12.リオのこれまで
「ねえ、リオ。今まで聞かなかったんだけど、リオがこれまで何をしてきたのか、教えてくれない?」
「なんだ、急にー? いきなりどうしたんだー?」
リオは少し不安げに顔をこちらに向けた。
「いや、これまでお世話になってきたけど、ボク、リオの事についてあまり知らないなぁと思って」
「そういう事かー。ちょっと長くなるかもしれないけどいいかー?」
「うん。話せる範囲で教えて」
スッキリした顔になったリオは、いきなりとんでもない話から始めだした。
「よし、じゃあ初めは本名だなー。本名はリオレウル=ハンティングって言うんだー。だからリオなー」
ビックリしたね。まさか信頼した間柄でも話すことを躊躇われる本名を言っちゃったんだもん。そこまで信用してくれているなんて、本当にありがたかった。
「いいの? 本名を名乗っちゃって?」
「まぁ、アキだから大丈夫だろー。
うちの家系は名前の通り狩猟専門なんだー。ドラゴン族では武闘派になるかなー?兄弟は4人いて、オレは末っ子だー。
武闘派と言ってもオレはドジで弱かったから、あまり狩りには連れて行ってもらえなかったなぁー。
今から5年のほど前だったかなー? 突然神から
ドラゴン族が指名されるなんて、500年前の外の理の者の侵略以来だったからなー」
「ということは、それだけの危機がこの世界に訪れようとしていたってことだったんだね」
「そうだなー。そして討伐対象だったのが先日やり合った大魔王ムーオだー。
指名される3年ほど前にレオナード王国の魔法研究所で大事故があって、その時に汚染された大量の黒魔力が放出されてなー。
それで大魔王が誕生してしまったんだー。こいつが非常にやっかいだったのは、知力が高くて大量の魔獣を統率し、戦術を組み立てて襲ったってところだなー」
ある意味人為的に大魔王を生み出してしまったんだ。これって、再現性あるから悪用されかねないんじゃないかな? ちょっと心配だね。
「そんな事故があったんだ。他にもピースメーカーはいたの?」
「オレ以外にあと4人いるぞー。人間と獣人だなー。単純な攻撃力だともちろんオレが最強だったけど、それぞれ強みがあったから、パーティー組んで立ち向かっていったなー」
「その人達にも会ってみたいなぁ〜」
「大丈夫だぞー。今は解散してるけど、元いた場所に帰ってるはずだし、道中通ることもあるからなー。
話に戻るぞー。オレ達が先頭に立って討伐部隊を編成したんだけど、大魔王は空中庭園っていう空飛ぶ古代文明の遺跡要塞を復活させやがったんだー」
「古代文明の遺跡要塞···。それって、もしかして対外の理の者用の?」
「おおっ?よく気づいたなー。その通りだぞー。
それで地上からの攻撃が届かない上空から無差別攻撃を始めたんだー。当然、そんなところに乗り込むためにはオレが必要だったってわけだなー。
4人を乗せて空中庭園に突撃していき、オレ以外の4人が手分けして空中庭園の武装をつぶして陽動し、その間にオレが大魔王と一騎打ちになったってわけだー。結末はもう知ってるから省くぞー」
「すごいや! まるで小説みたいなお話だけど、現実に起こった出来事なんだね」
「まぁ、結果的には勝利したことになってるけど、いったん逃げようとしたのはちょっと恥ずかしいかなー?」
ちょっと情けない顔をするリオ。でも、撤退ってよほどの決断ができないとできっこないことだから、極限状態で撤退の決断を下せたリオはスゴいと思うよ!
「そんな事ないよ!死んでしまったらどうすることも出来ないんだもの。ちゃんと引き際を見極めて脱出にも成功できたんだから、それでいいんだよ!」
「そう言ってくれるとありがたいぜー。まぁ、力を使い果たして役割を他の4人に引き継ぐってのは重荷にならないか心配だったんだけど、まぁ結果オーライだったかなー?」
「そうだよ!良かったよ。これで世界が平和になったんだから、大成功ってことで」
「ありがとよー。気にしてたから、話すことで肩の荷が降りたわー。役割を果たしたことだし、明日からはアキの旅に付き合わせてもらうぜー」
「うん! よろしくね、リオ!」
序章 完
『世界を救ったリオ達のお話。このあと世界中を旅すると劇団とか吟遊詩人とかが、リオ達の活躍ぶりを披露している場面に出くわすことがあって、その度に美化された話を聞いたリオは恥ずかしそうにしてたなぁ』
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