第10話 道標の魔法石と砂の国の魔女

 

「グラッド!早くしないと魔法石がみんな沈んでしまうよ。」

『早く鞄に放り込んで。』


 砂の国の魔女はどこからか2人を監視していたようだ。

 魔法石を砂の中に沈めようとしている。


 レイトとグラッドは砂をかき分け、魔法石の回収に必至だ。


 「もうケルチに変化したグラッドは見たくない。明るくなるまでに石の国まで行きたかったのに。」


 『ふう、何とか全部回収した。レイト、早くここを去らなきゃ。石の国に向かう石畳の道まで急いで!』

「その石畳の道まであとどの位ー。」


 砂に足を取られながら、息せき切って一心不乱に2人は走った。


 『砂の国にいる以上、魔女の千里眼からは逃れられない。砂が魔女の力を補って、国中の砂の上は魔女の監視下だよ。』

「何の為に魔女は監視するの?一体魔女って誰さ?」


 小走りになってグラッドに聞いてみた。


 『魔女は王家をそそのかして、実質の支配者なんだ。砂の国の魔女には、石の国の魔女という姉がいる。石の国の魔女は、国の民と仲良く過ごしている。シャーマンに成りすまして、錬金術を使い、魔法石を作ってくれる。この魔法石があるから砂の国に出掛けられるんだ。レイトも会えばわかる。』


 「魔女の姉妹か……。なんか仲悪そうだな。」


 小走りの2人はかなり進んできた。しかし東の空は茜に染まり始めている。


 「おい、グラッド。もう陽が昇るよ。こんな砂漠の真ん中じゃ民家もなければ暗い場所もない。ケルチに変化してしまう。急ごうよ。」


 立ち止まったグラッドが言った。


 『大丈夫だよレイト。君を襲ったりしない。』

「そうしてもらわないと困る。それよりケルチに姿を変えた君は見るに堪えないよ。」


 グラッドは手にしていた道標の魔法石をレイトに見せた。


 『これが道標の魔法石。行きたい場所を念じれば、光の筋で案内してくれる。さぁ、行こう。』


 レイトはへとへとだったが、道標の魔法石を見て安心したのか、また小走りに進んでいった。

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