第11話 境界の大岩


グラッドと僕は道標の魔法石を頼りに石の国に向けて走っていた。


グラッドは砂の上を走るのに慣れているのかとてもイキイキしているけど、僕は砂のせいで上手く走れない。

ついていくだけで精一杯だ。


このままじゃグラッドがケルチとか言う怪物になってしまうかも知れない。


「グラッド、僕の足じゃ間に合わない!先に行って!!」


「先にかい!?

レイトのために石の国に向かってるんだよ?

でもそうだね。もうすぐ日が昇る。

君に道標の魔法石を預けるから、僕の位置を道標にして後からついて来て」


「わかった!グラッドはどこに向かうんだい?」


僕はグラッドから道標の魔法石を受け取ってそう訊ねた。

魔法石が本当に案内してくれるのか一抹の不安があったからだ。


「この先に境界の大岩って呼ばれる大きな岩があるんだ。そこの横穴に向かうよ。

そこなら太陽が入ってくることもないからね。

じゃ!先に行って待ってるよ」


そう言ってグラッドは今まで以上のスピードで走り去っていく。


走るスピードを僕に合わせてくれてたんだね。これでグラッドがケルチと言う怪物に変わることはないはずだ。


僕は道標の魔法石にグラッドの居場所を念じる。魔法石が短い光を発するとそれはグラッドが走る方角をさし示していた。

魔法石はしっかり動作しているようだ。


僕は安堵とともに疲れがどっと出てしまった。あとはゆっくり走って行こう。



朝焼けの光が明るさを増し、いよいよ太陽が昇るという頃、

走りにくい砂の大地がいつのまにか硬い大地に変わっていた。

所々に大きな石のようなものまである。


そして道標の魔法石が指し示す先、朝焼けの光に照らされる大地の中に黒い大きな影が見えた。


境界の大岩だろうか?


僕がその大岩を眺めていると、ついに太陽が地平線から姿を現す。


太陽に照らされた大地は今までいた砂漠とは全く別の姿を見せている。


境界の大岩と思われるものはハッキリと大きな岩の塊である事がわかり、

そしてその先にも大きな岩が幾つも大地から顔を覗かせていて、さらにその先には黒い山が見える。


砂漠が終わったのだ。

さあ、グラッドの元に行こう。

僕はまた走り始める。



—————



たどり着いた境界の岩はかなり大きな岩だった。

その岩の北側には人手によって見事にくり抜かれた大きな穴が空いていて、穴の高さは人の身長の3倍はありそうである。


僕がその岩に開いた横穴に近寄ると、穴の中から話し声が聞こえてきた。


どうやら声の主はグラッドと女性のようだ。

グラッドは誰と喋っているのだろう??


疑問に思いながら穴の中に入ると、そこにはグラッドと見知らぬ少女の姿があった。

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