第23話 朝日


僕たちは厳しい山脈を越えるための装備を整えて出発した。


その山脈の中腹にはバジリスクストーンがいると言う。ギルドの依頼にもなっているので護衛を雇う為にも討伐する事になった。


山頂はバジリスクストーンなんかよりも強力な魔物が住んでいるので、護衛が必要なんだ。


ギルドで雇った冒険者は2人。


1人は魔法石の使い手でさまざまな魔法石を使う冒険者で名前はライと言う。


もう1人はグラッドの知り合いで魔法石は無いが大きなシールドを背負った戦士だ。ミムスという名らしい。


彼らとは山脈を超えた所までの契約で、討伐したバジリスクをの素材や討伐の報酬を彼らに渡すという約束でかなり安く雇う事が出来た。


その代わり是が非でもバジリスクストーンは退治しないといけなくなったんだけどね。

グラッドは自信たっぷりだから何とかなるんじゃ無いかな。


遠くに高い山々が見える。

あそこを超えていくなんてちょっと信じられないけど、砂の魔女がいつ襲ってくるかもわからない砂漠を行くよりはマシだろう。


僕たちは一路山脈の峠道を目指して夕暮れ時から歩き出す。

購入した白く輝く魔法石で夜でも視界は良好だ。


深夜に岩山に四角く掘られた洞窟のような所で休む事になった。


石の国は要所要所でこう言った旅人が泊まるための岩の洞窟があるらしい。


それにしても、石の国の石を切り出す技術には驚かされる。

洞窟の壁は綺麗な直線で出来ているんだ。ほんと、どうやって切り出したのだろう?


「凄いやこんな風に岩をくり抜くなんて」


「石の国は魔法石があるからね。簡単なことさ。だからバジリスクストーンも僕らの手にかかれば大した魔物でもない。

魔物で言えばサンドワームの方が強い魔力を持っているからよっぽど危険だね」


四角く掘られた岩の洞窟の中央部には石が積み上げられた釜戸の炉のようなものがあった。


僕はその釜戸に近づく。


「ちゃんと釜戸まで用意されてるんだね」


「ここは旅人が安全に泊まれるように用意された洞窟なんだ。だから釜戸は当然用意されてるよ。そこでお湯を沸かそう。

でも、山に入ったら何もないから厳しいぞ。覚悟しておいて」


「僕だって厳しい砂漠を超えてきたんだ。大丈夫だよ」


「まあ、君も今は魔法石があるしね」


そう僕にはミシャに錬金してもらった魔法石がある。

まだこの魔法石にどんな力があるのか?全てを知っているわけではないけど、何とかなりそうな気がするんだ。



次の日、夜明け前に僕たちは出発した。

グラッドがあの化け物に変化する可能性も少なからずあるから太陽はできるだけ避けたい。


いよいよ日が登ると言う時にグラッドが立ち止まる。


「もし僕がケルチになった時は、僕を置いて先に行っててね。この道を進めば山脈の麓に着くまでにもう一つ洞窟があるから、そこで待ち合わそう」


「グラッド。呪いの噂は本当なんだな」


雇った護衛の冒険者であるミムスがグラッドに尋ねた。


「ミムスはまだ見た事がなかったね。

砂の魔女ナノにケルチになる魔法を掛けられたのは本当さ。砂の国から離れたからもう効力は無いとは思うけどね」


「あの魔女は本当に危険な奴だな。何故俺たちが砂漠に入る事をあれだけ嫌うんだ?」


「さあ、僕にはわからないな。魔法と関係しているんだとは思うけどね」



そして、とうとう太陽が地平線から顔を表し、その朝日が僕たちを温め始める。


グラッドは•••。


ケルチに変化しなかった。


「ほらね。砂の魔女の力は予想通り衰えているようだね。さあ!バジリスクを狩ってあの高い山々を超えていこうか!」

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