第3話 新たな門出と配信

「早速ダンジョンに?」


 次の日、ダンジョンに潜るために外にでるとユリさんとユナちゃんに遭遇する。


「はい」


 危険度の低いレベル2のダンジョンだ、どれくらいやれるか早速試したい。


「頑張ってくださいね」


「がんがえー!」


 2人の応援に笑顔で礼をしてダンジョンに向かう。


 ダンジョンゲートの前で1つ深呼吸をして、潜る。

 目の前に現れたのは先程までの村とは違う森林地帯、道の両脇には高い木々が立ち並び、長い雑草がその隙間を埋める。


「いくよ。《ポチ》、《ムク》、《ブー》」


 俺が呼ぶと地面に魔法陣が3つ展開され、それぞれ棺が登場する。

 その中から出るのは勿論俺が従えている死霊達。


 ウルフという四足歩行の歯の鋭く鼻が効く魔物の死霊であるポチ、だが毛は汚く胸の辺りに刺された傷がある。


 ムクバードという鋭く長いクチバシを持ち、羽を広げ高速で飛ぶことのできる魔物のムク、綺麗だった尻尾がなくなり腹部に傷がある。


 オークという大きな鼻を持つ、人間より少し大きくピンク色のゴツイ体をした斧を持つ魔物ブーは胸から胴にかけて斜めに斬られた痕がある。


 死霊と契約をして体に戻してゾンビ化させるのでみんな体は死んだ時の状態のままだ。


 他にもいるがこの3体が今使い勝手のいい魔物達であり、一気に召喚出来るのも3体まで。


「じゃあいつも通り頼むよ」


 俺が言うとポチとムクがそれぞれ空と地を奥に進んでいった。

 この子達に任せたのは斥候、奥がどうなっているのか、魔物等危険はないかを探ってくれている。

 そしてブーはボディガード、襲ってきた魔物を倒す役割だ。


 しばらくしてポチが戻ってくる、奥にゴブリンがいたみたいだ。

 ムクも戻ってきて、空から見た情報を教えてくれる。

 しばらく森林地帯で奥に行くと大きな川があるらしく、そこに人間がいるみたいだ。

 きっと村にいた他の冒険者達だろう。


「それじゃあ、いきますか」


 俺もとりあえずそこに向けて歩き出す、この先にゴブリンがいるんだったな。

 緑色の体をした小さな人型の魔物。

 小さくても力はそこそこあり、棍棒など手に武器を持って襲ってくる。


「3体か、じゃあブー頼むよ」


 ポチの言ったゴブリンがいた。

 俺が言うとブーがゴブリンめがけて歩き出す。

 気づいたゴブリンが逆に飛び掛かってくるが、ブーね斧により縦真っ二つに切り裂かれる。

 他のゴブリンもそれを見て同時にくるが次は横に振りまとめて上下に分断した。


 さすがブー、力が強いしあの体格で俊敏だ。


 ゴブリンの体から小さな石に似た魔結晶を取り出して先にすすむ。

 魔結晶は全ての魔物の器官内にある塊で魔力が込められている、冒険者は主にこれと固有のレア素材を売ってお金を稼ぐのだ。

 一般的に魔力の高い――強い魔物の魔結晶は大きいとされている。


 引き続きムクとポチに先導させ前に進む。

 レベル2だけありあまり魔物も多くないようだ、危なげなく進んでいけた。


「あれが川だな」


 木々の隙間から川が見え、近づく。

 冒険者は――いた、川のふもとで食事中らしい。

 俺以外3人ともいるらしい。


「もうコミュニティができあがっているか……」


 俺も一緒にいきたいと思っていたがこの現場をみて躊躇してしまう。

 他全員集まり、昨日からの新入りではあるが俺だけが誘われていないのだ、なんだか胸が苦しくなる。


 なら混ざらない方がいいかも知れないな、避けて通るか。


「あれ? リアンさんじゃないですか!?」


 草の音で気づかれたのか声がかかる。

 バレてしまったので申し訳なくまた顔を出すと手を振ってくれている。


「一緒にどうですかー!?」


 大きな声で呼ばれたので「ぜひ!」と返したけど、出し慣れていないので声が届かなかったみたいで首を傾げられる。

 行った方が早いな。


「リアンさんも来ていたんですね。すみません、昨日の今日だから疲れて迷惑かと思って」


 なるほど、誘われなかったのは気を遣ってくれていたみたいだ。

 3人の冒険者はそれぞれ剣士のジョンさん、魔法使いのミョンさん、弓使いのカムナさん。

 冒険者となってから日が浅く、一番長いジョンでも1年らしく、俺よりも皆年下であどけなさをのこしている。


「もしお腹空いてたら、どうですか?」


「あ、ありがとう」


 リアナさんから肉と野菜を串に刺して焼いたものを渡され、ありがたく受け取る。


 そこからは食べながら談笑する。

 昨日も話は少ししたがみんな話しをうまく振ってくれるので、話すのが苦手な俺でも苦はなかった。


「実は僕たちダンジョン配信をしてまして」


 そうジョンさんがいいミョンさんがあるアイテムを見せてくる。


 四角形の形で前面真ん中に筒がありレンズと言われている鏡が仕込まれたその装置は写映機しゃえいきという。

 内部には特殊な魔結晶を埋め込まれており、レンズで映した映像を記録できる様になっている。


「駆け出しなんで全然再生されないですがね」


 そう言ってカムナさんは苦笑いする。

 ダンジョン配信とは近頃若者の間で流行っているダンジョン内の出来事や内部を不特定多数に情報発信することを言う。


 写映機で映した映像は投稿することで全世界の再生機を使い再生することができ、また映した映像をリアルタイムに配信することもできる。

 前者を動画配信、後者をライブ配信と言われているらしい。


「というわけで今も撮影しながら狩りをしているんです」


「はぁ……」


 なぜかキラキラした瞳の3人、まさか……な。

 

 ♢


「リアンさん流石ですね!」


「そそんなことないですよ、でもありがとう」


 食事が終わり共に狩りをおこなう。

 結局動画が回され俺も映される事になってしまった。


 川を渡った先にいたのは主にコボルト。

 小さな獣人と呼ばれるその魔物は人間の子供サイズで2速歩行を行なう、顔はネズミによく似ており耳が発達した種族だ。

 持つ武器はダンジョンにより変わることもあるが、ここでは木で作られた槍を持っている。


 駆け出しの冒険者達とあって戦い方はぎこちなかったが、難なく倒していき、レベル2では問題はないように思える。


 俺としても雑魚や邪魔と言われず、撮られたり褒めてくれるのが恥ずかしいけど、嬉しく久しぶりに楽しいと思えた。


 ここで狩りをした魔結晶は売り、売った2割を村に還元するのが決まりだ。

 村人もいい人が多いみたいなので頑張って再興の手助けにならないとな。


 みんなは配信でも村を盛り上げるって意気込んでいる。


 ♢


「今日は撮影に付き合ってくれてありがとうございます、おかげさまでいいのが撮れました! 頑張って編集していい動画にしますよ!」


「う、うん、楽しみにしてます」


 ということで夕暮れ時まで共に狩りをした。

 俺の映った動画が流れてしまうんだと考えまた恥ずかしくなってきた。


 でもこの村なら楽しくやっていけそうだ、俺は歩きながら微笑んだ。

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