追放された死霊術師、最強女勇者(死霊)と契約しダンジョン配信で神バズりする。元のパーティはそれに嫉妬して配信を始めるも散々みたいです

茶部義晴

プロローグ 全ての終わりと始まり

「えー、ここはレベル7ダンジョン、通称【覇者の剣】です。まだ最奥まで誰も辿り着けていないこのダンジョンに我々が挑み、みなさんにその映像をお届けします」


 俺、リアンは覇者の剣のダンジョンゲート前で写映機しゃえいきを構える。

 ダンジョンゲートとそれに向かう相棒のアリシアを画角に収め、その映像を世界に発信している。


『まじかよ、覇者の剣はいくらアリシア様でも無理じゃないか?』


『アリシア様頑張れ!』


『まじ期待!』


 写映機の上に表示された配信ウインドウに数々のコメントが秒速で流れていく。

 この【アリシアと死霊達チャンネル】も気がつけば世界一の登録者を誇るチャンネルになっており、その数は再生機を持つ人口の7割と言われている。


「そんじゃ、いってきまーす!」


 相変わらず高レベルダンジョンに挑むという緊張感が感じられない声を残し、アリシアはゲートを潜る。

 俺も後を追いゲートに侵入した。


 ゲートを潜った先に見えてきたのは、名前の通り幾本にもなる剣が地面に突き刺さった光景。

 夕暮れ時なのか茜色の空に照らされ、剣先がキラリと反射する。

 山であるのか、急な登り坂になっている。


『これが覇者の剣か、めっちゃかっこいいじゃん』


『えー、不気味』


『どんな魔物がでるんだ?』


 観ている人の殆どが足を踏み入れた事がないであろう光景にコメントが盛り上がる。


「ここはレッドクラウンだねー。かつて人間と魔物の戦争の舞台になって人間側がみーんな死んだの。だからこんなに剣が残されてるんだよー」


 写映機に向かって淡々と笑顔で解説するアリシア。


『まじ? やべーとこじゃん』


『なんでそんなに詳しいの?』


『嘘乙、咄嗟に作ったんだろ』


『アリシア様かわいー!』


 何故彼女が解明されていないダンジョンに詳しいのか。

 それは彼女が2000年前に勇者と呼ばれ、人間界と魔界を分断したその張本人であるからに他ならない。


「あら、デュラハンが出てきたね」


 デュラハン、首無し騎士とも言われる魔物で全身鎧の胴体と頭が分離しており、頭部を腕で抱えている黒い馬に乗った騎士の姿をしている。

 頭部からは怪しい光を発生しており、黒光りする鎧と合わさり不気味さが増す。


『いきなり高レベルの魔物じゃんやべー』


『アリシア様がんばって!』


『アリシア様ならいけるよ!』


『アリシア様かわいー!』


 コメント欄も魔物が出てきて応援のメッセージが飛び交う。

 デュラハン自体は過去にも登場しているが、それでもレベル6ダンジョンの奥で見られることがある魔物。

 強い敵には変わりはない、変わりはないんだけれど……。


「じゃあ、やりますか」


 腰から剣を抜き敵に向かって行くアリシア。

 表情には余裕がみえ、その動きは蝶の様に軽やかだ。


「えー、皆さま。以前見ていただいた方は知っていると思いますがデュラハンの弱点は水です。なのでアリシアは剣に水を纏わせています」


 水を纏いし剣を振るうとデュラハンは苦しそうに馬から落ちる、すかさず首に剣を突き立てその妖しく光っていたものが消えた。


『すげー! 余裕じゃん!』


『アリシア様素敵!』


『は? 合成だろ、こんなん信じれるかよ』


『↑新参の馬鹿? 今までの配信見てこいよ』


 鮮やか、そう言わざるおえない。

 世界屈指と呼ばれる人でも複数人で討伐できるかどうかという魔物を瞬殺した、コメントも大盛況だ。


 ♢


 坂を登り切ると城の前にきた。

 寂れた大きな城は今にも崩れそうなほどひび割れが多く、不気味な雰囲気をだしている。


「みんなー、この城知ってるかな?」


『知らないです!』


『なんですか? 怖い城ですね』


 アリシアの呼びかけにコメントで返す者がいるが、当然誰も知る者はいない。


「これはねー、ミネア城だよ。みんな知ってるでしょ?」


『え? これが? 信じられない』


『流石に嘘だろ』


『いやでも、形は似ている気がする』


 皆が衝撃を受けている、もちろん俺もだ。

 何故ならミネア城は俺たちの世界にもある有名な城であるからだ。


「まあ、中に入ってみよっか」


 そう言って先に進む彼女の後ろを追いかけた。


 ♢


「あらー、みんなこんな姿になっちゃったんだね」


 中で出迎えてくれたのは多数の悪魔達。

 デビルナイトとデビルプリースト、いずれも高レベルの魔物だ。


『え? 流石にやばくない?』


『負けないで!』


『アリシア様が負けるわけないでしょ』


 その光景に流石のコメントも心配のものが多くなるが、アリシアは表情を変えずなおも余裕がある。


「じゃあいきますか」


 そういって敵軍の中に飛び込み、目に追えない素早く華麗な動きで次々と討ちとっていく。


「《バン》、《レオ》頼むよ」


 俺の方に流れてきた魔物を処理する為、デュラハンのバンとキングライオンのレオを召喚して対応する。


『流石アリシア様!』


『てか撮影者も普通に強くて草』


 そうこうしている内に最後の1体をアリシアが倒したようだ。


「じゃあ、最後いきますか」


 最後ということは、このダンジョンの最奥が近いと言う事だろう。

 一体何が待ち受けているのだろうか。


「みんな、今までありがとうね。これで最後だから、しっかり見ていてね」


 大きな扉の前に立ち、カメラに向かっていつにない真面目な表情をするアリシア。


『え? どういうこと?』


『ちょっと待って! 引退しちゃうの?』


『え、いやだよそんなの』


 戸惑いの声が届く中彼女は扉に手を当て、そして中へと入っていった。


「やっぱりここに居たのね」


 中の広間にいたのは玉座に座る者。


「きたか、何年振りだ?」


「さあ、何年振りなのかな。でも今日でおわりにしよ」


 ――そしてこの配信は伝説となる。

 死霊勇者と勇者伝説の真実――。


 そしてこの時のためにドン底だった俺は彼女と出会ったのだろう。


⭐︎以下あとがきです。⭐︎

【作者からのお願い】

読んでいただきありがとうございます!

この小説を読んで少しでも

「面白い!」

と少しでも思ったら、♡、フォロー、⭐︎⭐︎⭐︎を押して応援してくれると嬉しいです!

レビューも頂けましたら跳んで喜びます!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る