第6話 石の国の者


僕は出したくは無かったが、空腹を減らす魔法石と聞いて母から貰ったエメラルドを差し出した。

少年がそれを見るや、

『これも立派な魔法石に変えられるのに……交換していいの?』


 思いもしない答えが返ってきて僕は戸惑った。


 「変えられる?この宝石をかい?」

『うん。僕の国のシャーマンに錬金してもらえば、きっといい魔法石に変わると思うけど。それでも交換したい?』


 「君の名前を聞いてなかった。なんて?」

『僕はグラッド、グラッド=ホールディン。石の国の住人さ。』

「石の国?知らないなぁ。そこにいけばこのエメラルドを魔法石に変えてくれるの?」


 僕は交換するより魔法石に錬金する方が魅力を感じた。

 (空腹はつらいけど、この宝石がどんな魔法石に変わるのかは興味がある。)


 『北に輝く星に向かって一日も歩けば僕の石の国だよ。君、レイトって言ったね。君は僕の別の姿を見てしまった。そして鞄の封印を解いてしまった。君には僕と行動する責任が発生したんだ。』

「た、確かに札を剝がしたけど……。」

『君には何か不思議な力がある。そうでなきゃ僕の鞄の封印は解けないんだ。僕と石の国に行くか、ここでこの赤い魔法石と交換するか。僕は石の国に一緒に向かうことを勧めるけど?』


 グラッドが持つ貝殻の鞄には幾つもの魔法石らしきものが入っていた。グラッドは鞄を閉じながら、

『赤の魔法石なら石の国でも手に入るよ。下へ降りたら、少しの食糧位は見付かるんじゃない?』


 言うとグラッドは梯子を下りてしまう。


「おいおいグラッド。怪我をしていたんじゃない?」言いながらレイトも梯子を下りた。


 『怪我はもう大丈夫、君が声を掛けてくれたおかげで回復したし、人の姿に戻れた。……さて、食糧食糧。大抵、砂の王国では地下に貯蔵しておくんだ。地下なら常に一定温度だから食糧の保存がきく。』


 僕は感心しながら床をくまなく探した。


 リングの取っ手を見付けて開けてみる。

干し肉やら根菜の類が木箱に入っていた。


 グラッドはしたり顔で、

『言ったとおりだろ。さ、腹ごしらえして石の国までの干し肉を鞄に詰めたら出発しよう。』


 僕は干し肉を食べた。

 「君は食べないのかい?」

『僕には不要だよ。赤の魔法石があるから。』

「そうだったね。便利な魔法石もあるもんだ。」


 レイトが空腹を満たして準備を終える。

そして2人は砂の建物から出てくると、既に陽が傾いて、北の方角には1つ輝く星が瞬いている。


 『このままあの星に向かって歩けば石の国だよ。行こう!』

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