第50話 旅の同行者
それから一時間ほど歩いて遭遇したのは、レベル30台のオークファイターが三体。
大柄で筋肉質な体格を持ち、顔は豚に似ているが、口からはみ出ている
三体とも大きな斧を持ち、一般人が出会ったらとても助かるようには思えなかった。
「ストーンバレット」
視界に入った瞬間にミズトが魔法を唱えると、同時に発射された三つの石が三体の頭を吹き飛ばした。
(あんなのが普通に歩いているとか、やっぱ怖い世界だよな)
ミズトはクエスト完了の文字を見ながら、戦う力のない人たちの生きる大変さを想像していた。
【ミズトさん、クロのレベルが上がったようです】
エデンが事務連絡のように言った。
(ん? …………はい?)
ミズトは、エデンが何を言っているのか一瞬分からなかったが、クロのステータスを見て意味を理解した。
1だったはずのクロのレベルが5になっているのだ。しかもステータスの表記が少し変わっている。
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クロ LV5
種族 :ブラックフェンリル
加護 :ミズト・アマノ
属性 :火水風地
ステータス
筋力 :H
生命力:H
知力 :H
精神力:H
敏捷性:H
器用さ:H
成長力:A
存在力:A
====================
【どうやら名付けをしたことで、テイマーの従魔契約に似た状態になったようです。経験値が分配されました。ただし、加護の表記がある事例は聞いたことがありません】
「加護が俺の名前になってるし……」
「ワン!」
ミズトと目が合うとクロが嬉しそうに吠えた。
(従魔とかいらないんだけど、どうやって解除するんだ?)
【申し訳ございません、何故か従魔契約の解除ができないようです。どうしても解除が必要な場合は、クロを殺せば解除されます】
(解除できないって…………殺せるわけないだろ…………)
「クゥゥゥン」
クロはミズトをじっと見たまま、激しく尻尾を振っている。
ミズトは犬や猫の動画を見る程度の興味はあったが、特に動物が好きというわけではない。ましてやペットを飼うなんてことは、これまで考えたこともないのだ。
(マジで参ったな……。テイマーの従魔契約ってことは、一緒に戦うってことか?)
【はい、ある程度大人になれば戦闘に参加してくるでしょう】
(大人になれば、ねぇ……)
どう考えてもただのお荷物にしかならなそうだった。だからと言って置き去りにもできない。
ミズトは飼う決心がついたわけでもないが、旅の同行者として認めるしかないと感じていた。
「ま、元からエデンっていう変な同行者もいることだしな……」
ミズトはそう口にしながら歩き出した。
それから数分も経たないうちに、クロの異変に気づいた。
つい先ほどまでは歩いているミズトに必死でついて来ていたのだが、今はだいぶ余裕があるように見える。
試しに歩く速度をちょっと上げてみると、クロも速度を上げる。
(なあ、エデンさん。もしかしてクロはレベルが上がって速く走れるようになったのか?)
【はい、レベルが上がることにより身体能力が向上しています】
(だよな、やっぱり。なんちゅう便利なシステムだ……。ってことはもっとレベル上げれば、いちいち気にする必要ないほど速く走れるかもってことか?)
【ブラックフェンリルはデータにない種族のため詳細不明ですが、そう理解して良いかと判断します】
(なるほど)
ミズトは納得したように
その後、ミズトは察知したモンスターを手当たり次第に狩っていき、クロのレベル上げをしながら進んでいった。
ダンジョンで遭遇するような高レベルのモンスターはいないが、ドゥーラの町周辺に比べるとこの辺りは多少レベルが高い。それにミズトとは違いクロのレベルアップに必要な経験値は標準的であったため、わずか半日でレベルが20まで上昇した。
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