第12話 混沌1
「ッ!?」
突然、頭に謎の音声が流れ込んできた。思わず頭をおさえる。
「秋冬! どうしたの!?」
「……ッ、頭が、割れるように……ッ!」
『その果てに訪れるのは破滅だ』
「……ククッ、ハハッ! そうか、そういうことか!」
魔王が笑い出した。
「……何がおかしい?」
「いや、すまない。何でもない。それよりも勇者よ、その女をこちらへ渡せ」
「何だと?」
「そうすればお前の命だけは助けてやる。その女も、お前のこともな」
「ふざけるな」
「では仕方あるまい。この場で殺すだけだ。そして、また新たな勇者がこの世界に現れるのを待つとしよう」
魔王が剣を振り上げる。まずい、このままじゃアリアが殺される!
「やめろぉおお!!」
「無駄だ! 死ねぇええッ!!!」
魔王の剣が振り下ろされた。
――その時だった。
「魔法障壁ッ!
『エアリアル・シールド』ッッッッッッ!!!!」
突如、アリアの周囲に風が巻き起こり、彼女を包み込んだ。
「――ッ、これはまさか! あの時の!」
魔王が驚愕し、大きく飛び退く。
「――秋冬、お願いがあるの」
「何だ?」
「私と……結婚して欲しいの」
「……え?」
「……え?」
俺とアリアが魔王の動きを止める。
「……アリア、急に何言ってんだ?」
「……え? あ、あれ? 私、今何か変なこと言ったかしら……? あ、そうか、まだ私達付き合ってなかったんだっけ? ごめんなさい、忘れてくれていいわ」
「……? ああ、分かった」
「……? えぇ」
「――で、何の話だ?」
「え? あ、えっと……そうね、とりあえず魔王を何とかしないとね」
「あ、あぁ」
アリアが魔王に向き直る。
「アリア、大丈夫か?」
「うん、平気よ」
「よし、じゃあ一緒にアイツを倒そう」
「えぇ」
魔王が動いた。俺たちに向かって一直線に突っ込んでくる。
「アリア、行くぞ」
「分かったわ」
俺とアリアはそれぞれ魔王に狙いを定め、魔法を放つ。
「喰らえ魔王!!
『ライトニングバースト』ォオオオッ!!!」
「吹き飛べ魔王!!
『ウィンドボム』ォオオッ!!」
雷鳴と爆風が魔王に直撃する。しかし魔王は怯むことなく俺達に突進してくる。
「な、効いてねえのか!?」
「違うわ、おそらく魔王は私達の魔法を無効化する能力を持っているのよ」
「マジかよ……って、うおっと」
咄嵯に魔王の攻撃を避ける。
「なら、直接攻撃するしかないってことか」
「そうね。でも気をつけて、魔王は恐らくかなり強いはずよ」
「あぁ、分かってる。じゃあ、作戦通りに行くぞ」
俺は聖剣を構えて魔王に突撃した。
魔王の懐に潜り込み、渾身の一撃を叩き込む。
すると、初めて魔王が大きくよろめいた。
いけるかもしれない。俺はさらに畳み掛けるように攻撃を仕掛ける。
だが次の瞬間、
「ぐあっ!」
俺は思い切り吹っ飛ばされた。
「秋冬! 大丈夫?」
「……なんとかな」
起き上がる。ダメージは思ったより少ない。
「どうなってんだよ……。全然手応えがない」
「私達が弱くなっているんじゃなくて、魔王が強いのよ」
「そうか……」
俺はもう一度立ち上がり、聖剣を構える。
今度はアリアが魔法を放った。
「喰らいなさい魔王!
『サンダーボルト』ッ!!」
「……無駄だ。『魔法吸収』」
「なんですって……きゃあっ!」
アリアが電撃を受けて倒れる。
「アリアッ!」
俺は慌てて駆け寄る。しかし、
「邪魔だ」
魔王が俺を突き飛ばした。俺はそのまま地面に倒れこむ。
「クソ……ッ」
「これで終わりだ」
魔王がアリアにとどめを刺そうとする。俺は思わず叫んだ。
「やめろぉおおおッッ!!!」
しかし、無情にも魔王の刃はアリアに突き立てられた。…………。……。……。
***その時、アリアの体が眩い光に包まれた。***
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