セカンドパートナー

今日も、娘は学校が終わって、翔海先生のもとにレッスンしに行く時間なんだけど、私に似たのかな?愚図っていうか準備できないっていうか。

私がお尻を叩かないと何もしない。

最近は、行きたくないなんて我儘言う時も増えちゃって。

まあ、今では翔海先生に会いたいのは私の方かも。

前回のレッスンの時、先生から、娘さんと三人で、カフェでも行きませんかってお誘いがあって、今日は、是が非でも莓瑠を連れて行かねばと焦ってるだけなんだけどね。

出来るだけ娘には自立した自由な生き方を願っているけど、今日は、行ってもらいます。

絶対に外せない。

私の性本能が掻き立てられてるんだから。


バイエルからソナチネへなんて翔海先生から聞いた莓瑠のレッスン内容に私はチンプンカンプン。

基本的なレッスンらしいんだけど、私にとっては時々弾いてくれる先生のピアノ演奏での指使いがプロの柔らかい動きを兼ね備えていて、優しい旋律を聴かせてくれてることが心のレッスンかなって思ってる。

って言っても私は、まったくの楽器音痴。

上手いか下手かは判断できない。

顔で解って心で迷うって感じかな?きっと凄く上手いのよ。

生徒沢山いるし…。

莓瑠も次回レッスンから新たな段階に進むって先生は言ってた。

ツェルニーだったかな?30番とかいってたけど私には何が何やらわからないんだけど、きっと上手くなるんだってことは分かる。




「いつも、有難うございます。娘も随分上達して、未来が開ける感じがします。」


街カフェ『シャルル』で私と翔海先生、そして邪魔だけど莓瑠三人で反省会と称した座談会。シャルルはシュークリームが美味しいって知ってるのは、私の行きつけのお店だから。

先生に誘われたお店は、旦那の会社に近い場所だったから私がこの店に誘ったの。

仁樹ってすっごいやきもち焼きだから見つかると後でネチネチうるさいの。


「莓瑠ちゃんは、才能っていうか、センスというか他の子達とは違う何かを持っている気がします。きっといいピアニストになりますよ。」


翔海先生の言葉に、私はどや顔を隠そうと必死だったけど、その時の先生の目線が私の胸のあたりにあって。

ああ、先生私をそういう目で見てたのねって思っちゃった。

それが今日の収穫かな?


仁樹との愛は、莓瑠が出来てから変わってしまったの。

溺愛関係から家族に対しての愛情にお互いが変わって、男と女ではなく父親と母親という立場で、二人でいるときも子供中心に生活が進んでいって…。

今では、仁樹がアルコールで酩酊するとき以外は夫婦の性生活も全くないの。

話し合った時もあったわ。

でも、仁樹は仕事で疲れてるからの一点張りで…。

最近何となくかな?浮気してるような気がするの。

社員と飲んで帰ったという割にお酒の匂いが全くしなかったり、飲むと求めてくる彼がそそくさと寝てしまったり。

スマホ見ようとすると怒鳴ったり…。

私も寂しいじゃない?セックスしたい時に愛する人と出来ないなんて。

だから、翔海先生とセカンドパートナーとして付き合っちゃおうかなって…。

プラトニックだからいいよね、それくらい。

だって、私は母親だけどその前に女ですもの。




「ネクタイないよー!」


「ごめんなさい、今行きます。」


珍しく私は、仁樹の着替えを出し損なって。

何故かはわかってるわ。

今日は、翔海先生と二人きりで莓瑠の今後のレッスンスケジュールを立てるってことになってるの。

勿論、口実だけど。私の方から、そう言って翔海先生と二人で会いたいって言ったつもり。

先生に躊躇いはなかったわ。

もしかして相思相愛?いけない私・・・。

莓瑠にも早く学校へ行ってもらわなくちゃ。


「莓瑠ぅ!早く起きなさぁい!学校行く時間よぉー!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る