フェラムール

私が、この衝動愛に走ったのは、妊娠中なの。

わかると思うけどこういう時って、優しくしてもらいたいって気持ちが強くなるのよね。

仁樹の傍に寄り添って夫婦の営みを求めたんだけど、彼、「子供に何かあったらどうするんだ。」って、かえって叱られちゃった。

仁樹は二人の子供を大事にしてくれてる。

でも、私は、女なのよって言いたかったんだけど。

そして、妊娠中一度も、慰めてくれなかった。寂しかったの。

莓瑠を出産して、やっと安心して仁樹とフェラムールしたかったのに、彼、「もう母親なんだから、子供の事を考えようよ。」って。

私、セックスレスって初めての経験だったわ。

そんな時、元カレに出会っちゃって・・・

その日からかな?

女として生きたいって思えたのは。

でも、仁樹の事は愛してるし、芽瑠ももちろん大事。

けど、私も大事じゃない?

だから、こうして、今、源五郎さんと彼のお店にいる…。




「こちらはいかがでしょうか、お似合いですよ。」


お店の名前は、「リュクス」だって。意味わかんないけど、源五郎さんがこう言ってたわ。


「今日のメイさんにピッタリな言葉だと思いますよ。」だって。


うぅ~ん、わかんなぁ~い。

源五郎さん、焦らすの上手ぅ~。


でもね、莓瑠の母親としてしてあげられることは全てしてあげてるつもりだし、これからも同じよ。

仁樹にも妻として精一杯尽くしていくわ。

だからこそ自分へのご褒美として婚外恋愛をしてるの。

私ってすごく健気な女性なのよ。


不倫する時のセックスって、最近の仁樹だと得られない身体の感覚があるの。

麻痺するって感じかな?

最近の仁樹とのセックスは運動って感じなんだけど、愛撫を長くされたり、体に触れる彼の手触りだったり、キスもやっぱり愛とは違う、性のあるキス。

そんな感覚が時々私の中で疼いたりする。

もしかすると不倫の肉体関係は私が本当に求めていたセックスなのかも知れないな。


きっとそう。




「メイさん、メイさん、話聞いてます?」


「えっ、あ、あは、私ったら、はしたない事考えて、ごめんなさい。」


「はしたない?…」


「…」


「合計42万円になります。有難う御座いました。」


源五郎さんの奢りとはいえ、40万はさすがに気が引けるなって思って、商品をお返ししようとしたの。

でもね、源五郎さんが、私の返そうとする腕を優しく持ってこう言ったの。


「私が、この店の利益としているのは、お客様がどれだけ綺麗になれるかなんです。女性の方にとってオシャレは生活必需品と言ってもいい。私は、そのサポートができ、お客様に満足していただければ、この店にとって、最高の収益だと思っています。だからメイさん遠慮なさらず快くこの商品をお受け取り下さい。気に入らなければお取替えも致しますが、お気に召さないものがおありですか?」


「いえ、そんな、お気に召さないなんて。どれもこれも私が欲しいものばかりで…。」


「良かった、それでは、この後、ドライブにでも行きましょうか?」


「はい、喜んで。」


とってもいい気分。

とっても幸せ。

とってもルンルン。

よく考えたんだけど、このお店が収益金を上げて儲かりすぎたら、税金対策として出している源五郎さんの本社が困ると思うの。

だって、税金ってこっちの利益なしに国へ奉仕することでしょう?

馬鹿らしくって私は絶対に嫌。

源五郎さんのお役に立てて私も利益になるって最高じゃん。

荷物を源五郎さんの車に詰め込んでさあ、出発よ。

不倫デートに・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る