9.ねんがんの魔法を使用するぞー!(初級一般魔法編と思いきや···?)

 生活魔法を習得し、次は一般魔法だ。ただ、リオはあんまり一般魔法は知らないそうだ。



「悪いけど、オレはどちらかっていうと創作魔法の方がメインなんだよなー」


「そうなの?やっぱり一般魔法よりも威力があるから?」


「それもあるんだけど、整調者ピースメーカーとして行動する時っていうのは人間では対処できないことがほとんどなんだよなー。そうなると、一般魔法は通用しにくいっていうのもあるし、最大の理由は···詠唱を覚えるのが苦手なんだよ!」



 ズコー!なんじゃそれ!それじゃあ一般魔法は教えてもらえそうにないかぁ。



「ま、まぁ、創作魔法もかな~りクセはあるけど使い勝手は最高だぞ!作り方のコツさえつかんでしまえば威力や持続時間とか何もかも自由にできるからな!」



 若干開き直ってるリオを冷ややかな目で見るボク。確かに一般魔法よりも創作魔法のほうがおもしろそうだし、魔法を習う順番が決まってるわけでもないから、詳しいリオにご教授願おう!



「わかった。じゃあリオ。創作魔法について教えて」


「おうよ!そうこなくっちゃなー!最初に説明した通り、創作魔法は魔法の原点だ。魔力を消費してイメージを具現化してるんだー。まぁ、口で説明するよりも実際に見てもらったほうが早いかもなー。ちょっと広い場所に移動するぞー」



 今までいたところはリオの拠点だ。場所を変えるってことは、それほど威力があるって事なんだろうか?


 10分ほど歩いて森を抜けたところは岩だらけの荒れ地だった。



「ここなら多少な事なら大丈夫だろうなー。まぁ、今のオレの魔力量だとアキの100分の1以下だから大規模な魔法は使えないけど、少しの魔力量でちょっとした威力の魔法は使えるから、まずはそれを見せてやるぞー」



 リオの魔力量って今はそんなに少ないんだ···


 それなのに今から魔法を見せるって、ムリしてないかなぁ?


 そんな心配をよそに、リオは涼しげな顔で魔法を使おうとしていた。


 次の瞬間、リオの目の前にこぶし大より一回り大きい岩が現れた!それが勢いよく射出され、少し離れた大岩にドーン!と大きな音を立ててぶつかった。土煙がはれると大岩にはかなり深い穴が空いており、その周囲には無数のヒビが入っていた。



 す、すごい···これが、創作魔法なんだ。



「とまぁ、こんな感じかな?これは岩砲(ロックキャノン)って勝手に命名して使ってるオレの創作魔法だ。簡単だから他にも使えるヤツはいるけど、人によって威力はバラバラだなー」


「すごいよ···これが創作魔法なんだね」


「そうだぞー。一般魔法だと石弾(ストーンバレット)って言って、この半分以下の威力ぐらいだな。創作魔法で大事なのはイメージだ。それさえきっちりできていれば威力や弾の数を増やしたりできるようになるぞー。ただし、威力を上げたり弾の数を増やす場合は相応に魔力消費量がはね上がるからなー。イメージと威力、そして魔力使用量が一致して初めて魔法として発現するから、創ったからといって訓練してないといざって時に役立たないからなー」


「なるほどね。さっき無詠唱だったけど、魔法名はあるのに言わないんだね?」


「あくまで大事なのはイメージだぞー。魔法名があるのは、とっさに使用する際に名前があった方がすぐにイメージしやすいってだけだから、言うか言わないかは自由だぞー」


「そういうことね。インデックスとして魔法名があるって事だね」


「いんでっくす?それも前の世界の言葉か?よくわかんねーけど、まぁそういうことだなー」



 なるほど、これはマンガやアニメの技をイメージしたらすぐにできそうかな?幸いにもスマホあるからすぐに調べられるし、それを見ながら創作するのも面白そうだね!とりあえず開発は後回しだ。まずはリオが放った岩砲(ロックキャノン)をマネしてみるか。



「じゃあ、ボクもさっきのリオの魔法を再現してみるよ」


「おう!ここなら思う存分試せるから、好きにやっていいぞー」


「ありがとう!ではさっそく···」



 イメージが大事だ。まず石だね。こぶし大よりちょっと小さいぐらいの硬い石を思い浮かべる。角がとがってるほうが威力ありそうかな?砕石っぽいイメージがはっきりと浮かんできた。すると、魔力を消費した感覚がやってきた後に、目の前にイメージした通りの砕石っぽいとがった部分の多い石が出てきた!



「いいぞー!イメージが具現化できたなー。それを今度は打ち出してみるんだ」



 つかみはOKのようだ。さてこの石、どうやって飛ばそう?打ち出すっていうと大砲だけど、あれは火薬の爆発力で筒から弾を打ち出してるんだよね。


 でも、今目の前にあるのはぶっちゃけただの石。筒もないし火薬もない。・・・ないなら作ればいい?それもイメージしてみるか。


 ただ、筒は頑丈な『もの』をイメージするとそれだけで魔力消費量が多そうだ。じゃあ、『石の周囲に固い魔力の筒がある』とイメージしてみる。うん!思った以上に魔力消費量は少なそうだ。



「うん?何をイメージしてるんだ?オレが思ってるイメージと違うこと考えてそうだけど···?」


 リオの疑問をよそに、次は火薬のイメージだ。爆発は燃焼という現象が瞬間的に激しくなったバージョンだ。燃焼はさっきのティンダーの強化版を弾けさせる感じでいけそうかな?うん!いけそうだ。


 じゃあ、射出してみるぞ~!



「お、おい、アキ!何しようとしてるんだ!?」



 なぜかリオが慌てだした。ひょっとして間違ってるのかな?でもこのイメージでいけそうだから、まずはこれでやってみよう!



「これがボクの岩砲(ロックキャノン)だ!!」



 ボクが放った岩砲(ロックキャノン)はさっきのリオのやつよりも高速で打ち出され、リオが穿った大岩の隣にあったさらに大きな岩にぶつかって粉々に粉砕してしまった。


 威力をみたリオは呆然としていた。まさか最初からここまでの威力を出せるとは思ってなかったのだ。


 そして打ち出したボク自身も、想定以上の威力に呆然としていた。



「なぁ、アキ。いったい何をイメージしたんだ?」


「前の世界であった大砲っていう武器。筒の中で爆発させて砲弾や爆弾を遠くに届かせるんだけど、それをイメージしちゃった」


「いや、石単体だけを高速で飛ばすってイメージだけで良かったんだけどな···まぁ、とりあえずアキの創作魔法はできたからこれでヨシとするかー」


「そんなイメージで良かったんだ···まぁ、コツはつかんだような気がするよ。これからいろいろと研究して自分だけの魔法を作ることにするよ!」


「アキがいた前の世界ってトンデモナイものがいっぱいあるんだなぁー。これは気を付けないとトンデモナイ魔法ができそうだなぁー」


「アハハハ···」


 今は言えない!アニメやラノベでもっととんでもない架空の武器があるなんて!




『まぁ、その心配は現実になっちゃうんだけどね。主にリオがだけど』

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