第106話 転移の目的

「うぅっ…………くそ……状態異常は無効じゃなかったのか……」

 ミズトは意識を取り戻すと、どこか薄暗い場所で倒れていることに気づいた。


(エデンさん、ここはどこだ……? どんだけ意識失ってた……?)

 ミズトはなんとか立ち上がり、辺りを見回しながら尋ねた。


【申し訳ございません、転移によりどこへ移動したのか不明です。ただし、外へ出た形跡はなく、ダンジョンの罠だったのかもしれませ――――】


(まだダンジョンの中……?)


 ミズトは、もっと遥か遠くへ飛ばされたような感覚になっていた。


 もう一度見回してみると、広めの部屋のような場所にいるようだった。四方に壁が見える。

 空気は冷たく、ミズトは何かとても重苦しいものを感じていた。


(どこかの部屋に転移する罠ね……。こういうのはスタート地点に戻されるか、全然違うフロアに飛ばされて道に迷わせるイメージがあるが……)


「ここは貴様らの表現で言えば、『無限迷宮』の第千階層だ」

 突然、近くの暗闇から声が聞こえた。


「な!? 誰か……いるのですか……?」


 ミズトはその声を聞いて、全身に鳥肌が立った。

 人間ではない、いや生物ですらない何かに声を掛けられたと直感した。


(今の声……さっき頭の中に直接聞こえた声……?)


「そうだ、先ほど声を掛けたのは我だ」


(!? まさか頭の中で言ってることが……)


「ああ、我には聞こえているぞ」


(…………)


 ミズトは警戒しながら、声のする方向へ目を凝らした。

 何故か人の気配は感じ取れないが、がそこにあるような気がした。


「どちら様でしょうか……?」


「ん? 我か。我は■■■■じゃ」


「え?」

(なんだ? 聞き取れなかったぞ?)


「ハッハッハッ、すまんすまん。そんなことより、貴様こそ面白い存在だの」

 がミズトに近づいてきた。


 ミズトは人であろうとモンスターであろうと、離れた位置からその存在を察知でき、ステータスを見ずにだいたいの強さが分かる。

 しかし、目の前のは、強いのか弱いのか、いやそれどころか存在そのものを感じとることが出来なかった。

 ただただ、異様さだけが伝わってくる。


 ====================

 ■■■■

 種族 :~*<◇

 加護 :§_””

 クラス:¶ψ⁂

 ステータス

  筋力 :∇Θ

  生命力:∇Θ

  知力 :∇Θ

  精神力:∇Θ

  敏捷性:∇Θ

  器用さ:∇Θ

  成長力:∇Θ

  存在力:∇Θ

 ====================


 目の前まで来るとステータス画面が開いた。


(文字化け……?!)


「ほぉ、我のステータスを開くか。やるのぉ。では貴様のステータスも見せてもらうぞ」


 ====================

 ミズト・アマノ LV11

 種族 :人間

 所属 :なし

 加護 :創造神

 クラス:万能冒険者(熟練度6)

     万能生産者(熟練度10)

     転生者(熟練度1)

     超越者(熟練度10)

 ステータス

  筋力 :S(+S)

  生命力:S(+S)

  知力 :S(+S)

  精神力:S(+S)

  敏捷性:S(+S)

  器用さ:S(+S)

  成長力:S(+S)

  存在力:S(+S)

 ====================


 ミズトのステータスが映し出された。


(偽装したステータスじゃない!?)


「ハッハッハッ、我にステータス偽装なぞ通じるとでも思ったか? なるほど、ミズトとやら、貴様は女神が連れてきた奴か。しかし、創造神の加護に加えて、クラス『超越者』とはのぉ。よくあの女神が許したものだ。まさか、女神ではなくあっちの方か?」


(エデンさん、こいつが何者か分かるか?)


【…………】


(エデンさん?)


【…………】


「そのスキルは停止させておるから、何も答えんぞ」

 は目の前で話しても、表情がよく見えない。


(!?)

「あ、あなたが『女神の知恵袋』を止めているということでしょうか?」


「ああ、そういうことだ」


(エデンさんの言葉が途切れたのは、気のせいじゃなかったか……)

「あなたは……何者でしょうか?」


「ん? それは先ほど答えたであろう」


「……で、では、私に何か御用でしょうか?」


「ハッハッハッ、そうであった。我は貴様と話がしたいわけではない。我は貴様と、殺し合いがしたいのだ!」


「ころっ!??」


 ミズトは目の前のが極めて恐ろしい存在だと認識した。

 声はするが、先ほどから姿はよく見えない。

 薄暗いせいだけではなく、ミズトにはがただの黒いもやにしか見えないのだ。


「ハッハッハッ。と言っても能力に差があり過ぎるからの。一方的に我が貴様を狩るだけ。さあ、存分にあらがってみせるのだ!」


「ぐぁっ!?」

 ミズトは突然、強力な衝撃で弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

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