4.まずは情報収集だね!

 グロー歴504年4月3日



 翌朝起きてみると、家の中にリオはいなかった。


 起きて部屋の隅に水が入った桶があるのを見つけた。


 そういえば、どんな姿してるかまだわからないんだよね。どんな姿なのかな?と思い、桶を覗いてみると···知らない女の子の顔があった!



 えっ!?べ、別人になってる!?女の子だって!?


 すぐに視線を下げてパンツの中を確認すると···よかった。ちゃんとあったよ。



 髪は透き通るような青でそこそこの長さ、目もぱっちり大きくてきれいな碧眼だ。顔は···パッと見女の子にしか見えん!いわゆる『男の娘』ってヤツか···。身長は130cm前後、小学校高学年ぐらいか?ということはだいたい9~10歳あたりの子どもになっちゃったんだ···。



 そんな格好のせいか、若干精神的にも子供っぽくなっているようだ。


 1人称はボクの方があってるような気がするかも?これからはそうするか。


 そんな変わり果てた自分の姿に呆然としていると、窓からリオが飛んで帰ってきた。



「おう!おっはよー!ゆっくり眠れたかー?」


「あっ、おはよう、リオ。どこか出かけてたのかい?」


「朝食取りに行ってたんだよ。ほら、これがアキの分だ!」



 前足(手?)に見たことのない大きな果物っぽい果実をかかえていた。


 おもむろにそれを手にして、かじりついてみるとりんごっぽい酸味のあるとても甘い味がした。



「んん~っ!これ!おいしいよ!」


「口に合ってよかったぞー。それはこの辺にいっぱい生ってるんだ。少しだけ食べただけで腹持ちもいいんだぞー。」


「ありがとう!リオ」



 簡単に朝食を摂った後、オレはリオにこの世界について詳しく聞くことにした。




 この世界はエーレタニアというらしい。今いるのはボルタニア大陸東部にあるレオナード王国で、その西隣にあるピムエム皇国を分け隔てるインシュ山脈という険しい山の裾にある森の中がリオの拠点だ。


 他にも大陸や国があるけど、それはまたおいおい紹介するね。


 暦は1年420日。1週7日の5週で1月、年12か月だ。このあたりはやはり世界が違うから地球と同じってわけにはいかないね。


 ちなみに今日は4月3日らしい。四季があるかは今のところわからないけど、太陽が東から上って西に沈むって事は北半球かな?自転の方向が地球と同じならね。


 物理法則や自然現象は地球と同じだ。ただ、星自体の大きさとかは違うだろうから、そこら辺の違いはあるだろうけど、通常の生活では影響なさそうだね。


 時間は地球と全く同じだった。これはありがたいね。思った以上に天文学が発展しているようだ。



 あとは、この世界には魔法が存在している!


 それもかなり発達しているようで、基本的にほぼすべての人が扱えるそうだ。


 ただ、扱えるって言っても個人差があって生活していく上で必要な魔法はみんな使えるけど、それ以上の魔法は人によって使えたり使えなかったりするらしい。



 物流や人流もかなり活発なのか、言語は共通語ただ一つだけで、場所によっては方言があるようだ。


 文字はなんだか英語っぽい。文字の練習しなきゃいけないなぁ~と思ったら、なぜか普通に書けた。そういえばリオと初めて会った時も普通に会話できたんだよな。あれって、この世界に来る前にいたあの人のおかげ?よくわからんけど、不自由なくコミュニケーションとれるのはありがたい。



 最後にお金。単位はジールだそうで、今現在だと1ジール=1円相当のようだ。なんと!お札もあったよ。魔法による偽造不可能な刻印が施されてるらしい。これも日本人の感覚としてはありがたいね。ただ、大体の人が持つ身分証についてる魔石に金額の情報を読み書きして決済することがほとんどだそうだ。···なんか、電子マネー的な感覚だなぁ〜。むしろこっちの世界のほうが進んでるような気もするね。



 ···っていうか、結構馴染めやすくない?あるいはそういうふうに調整されてこの世界にやって来た?


 まぁどうでもいいか。この世界の常識を軽く教えてもらったところで、昨日気になっていた事をリオに聞いてみた。



「リオ、昨日言ってた『神の遣い』と『外の理の者』って何のこと?」


「『神の遣い』ってのはその名の通り、神様から特別な使命を任された者の事だなー。整調者ピースメーカーも大きな枠でいえばそれにあたるんだけどな。まぁ、滅多に現れることはないぞー。

 あとは『外の理の者』だなー。こっちはこの世界とは別の世界の者の事を言うんだー。昔、この世界に別の世界の者が侵略してきたって事があってなー。当時のピースメーカーと世界中の人々が一体となって追い返したんだよなー」


「という事は、ボクも『外の理の者』って事?」


「う~ん···まぁ、その通りっちゃその通りなんだけどなぁー。ただ、何の目的もなく来たようだからどちらかといえば迷い人のようなものかなぁー?」


「そうなんだ。そういえば昨日言わなかったけど、こっちの世界に来る前に人と会ったんだ。何言ってるか聞こえなかったんだけど、最後に指をボクの額に当てられたら気を失ったんだ」



 ボクの話を聞いた途端、リオが急に真剣な顔になった。



「そいつはどんな格好してたんだ?」


「えっ!?逆光でシルエットしかわからなかったよ。それなりに背丈は大きかったと思う」


「う~ん···判断に迷うなぁー。おそらく何かをアキにやってもらいたいが為にこの世界に送り込んだ感じがするなぁー。でも、過去の侵略の時みたいな明確な目的はなさそうだな。一体何が目的なのかさっぱりわからんなー」



 しばし考え込んでしまったリオ。まぁ、そんなに大した目的でもないような気がするんだよね。指示書みたいに形に残ってたりしてないし、侵略なら武器ぐらい持たせてくれるだろうし。


 そういえば、こっちの世界に来た時にメッセンジャーバッグぐらいの肩掛けカバンがなぜかついてたんだよね。中に何が入ってるのか見てなかったよ。確認してみるか!


 そう思ってベッドの横にあったカバンを開けてみると···中に入っていたのはよくわからない棒と

 キレイな光る石が5つ、そしてなんとスマホだった!




『男の娘の容姿はビックリだったけど、これがものすごいトラブルのフラグだったとは思わなかったなぁ』

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