第13話 危機を救う勇者

「さてレベル6ダンジョン迷いの森では、未だ全てのルートが開拓された訳ではありません」


 配信にも慣れ、あまり噛まずに話をすることができるようになった。


「なので今からはその未開拓ルートを探索していきたいと思います!」


『まじかよ、期待!』


『また凄い武器とかあったりして?』


『アリシア無双みたいです!』


 コメント欄も配信開始してすぐに賑わいを見せている。


 こんなに多くの人に見てもらえるのは間違いなくこの人、いや死霊のおかげだろう。

 アリシア、太古の勇者にして謎多き美女。

 今までレベル5までのダンジョンで凄まじい無双振りを披露する彼女に俺含めみんなは釘付けになっている。


「迷いの森ていうか、ここは【アラドの森】だね」


「アラドの森?」


 アリシアから聞き覚えのない地名が出される。

 前の遺跡ダンジョンといい、彼女が曰くダンジョンは世界のどこかにある地を指しているらしい。


 しかし、アラドの森なんてのは聞いた事がないな。


『アラドの森ってどこ?』


『知らない』


 コメントも同じみたいだ。


『いや、聞いた事があるよ。今は伐採されて【アラリシア】って都市になってるって』


『アラリシアのことかよ』


 アラリシアなら知っている、結構遠くにある内陸都市だ。


「そかそか、もうこの森はないんだねー! じゃあま、行ってみようか」


 昔はこんな森林地帯だったのだろうか。


「リアン、ごめんだけど道案内してくれる?」


「あぁ、うん。《ムク》、《ポチ》」


 2体を召喚して前方を行ってもらう。

 確か最初の分かれ道は右で――。


『死霊が道案内かよ笑」


『でもちょっとかわいいよ』


『確かに状態がいい分可愛さはあるな』


 順調に道を進んでいく、特に変わったところはなさそう――ん?


 前を行くムクとポチが戻ってきて前の状況を伝えてくれる。


「このまま進んだところに魔物の群れが隠れているみたい、それとなんだろう土の壁があるみたいだ」


「了解! ここの魔物ならサーベルミャーとかでしょ、守りながら戦うのは結構しんどいからちょっと待っててー」


 そう言って走っていくアリシア。


「あ、配信……」


 映像が撮れないな、どうしよう……。


『えー、戦闘シーンなしかよー』


『見たい! 撮影者なんとか近づいてよ』


 コメントも残念そうだ。

 なんとかしてって……。


『アリシアと死霊達チャンネルさん、助けてあげてください! そのダンジョンでちょっとやばい状況のパーティがいます!』


 困惑していると急にそのコメントが舞い込んできた。


「やばい状況?」


「おーい! もういいよー」


 アリシアの方が討伐を終えた様だ。

 向かうとサーベルミャーの死骸が複数転がっている。

 流石だ、レベル6ダンジョンの魔物をこんなにあっさり……。


「てこれ《サンドウォール》じゃないか」


 報告にあった土の壁が何かと思ったら魔法でできたものだ。


『あ、それです! その先にピンチの冒険者達がいます!』


 なるほど、何となく状況がわかった。


「ポチ、ムク!」


 急いで探しに行ってもらうとすぐにムクが帰ってくる。


「アリシア、こっちに助けを求めてる冒険者がいるみたい。助けてあげて」


「あ、そうなの。まーじゃあ一丁やりますか!」


 急いでムクに教えられた場所へ向かった。


 ♢


「えっ? ドレッド達?」


「なっ! なんでお前が! いやそんな場合じゃない、助けろ!」


 到着して見えたのは窮地に立っているクリムゾンアイのメンバー達と大きな威圧感のある金色の魔物。


『うわ、何あの魔物』


『めっちゃ強そう』


『アリシア様大丈夫かな?』


『てかもう全滅寸前じゃねーか』


 ロアとアイナは地に倒れ、ドレッドも傷が深そう、ミーシャは後方に隠れながら回復魔法を彼にかけている。


「アリシアいける?」


「あれはキングライオンだね、大丈夫だけどなんか偉そうじゃない?」


 キングライオン? 聞いた事ない魔物だ、確かに見た事ない姿だけど未発見の魔物かな。


「そんなこと言ってないで早く助けてよ!」


「そうだ! 俺ももうもたない! 早くしろ!」


「えー、あの人達確かリアンを追放したんでしょ? そんな人助ける必要あるのー?」


『え、あいつら撮影者の元パーティメンバーかよ』


『こんな偶然あるのかよ』


『てか追放しといて助け求めるとかダサくない?』


『確かに、ダサすぎ笑』


 確かにクリムゾンアイは俺をキモいとか雑魚とか散々言って追放した。

 許せはしない、あの時の屈辱は今も鮮明に思い出せる。

 正直痛い目にあってざまーみろと思う気持ちもある、あるけど――。


「アリシア、助けてあげて」


 やっぱり目の前で助けられるかもしれないのに助けないのはダメだ。

 それが誰であろうと助けないと!


「ふう……しょうがないなぁ、リアンがそう言うなら助けてやりますか!」


 勇者アリシアが聖剣を構え、キングライオンに向かい颯爽と駆け出した。


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