第4話 少年
「?!」
腕に赤い液体が付いた瞬間に感じた痛みは一瞬にして無くなった。よくよく考えれば、当たり前の事なのだ。1週間もの間何も飲まず食わず、炎天下の砂漠を彷徨い続けたのだ。温度感覚が狂っていたっておかしくない。
そう思い、僕はもう一度赤い液体に触れた。
───ッヒヤ
「冷たい……」
思わず呟いてしまう程、その液体は冷気を纏っていた。
そういえば、あの生き物は?
急に存在感が無くなったあの鱗の生き物はどうなった? そんな疑問が頭をよぎったと同時に僕は、あの生き物がいた方に目をやった。
『う、ぅ……。ケホッ、ケホッ』
「……は?」
何故僕の口からこんな間抜けな声が出たかって? いや、誰が見ても、これはそんな声が出ると思う。
だって、そこにはもうあの生物が居なかったから。
もっと言うと、赤い液体が滴る少年が座り込んでいた。
艶のあるカラスの羽のような色の髪に、金の月のような瞳。まるで、天から遣わされた人間のならざるもののようだ。
「……ど、どうしたんだい?」
僕は取り敢えず声を掛けてみることにした。正直言って、さっきまであの生物だったかと思うと声が震える。
『? あなたは、誰、ですか?…ケホッケホッ』
僕の問いかけに対して、全くもって答えになっていないが、どうやら言葉は通じるようだ。
超音波のような、でも人間の声である事は確かな声は俺に問いかけた。どこか具合が悪いのだろうか、咳をしている。
「僕はレイト。レイト=ルーカス。ここの砂漠を調査している研究員なんだ。と言っても、年若で雑用ばっかりだったけど」
『ふぅーん』
そう、俺は研究員だ。調査団に所属していて、この砂漠を調査していた。しかし、約2週間前はぐれてしまったのだ。
「あのさ」
『なんで、すか?』
少年はだるそうに僕を見ていた。
そして言ったのだ。
「食料と水ってある?」
と。
図々しいと思うが、これは僕の死活問題なのだ。
仕方ない、仕方ない。
本当に、大事な事なんだ。
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