第19話 調査団
グラッドによるとアランド王国に行くには僕ら調査団が通って来た砂漠を超えるルートか、険しい山脈を超えるルートしかないとの事だった。
石の国のことが僕たちのアランド王国に伝わっていなかったのは地形的な理由が大きいらしい。
しかし、今砂の国に戻るのは危険すぎるだろう。山脈を超えるルートを通るしかない。
「グラッドは太陽の光であの化け物になるのに、長い旅なんて大変じゃない?」
「僕の事を心配してくれているんだ?大丈夫だよ。ケルチになっても君を襲ったりしないし、今の砂の国の魔女は魔力増幅の魔法石を持っていないからね。
魔女の呪いもそこまで遠くまでは及ばないはずだ。石の国から更に離れれば問題ないと思うよ。
どちらにしろ山越えの装備が必要だし、まずはそれを揃えに行こう」
グラッドは思考が早い。僕をどんどん引っ張って行ってくれる。
でも何故この魔法石はアランド王国、しかも僕が所属していた研究所(を指しているのだと感じる)を指しているのだろう?
僕が砂漠の調査団に加わったのは研究所の研究内容にある。
僕の研究所では古代の魔法具の研究が行われていたんだ。
でもアランド王国には魔法というものは存在しない。
砂の国から持ち込まれた魔法具はあったけど、僕たちアランド王国の人間にはその魔法具を使う事は出来なかったんだ。
伝承からその魔法具が、古代文明のムンドの矢と呼ばれる魔法兵器だという事だけはわかっていた。
そこで伝承にある古代文明の都市を見つけ発掘できればその魔法技術の事がわかるかもしれないと調査団が組まれる事になったのだが。
「レイト君。君は今回派遣される古代文明の調査団に加わってくれたまえ」
突然、上司からそんな事を言われた僕は気が動転した。
まだ研究所に来て日が浅い僕が調査団員に選ばれるなんて思ってもみなかったからだ。
「僕が調査団にですか?!古代の文献もまだ読めない僕がですか?」
「それでも君が必要だと判断されたようだ。上の考えている事はよくわからん。
とりあえず君は調査団に加わってくれ。
今から調査団長のラーセル大佐の元に向かうんだ」
「えっ!あのラーセル大佐が調査団の団長なのですか?」
ラーセル大佐は巧みな騎兵運用よって、侵略して来た北の魔族の大軍から国を救った救国の英雄だ。
彼女の元で調査団に加われるなんて夢のようだ。僕は心躍らせてこの任務に着いたはずだった。
しかし、今は調査団がどうなったのかもわからない。
グラッドがいてくれたおかげでなんとか命を繋いでいる。
そのグラッドが遠い西の果てのアランド王国まで共に旅をしてくれるという。
なんて良い奴なんだろう。
僕は心の中でグラッドに感謝しつつ山脈を目指した。
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