第14話 砂漠の中の魔法石と石の国の魔女ミシャ
錬金されたエメラルドは同じ色と輝きを保ち、その中に虹色の微かな光が渦巻いて見えた。
ミシャにも用途は分からないらしかったが、不思議な輝きの魔法石に変わっていた。
「ミシャさん、ありがとう。」
レイトはしばらく砂漠の中の魔法石に見惚れていた。
「……。ううん……。」
『どうした?レイト。』
「さっきまで何か食べたかったのに、お腹が満たされてるんだ。」
「それもその魔法石の力かもしれませんねレイトさん。原石の力が強いのね。色々な特色を持つ魔法石なのかもしれないわ。私も作った甲斐があったってものね。」
『そうなんだね。じゃあ赤い魔法石は必要なくなった。良かったじゃないか。』
ミシャは両手で下がるような仕草で2人を下がらせると、12歳くらいの少女の姿をしていたミシャの身体は、金色のオーラを纏ったかと思うと、直ぐにその姿が成人女性の魔女の姿に変わった。
『ミシャ、何を?』
「砂の国に出掛けてくる。ナノを懲らしめなきゃ。レイトさんの仲間の調査員達の居所を聞き出してくる。」
「ミシャさん、僕達はどうすれば?」
金色のオーラに包まれたミシャを見上げながらレイトは尋ねた……が、グラッドが口を挟む。
『レイト、ミシャに任せて。ナノのお姉さんなんだ、問題ないよ。僕らはこのまま街へ向かおう。』
「仲間達はどうしてるかなぁ……。」
『……。……レイトの仲間は……諦めた方が良さそうだよ。サンドワームに食われたか、砂の国の魔女の思惑通り砂の奥底に閉じ込められている。』
ミシャは2人の話を聞いてか聞かずか、少し眉間に皺を寄せた。
「レイトさん。いずれまた会いましょう。」
ミシャは金色に輝く魔法石を頭上にかざすと、吸い込まれるように姿が消えた。
「ミシャさん!……き、消えた。……グ、グラッド!」
『あれ?あれはミシャの力。念じた場所へ移動できるんだってさ。』
「と、言う事は砂の国の魔女の元へ行ったの?」
『ミシャが言ってたろ。懲らしめに行くって。』
「あー益々仲が悪い魔女に見えてきたよ。しかもミシャさんは成人の魔女じゃないか。いきなりで情報整理に戸惑ったよ。」
グラッドは陽の光が入らない所に座ると話し始めた。
『10日前くらいだったかな。ラクダに乗った旅商人がサンドワームに襲われてた。それを助けて道案内をしている側にナノ、あ、砂の国の魔女ね。奴が突然僕に魔法攻撃をしてきた。上手く避けてはいたのだけど、砂に足を取られて魔法攻撃を受けたんだ。その時、ケルチに変えられてしまった。しかも鞄に封印までされた。僕は傷だらけの身体を引きずり、ナノから命からがら逃げ回って、君と会ったのがあの建物の二階さ。』
「そ、そうだったんだ……。」
レイトも隣りに座り込み、
「それで君は砂漠で何をしてたの?」
『僕は砂漠で迷ってしまった人達の道案内。貝殻の鞄と魔法石はミシャがほとんど用意してくれたんだ。』
レイトは、錬金してもらった砂漠の中の魔法石を手に、じっと見つめている。
『ミシャが言ってた。君の魔法石は何か困った時に助けてくれるって。』
「うん、大切にするよ。……。ミシャさんの少女の姿は石の国でのシャーマンの姿、なんだね。」
『そうさ、ミシャは国の皆に好かれてる。さ、レイト。陽が落ちたら街へ出掛けよう。』
遠く砂漠の丘は、夕日を受けて長い影を落としている。
心なしか風が冷たくなってきた。
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