金髪ポニーはにゃんにゃん可愛いメイドらしい。上
次の日、待ちに待った休日。
俺の学校は特別な例を除いて基本宿題がないので、適当に楽器と自転車のメンテを終わらせると、リビングのソファに寝転んでダラダラと休日を謳歌する。
なぜ休日という響きだけで幸福を感じるのか、誰か偉い人に調べてもらって、その論文をもとに週休四日の方が生産性が上がるとかで休日を増やしにして欲しい。
「おにいどいて」
オーバーサイズのTシャツに、一見ズボンを履いていないじゃないかとドキドキしてしまうほど短いホットパンツを履いた羽実ちゃんが、俺の足をどかしてできたスペースに座ってくる。
「足畳んで。あとそれとって」
寝っ転がるのをやめて、羽実ちゃんにリモコンを手渡す。
「おにい今日暇?」
「一応暇だけど……勉強なら教えられない、むしろ教えて欲しいくらい」
「元々おにいに勉強で期待してないから。勉強じゃなくて、荷物持ちと案内をして欲しいの」
「それはいいけど……どこか行くの?」
「秋葉原。おにい詳しいでしょ」
被害妄想もいいところなんだろうが、当たり前のように「秋葉原詳しいでしょ」って言われると、ちょっと馬鹿にされているような気分になる。
「一応詳しいけど……買い物でもあるの? カード系ならネットで買って、アニメミトなら池袋の方がいいよ。綺麗になったし」
「アニメグッズ買うんじゃなくて、このお店に行きたいの」
羽実ちゃんはスマホでメイドカフェ? コンカフェ? のホームページを見せてくる。
ホームページには、秋葉原の迷い猫! 秋葉原にゃんにゃんフィールド。と書かれ、猫耳をつけたメイドさんが数人ポーズをしている。
「随分大人な猫カフェだな」
「猫耳をつけたメイドさんがいる喫茶店。猫カフェじゃなくて、普通のメイド喫茶」
「羽実ちゃんそういう系のお店に興味あったけ? ジャンルだと恋愛系かスポーツ系しか興味ないと思ってた」
「可愛い女の子が出てるのも好きだけど、今日行くのは私の友達のお姉さんが働いてるらしいから行ってみたくて。猫耳メイドも見たいけど」
そういうの勝手に行っていいものなのか? 普通はコンカフェとか隠したいんじゃないんだろうか。
「別に行くのはいいよ。いつ行く?」
「午後に行くから、お風呂入って髪の毛をセットして。友達も来るから、隣歩いても
恥ずかしくない格好でお願いね」
「了……か、友達も来るの!」
「うん。ダメ?」
羽実ちゃんの友達ってことはJCつまり女子中学生だよな。俺が一緒にいると、三人称的に見ると色々不味くないか。
「ダメじゃないけど……俺が行っても大丈夫? 髪とか……」
「それは大丈夫。私の友達はそういうの気にしないタイプだから」
「それなら了解。じゃあ早速……」
「あ、今から私が入るから、おにいはあとにして」
「はい……」
羽実ちゃんが出たあと風呂に入り、黒いズボンに白いTシャツ、黒い半袖のシャツを羽織って、この前ギャルにしてもらったような髪型にセットして、青いレンズの眼鏡をかけて玄関に行く。
「よし」
陽キャイキリコーデでの完成。少なくとも、陰キャだとは思われない。
「おにいちょっと待って」
玄関に行くと、生足にホットパンツ。黒いパーカーに、オーバーサイズの白と薄い茶色のチェックシャツを羽織った、ファッション誌の表紙でよく見るおしゃれ女子って感じの服装の羽実ちゃんが、玄関に置いてある鏡を見ながら、つけていくアクセサリーを選んでいる。
羽実ちゃんのアクセサリーを選び終わると、外出恒例、羽実ちゃんファッションチェックを受ける。
「おにいターンして」
両手を軽く広げ、羽実ちゃんが服を見やすいようにゆっくりターンする。
羽実ちゃんは品定めするように俺の頭から足先までしっかりと確認すると、近づいて俺の匂いを嗅ぐ。
「うん。夏先取りすぎ感はあるけど、服装は合格。髪型も少しやりすぎ感あるけど、かっこいいから合格。石鹸系の爽やかな香りで匂いも合格だけど、その眼鏡はチャラいからダメ。フレームが黒以外の眼鏡に変えてきて」
眼鏡が一番の陽キャポイントだったんだが、これがないと陰キャに見えるんじゃないだろうか。羽実ちゃんが言うんだから、陰キャではないよな。大丈夫だよな。
持っている眼鏡の中から、フレームが透明の眼鏡を選んで玄関に戻る。
「それならかっこいい。合格。じゃあ行こ」
チェックに合格すると、羽実ちゃんと一緒に電車に乗って秋葉原に向かう。
向かっている途中、羽実にコンカフェとメイド喫茶の違いについて尋ねる。
「詳しくは分かんないけど、コンカフェはコンセプトがある喫茶店全般で、メイド喫茶はメイド服着てればいいと思う。だからメイド喫茶はコンカフェの一種」
「じゃあメイド喫茶でも執事喫茶でも、学園喫茶とかでもコンカフェってことか」
「そうだと思うけど。詳しくはおにいの好きなMIちゃんねるとか、DIPPERとかで聞けばいいんじゃない。なんとなく詳しそうな人が多そうだし」
別に隠すことでもないんだが、できれば外でMIちゃんねらーであることを言わないでほしかった。
俺が苦笑いを浮かべていると、電車は秋葉原に到着し、俺の先導で電気街南口に到着する。休日ということもあってか、観光客や子供を連れた親御さんなどの色々人がそこら中に歩いていて、正直帰りたい気分になってきた。
「おにい、ちょっと撮ってくるから」
羽実ちゃんは秋葉原名物の一つといってもいい、アトデのデカい窓に貼られたキャラクターを撮影している。
少しすると、上手く撮れたのか上機嫌の羽実ちゃんが戻ってくる。
「上手く撮れた?」
「そこそこかな」
と言いつつ満面の笑みを浮かべているので、いいのが撮れたらしい。
「ならよかった。友達とはどこで待ち合わせ?」
「メイド喫茶の少し前の通りで待ち合わせ。あと一時間弱時間があるかも」
「なら時間までどこか寄って行く?」
「じゃあコスプレのお店に行きたい」
「また衣装買うの? 写真撮って終わりなのに?」
「衣装はなん着あっても良いの。基本は鑑賞用だし」
羽実ちゃんはコスプレが趣味なのだが、イベントとかには行かずに、写真を撮ってネットにあげるだけで満足しているらいし。意外と人気があるそうだが、本人はJC効果で人気なのが気に食わないらしく、最近は年齢を隠しているらしい。俺にもたまに見せてくれるが、かなり可愛い。
「ほらおにい、早くお店行こ」
「近くのお店でいいか?」
「いいよ」
羽実ちゃんと秋葉で有名なコスプレ店に入店する。
店内にはアニメで見たことある制服や衣装が並べられ、ウィッグやメイク道具、その他血糊なんかの小物など、色々な商品が並べられ、一部商品は試着もできるらしい。
羽実ちゃんは店内に入ると、嬉しそうに衣装を手に取り、服の裏地や自分に重ねて
「おー」と言ってニヤけている。
「おにいこの衣装すごい」
コスプレに関してはあまり詳しくないが、最近のコスプレは随分ちゃんとしている。市販品はコスプレ感というか、偽物感が強いイメージが強かったが、しっかりしたお店の市販品は本物感がすごい。
「おー本当だ。しっかり再現されてるんだな」
「質感もいいな〜」
「試着もできるみたいだけど、どうする」
羽実ちゃんは少し悩んだあと、試着する気になったのか、試着ができる衣装の中から数着選んで試着室入って行く。
俺は試着室の横で他の客からの視線に耐えながら、羽実ちゃんが着替え終わるのを待っていると、試着室のカーテンが開き、アイドルアニメの衣装を着た羽実ちゃんが、恥ずかしそうに感想を求めてくる。
「似合ってると思う。ウィッグ被ったら完璧」
「本当に?」
我ながら我の妹はなんでこんなに可愛いのか疑問になるくらい可愛い。お兄ちゃん効果もあるんだろうが、それを引いても可愛い。
「本当」
「そうなんだ。次に着替えるね」
羽実ちゃんは嬉しそうにカーテンを閉め、次のコスプレに着替える。
俺も羽実ちゃんと同じ遺伝子を受け継いでいるはずなのに、どこで差がついたんだろうか。
その後も何着か着替えたあと、そのうちの一着をレジに持って行って会計する。
「買っちゃった」
羽実ちゃんは買った服を嬉しそうに抱えながら、本来の目的であるメイド喫茶に向かう。
「コスプレしたら見せてくれ」
「気が向いたら見せてあげる」
「気が向かなくても見せてくれ。お、マップだとこの辺のはず。友達いるか?」
「えーっと……あそこ」
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