第11話 嫉妬する元パーティ

⭐︎★


「なっ、これあいつか?」


 ある一室にてミーシャから渡された再生機の前で驚いた表情をするドレッド。

 その再生機に映されているのはまさに今ゴーレムを斬り伏せていくアリシア、そしてさっき聞こえてきた話し声はなんと追放したリアンに似たもの。

 チャンネル名が【アリシアと死霊達】とあってそれがリアンである可能性を高めた。


「ありえなくない? あんなに気持ち悪いのに配信なんてはじめて」


「あぁ、まあな」


「しかも見て」

 

 登録者を指差してドレッドに訴える。


「あんなやつより私の方がかわいいし目立てるんだから。ねえ、私達も配信しようよ!」


「うん……そうだな! あんなやつが人気者とか許せないよな! 俺達の方が上ってとこみせてやるか」


 ドレッドは早速写映機を買いに走って行った。


 ♢


「じゃじゃーん! 私達配信者デビューします!」


 夕食時ミーシャの突然の発表に戸惑うアイナと興味無さげなロア。


「配信って……嫌よ恥ずかしい」


「うむ、戦士たるもの人に武勇を軽々と見せ物にするべきではない」


 アイナとロアは乗り気ではないがミーシャは再生機であのチャンネルを見せつけ、バンと机を叩いて熱弁する。


「あいつがこんだけやれるなら私達もバンバン人気になるわよ! なんせ、私がかわいいから。それにこれが成功すれば凄い収入になるわよ!」


「そんなにお金はいるのかしら?」


「ええ、もうそれはたんまりと」


「たんまり……」


 お金に食いつき固唾を飲むアイナ。


「で、戦士がどうとかいうあんた! みんなの前でやられるのがただ怖いんでしょ!?」


「なっ! 怖いわけがない、それに俺はやられたりなどしない、強いから」


 見え見えのミーシャの煽りに乗るロア。

 その光景をちょろいなと苦笑いしながら見ているドレッドはここで切り出す。


「ミーシャの言う通りだ。あのリアンでもできるんだ、何も難しいことはない。俺達の勇姿を見せつけて金持ちになってやろうではないか! そしてあいつのチャンネルについたやつを奪ってやろう」


「でもあっちにはあのゴーレムを軽々と倒す女がいるんでしょ?」


「弱点をたまたま知っていただけだろ。あんなやつと組むやつが倒せるんだ、今の俺達なら余裕だろ。」


「それもそうね、前はまだ経験が足りなかっただけだわ」


「ロアも次はやれるだろ?」


「もちろんだ」


 アリシアの華麗なる戦闘を見ても余裕の表情を見せるドレッド達。

 全ては見下しているリアンにできるからという曖昧なものであるが、彼らにとってはそれが確信なのである。


「じゃあ早速明日から始めようぜ!」


「急ね」


「善は急げっていうだろ?」


「そうそう、早く私の可愛さを世界に知らしめないと」


 そんな感じで急ピッチで準備されたチャンネル名は勿論パーティ名である【クリムゾンアイチャンネル】。


「とは言ってもあいつと同じところを配信していても二番煎じで話題に欠けるな」


「じゃあレベル6ダンジョンにいこ! 【迷いの森】なんていいんじゃない? まだ未解明の道もあるらしいし」


「いきなりレベル6ダンジョンなんて大丈夫かしら?」


 ミーシャの提案に疑念をもつアイナだが、ミーシャは表情崩さず自信を見せて言う。


「大丈夫よ、レベル5ダンジョンもだいぶ行ける様になったじゃない! 足手まといもいなくなったしいけるわよ!」


「それもそうね」


「俺は強ければ強いほど良い」


「んじゃあ決まりだな!」


 盛り上がっている内に不思議と全員が本当にできる気になってくる。

 そしてその日は高揚したまま解散し、明日の初配信に備えたのだった。

 

 

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