉妹が言い合いになっている。

 砂の国国王や付き人達は遠くから恐る恐る眺めるばかりだった。


「残念だけど、あんたも知ってる石の国の坊やのせいで、望む通りにはいかなくなったわよ。私の唯一の魔法石を坊やが奪った。もう砂の国を監視するのが精一杯。当然、沈めた者達も光の都市も元には戻らない。私にはもうどうでもいいこと。砂の国を監視できるだけで構わない。」


 ミシャはナノが言っていることを理解した。

(ま、まさかグラッド……。彼がブーストクォーツをナノから奪った?……あの魔法石が無ければ光の都市は元に戻せない。)


 「ナノ。今までの行い、反省しなさい。あなたはもう光の都市を守護する資格はないわ。あなたとは決別するしかなさそうね。」

「だとしたらどうするつもり?あんたに砂の国を好きにはさせないから。」

「結局ここで存分に魔力を使いたいだけのようね。いいわ。私がブーストクォーツを使い人々を救う。次にあなたを消し去る、そして光の都市を元に戻すわ。」

「随分ご機嫌な計画だねミシャ。あんたにそれが出来ると思ってるの?無駄よ無駄!たとえブーストクォーツを手にしても光の都市までは戻せない。それはあんたが一番理解してるじゃない。光の都市は私達2人の魔力を合成しなければならない、そうでしょ?」

「守護者を放り投げた者が言う言葉じゃないわナノ!私一人でやり遂げる。あなたとはもう姉妹でも何でもない、消し去るまで!」


 ナノはミシャの言葉に一瞬怯んだ様子を見せた。が、直ぐに答えた。


 「ではミシャ。あんたが一人で出来るかどうか見届けてやるわ。」


 ミシャは既にナノの言葉が耳に入らない。

ローブを翻し、金色に輝きだした魔法石を頭上にかざすとミシャは姿を消した。


____________________

 「き、君は一体何をしたんだ。グラッドは倒れてるしミムスの姿が見当たらない。」


 ライは無言のまま呆然としたままだ。

 レイトはライの肩に手を掛け、前後に揺すりながら言う。

「ライ、しっかり!グラッドやミムスに何かしたのは君なのかい?答えてよ!」


 呆然としていたライが我に返った。


 「わ、分からない。目の前を黒い霞が覆った。その後何が起こったのか…本当に分からないんだ。ごめん、レイト。」


 レイトとライの初めての会話がこれだった。


 「とにかくグラッドを!僕はミムスを探しに辺りを見てまわる。」


 (大変な事になった。ライがやったにしても本人は分からないと……。何が起こったのか……。)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る