第16話 玉座に座る者

 ♢


「あらー、みんなこんな姿になっちゃったんだね」


 中で出迎えてくれたのは多数の悪魔達。

 デビルナイトとデビルプリースト、いずれも高レベル6ダンジョンに住まう強い魔物だ。

 

 ただアリシアの発言をみるとこの魔物達は元々このような姿ではなく、彼女が知っている者のようだ。


『え? この量は流石にやばくない?』


『負けないで!』


『アリシア様が負けるわけないでしょ』


『アリシア様かわいー!』


 その光景に流石のコメントも心配のものが多くなるが、アリシアは表情を変えずなおも余裕がある。


「じゃあ、いきますか」


 そういって敵軍の中に飛び込み、目に追えない素早く華麗な動きで次々と討ちとっていく。


「《バン》、《レオ》頼むよ」


 俺の方に流れてきた魔物を処理する為、デュラハンのバンとキングライオンのレオを召喚して対応する。


 バンもレオもアリシアが倒し、最小限の損傷にて契約した死霊達だ。

 なんとか流れてきた魔物達に打ち勝ってくれている。


『流石アリシア様!』


『てか撮影者も普通に強くて草』


 そうこうしている内に最後の1体をアリシアが倒したようだ。

 なんとかなったか。

 アリシアが汗一つかいていないのに俺は冷や汗をかいてしまっている。


「みんな、ごめんね……」


 珍しく彼女の発言が曇る、でもそれも一瞬でこちらに振り返った時にはまた明るい笑顔をしていた。


「じゃあ、最後にいきますか!」


 最後ということは、このダンジョンの最奥が近いと言う事だろう。

 一体何が待ち受けているのだろうか。

 そして、彼女はそれが何者かきっとわかっているのだ。


 城の階段を上っていく、道中にはもう魔物はいなく妨害はない。


「みんな、今までありがとうね。これで最後だから、しっかり見ていてね」


 最上階の大きな扉の前に立ち、カメラに向かっていつにない真面目な表情をするアリシア。


『え? どういうこと?』


『ちょっと待って! 引退しちゃうの?』


『え、いやだよそんなの』


 戸惑いの声が届く中彼女は扉に手を当て、そして中へと入っていった。

 よし、気合いをいれていこう。

 一つ深呼吸をし、決意を固めて彼女を追った。


「やっぱりここに居たんだねー」


 中の広間にいたのは玉座に座る影。


「きたか、何年振りだ?」


「さあ、何年振りなのかな。でも今日でおわりにしよ」


「ハハハ、お前が終わらせなかったのだろう。だが良い、お前を次こそ完全に葬り去り世界を完全掌握してやろう」


 立ち上がり、前に出てきて姿が見える。

 銀の鎧に赤いマントを纏う男、見た目は体格の良い人間のそれだが目は怪しく赤い光を放っている。


「そうかもしれないねー。でもさ、おわりっていうのは、あなたを倒しておわるって事なんだよ!」


 彼女が聖剣を構える。

 いつになく真剣な表情をする彼女に思わず固唾を呑む。


 相手も黒く染まった分厚い剣をこちらに向けて構える。

 なんという殺気だろうか、対峙しているのはアリシアなのに冷や汗が出てくる。


「行くよー、アルフレッド。いや、もう違うか――魔王!」


 そして彼女は一気に距離を詰め、相手に剣を振り下ろした。

 最後の戦い、これを配信するのがこの俺の最後の大仕事になるだろう。

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