第1章

第1話 追放ですか!?

「リアン、お前今日でパーティ追放な」


 唐突な宣言に僕は唖然とする他なかった。

 パーティ5人でダンジョン攻略の打ち上げをしている最中であり、肉を刺そうと持っていたフォークを落としてしまう。

 お皿に落ち、金属音が悲しく響いたが正気に戻るなんてできなかった。


 追放宣言した主はこのパーティ【クリムゾンアイ】のリーダーのドレッド。

 パーティ名の由来となる赤く鋭い瞳を持ち、髪も燃えるような赤色を逆立て、体格のいい体にこれまた赤い光沢のある鎧を纏った強面の男剣士だ。


「いきなりどうして?」


 思考がままならない状態でそう呟くように言った僕をニヤリと笑いながら指を指してくる


「気持ち悪いんだよ、お前は」


 これまた訳の分からない理由に口が開く。


「それで……そんな事で追放?」


「お前がいるとミーシャやアイナが不快な思いをしているんだよ、今まで気づかなかったか?」


 え? と2人を見ると無言だけど確かに嫌な顔で見ている気がしてきた。


 ミーシャは長いピンク髪をして丸く大きい青い瞳が特徴の小さくて可愛らしい女の子、職業は賢者。

 アイナは黒くて真っ直ぐな髪をし、切れ長の茶色い瞳をした背の高いクールな女魔法使い。

 凸凹コンビなんて呼ばれる事もある2人はこのパーティの綺麗どころだ。


 そんな2人が本当にずっとそんなこと思ってたのかと凹む。


「それにロアだって、なぁ?」


「うむ、雑魚はこのパーティにはいらん」


 そして最後の1人、寡黙な格闘家のロア。

 職業に相応しい筋肉を持ち、年中半袖から逞しい上腕二頭筋を見せびらかす。

 太い眉、ゴツイ顔のすらその筋肉を強調する様だ。


 そんな彼は以前から俺を雑魚と見下す。

 確かに戦闘面ではあまり役に立っていないかも知れないが、雑魚はあんまりだろう。


 死霊術師ネクロマンサーである俺は従えた死霊を使い戦闘等をおこなう。

 俺自身の戦闘力は皆無に等しく、従えている死霊も強いものはいない。


「確かに戦闘では役に立たないけど、雑魚の相手に斥候や荷物持ちとかのサポートの役目は果たしているはずだ」


「いやいや、それで役に立っているとか思われたくないんだわ」


「死霊に荷物預けるの気持ち悪いし」


「うん、今まで我慢してきたけど、自分で持った方がまだマシだよ」


 アピールするも逆効果になってしまう。

 特に女性陣2人はめちゃくちゃ嫌そうだ。

 そりゃ死霊の見た目は悪いかもしれないけど、そこまで言う必要はないんじゃないか? 俺にとっては可愛い相棒達なんだよ。


「とにかく、だ。もうお前はいらないんだよ、邪魔。今までお疲れさん」


 食事中というのに早く出て行けと言わんばかりのアクションに全身が震える。

 馬鹿にされ悔しくて泣き出しそうなのを歯を食いしばって耐える。


 震える足をテーブルに力を入れた手でなんとか持ち上げ立ち去ろうとした時、「おい」とドレッドが止める。

 何だ? まだ何かあるのかと彼に目をやると小さい巾着が投げられた。


「餞別だ、これでうまいもんでも食えよ」


 どうやら入っているのはお金らしい。

 感謝する場面ではないのかもしれないけれど、もはや頭が回らなかった俺は無様にも「ありがとう」と言って店を後にした。


 そこからはもう記憶にない。

 たぶんひたすら叫んで走ったのだろう、自室で目を覚ますと喉が痛い。

 鏡を見ると目が腫れ、ただでさえ暗い顔がさらに気味が悪く見える。


「昨日のは夢じゃないんだな」


 手には馬鹿らしく巾着袋が大切に握られている。


「なんだよ、これ……」


 変な笑いに涙が出てくる。

 10G銅貨が5枚、総額50Gが中身だった。

 外食の平均的なお昼ごはん1食分、俺の今までの働きがこれだけってことかよ。

 情け無い、最後の最後まで馬鹿にされた。


 悔しくてその場にうずくまる。

 薄暗い1室での哀れな鳴き声は誰にも響かない。

 ただ、枯れるまで、いや枯れてもなお涙を流し続けた。


⭐︎以下あとがきです。⭐︎

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本格的な配信要素は第8話からとなります、それまでは少し陰鬱な場面になりますがどうぞ見てください。

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