5.なんて場違いな···

 なんでスマホが!?しかも愛用してたスマホだよ!?ナンデ!?



「アキ?どうしたんだー?カバンの中がどうかしたのかー?」



 リオがボクの手元を覗き込んできた。



「なんだー、それは?見たこともない板状のカタマリだけど?」


「あっ、いや、これは···ボクが前の世界で使っていたスマホっていう通信端末なんだよ」


「つうしんたんまつ、って何だ?」


「簡単に言えば、こことは別の遠いところの人と会話したり、情報を瞬時にやりとりするためのものなんだよ」


「へぇー、それは便利なものがあるんだなぁー」


「まさかこっちの世界に持ち込んでいたなんて思わなかったなぁ。機能もそのまま使え···って!メールが来てる!?それにアンテナ立ってる!?」


「めーる?またわからん言葉が出てきたなぁー」


「手紙みたいなものだよ。えーっと、発信先は···文字化けしてる!わからんわ!内容は



『これを見ている名を知らぬキミへ。


 直接会った時にも説明したが、どうもこちらの話が伝わってるような感じがしなかったのでメールという形でキミに私からのメッセージを伝えよう。


 キミはこちらの世界で発生した空間の亀裂に吸い寄せられてしまったのだ。ある意味事故のようなものだ、大変済まなかった。なんとか元の世界に戻してあげたいところだが、体も使用不能状態だったし不可能に近いのだ。


 そこで代案として、この世界で思いのまま過ごしてほしいと考えて新しい体も用意させてもらった。体には自動翻訳のスキルとわずかばかりのギフトを授けている。


 あとは役立つものと思い、アイテムも用意させてもらった。キミが元の世界で所有していたアイテムも多少細工はさせてもらったが、この世界でも大いに役立つだろう。


 この程度では補償にほど遠く、大変至らぬとは思うがどうか容赦していただきたい』」



 ···そうかー、そういうことかー。



 あれはこの世界の神様的な人だったんだなぁ。だから言葉がすぐわかったり、こうやってスマホがこっちの世界にあったりしたんだ。ってか、この体!神様が用意したって!?なんで『男の娘』なんだよ!趣味か!?そういう趣味なんだな!?


 驚きつつも神様の趣味?に怒り呆れている横で、読み上げたメールの内容を聞いたリオは顔が真っ青になっていた。どうやら大魔王との決戦の際の影響が、ボクがこっちの世界に来てしまった原因だったと知ってしまったからだ。



「えーーっと···アキ?なんというか、そのぉーーー」


「リオ、ちょっとびっくりしちゃったけど原因のことはもういいよ。もうどうにもならないし、気持ちを切り替えてこっちの世界で生きていくことにするよ」


「アキ···よし!じゃあアキがこの世界で好きに生きていけるよう、オレがきっちりとサポートさせてもらうぜ!」


「うん!今後ともよろしく!」



 とりあえず何かをしなくちゃいけないわけではなくなった。せっかくこのエーレタニアの世界にやってきたんだ。この世界を旅して大いに楽しんでいくことにしよう!




『···今思えばあの時のボク、半分ヤケクソな気分だったなぁ~』

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