第8話 星空の宵に
「捕食者~?化け物だろ!」
『どっちも一緒だよ!』
グラッドは、冷静に僕の言葉に突っ込んでくる。
「どうするんだよ!追い付かれるぞ!」
『分かってるよ!』
「あ~、もう限界!走れない!」
『うっさいよ!』
うだうだ文句を言う僕に対し、グラッドは何か策があるのか貝殻の鞄から何かを取り出した。
『……このまんま、巣穴に帰れると思うなよ!』
鞄の中から、黄色の透明な宝石を取り出したグラッドは瞬時にサンドワームの方に振り返った。
「は、なにを――」
『これをくらえぇー!!』
グラッドは、その宝石を右手で突き出す。
次の瞬間、
ピカ―――――ン。
宝石から強力な閃光が放たれた。
ゴゴォ⎯⎯⎯。
光を浴びたサンドワームは、呻き鳴き始め、砂の中に潜っていく。
「へぇ?戻ってく?」
『うん。そうだよ。サンドワームは、光に弱いんだ。だから、夜の砂漠は危険なんだよね』
へぇ~。そうなんだぁ~。ってそうじゃない!じゃあ、次の日でも良かったのに!
その素直な気持ちをグラッドに伝えた。
『はぁ?どこかの誰かさんが、腹が減ったとか、言うから石の国に向かっているのに……』
「あ……ごめん。僕が勝手だったよ」
そうだよ。無理を言ったのは僕の方だ。僕は、文句が言える立場ではない。
『まぁ、いいよ。今から、続けて歩いても君が疲れてるから非効率だしなぁ』
ここで野宿するか、とグラッドは考える様子で呟いた。
「えェ?!サンドワームは?」
『あ、それは大丈夫。この、光の力が宿った光石を使えば一晩くらいは明るいままだから、安全に夜を越せるよ。それよりも、君は食べ物がなくても大丈夫?』
「あぁ。大丈夫だよ」
『そう、じゃあテントを出すから組み立て手伝って』
「わかった」
今、どのくらいまで歩いてきたのだろうか。そんなことを思いながら空を見上げると、底には日の光を反射する粉々の硝子の破片を散らしたように、星がキラキラと輝いていた。
「綺麗だな」
『でしょ。僕、この星空がお気に入りなんだ』
確かに、この星空はどこでも見れるものじゃないだろう。正直言って、独り占めしたいくらいだ。
『もう、夜も遅い。そろそろテントに入ろう』
「そうだね」
こうして、砂漠を彷徨って絶体絶命だった僕は、奇跡的に1日を終えることができた。
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