第2話 狩り

 次の日、陽斗の仕掛けた罠を見に行くと、ウサギが3羽掛かっていた。それを、料理して食べた。その後、伊織を中心に武器作りを始めた。


「俺、この地に来る時、まるで消防の救助袋を滑るような感じがした。一瞬だったと思う」

と、祐樹が言った。


「俺は、忍者屋敷のどんでん返しの扉のような気がした。俺も、一瞬だったな」


「僕は、光の中を歩いているようでした。死んだのかと思いましたよ。でも、あれがタイムトンネルなのかなぁ」


「僕は、ブラックホールに引き込まれ、ホワイトホールに投げ出されたかと思いました」

伊織が言った。


 いろいろ試行錯誤して、強固な武器が出来上がった。狩りは日に日に、上手になり貯蔵も出来て、余暇を一人一人が楽しんだ。陽斗は、食糧の保存方法を考えた。伊織は、電気が使えるようにしたいと考えていた。颯太は、頑丈な家を作ることに熱心だった。祐樹は、牛の胃袋をボールにして、サッカーやバスケット、野球をやれるようにと遊び道具を作っていた。



 今日も、みんなで大物を捕ろうと、狩りにやって来た。伊織の作った武器は最強だった。牛を見付けた。5頭が集まって、草をついばんでいる。


「一頭を離そう。5頭が一斉に向かって来たらまずい。まず、みんなで弓を放とう。ばらばらになったら最強の武器を使う」

と、祐樹が言った。


「俺が仕留める。エアガン競技の腕前を見せてやる」


「合図は、颯太さんが出してください」

と、陽斗が言った。


「木の間から、分かれて打ち込みましょう」


「分かれろ。構えて。打て」

颯太は、合図を出した。颯太は、他の牛と反対方向に逃げた、一頭を仕留めた。


「やった、最高!」

と言って喜んだ。丸太に縛り付けて4人で運んでいた。



 そこへ、木の実を採取している娘たちを見付けた。5人の若い娘にみんなは、驚くというよりも以前みんなを見付けた時と同じ感情だった。しかし、この時代の娘なので、躊躇した。


「どうする。話しかけるか」

祐樹が言った。


「言葉が通じない」

颯太が言った。


「今日のところは帰って、作戦を練りましょう。僕たち4人では心細いので、どう接触するか考えましょう」

陽斗が言うと、みんなも納得した。


 みんなは頷き、久しぶりの娘に顔がほころんでいた。重い牛も、心なしか軽く感じている。伊織は、好きな歌を口ずさんでいた。 


 みんなは、牛をさばき、半分を干し肉にした。半月分はあった。

「食べる時は、いただきますとご馳走様を言って、手を合わす方が良いですね」

陽斗が言った。


「そうだな。我々の命を長らえる大事なものだから。それに、昔は当たり前だったのに、有り難味を忘れたな」

颯太が言うと、みんなは手を合わして、頂きますと言って食べた。


「焼き肉は美味しいね」


「あの娘たちに干し肉を上げて、様子を見るのはどうでしょう」


「言葉が通じないので、それがいいかもしれない」

颯太が言った。


「まずは、あの場所に行って、男がいなければ、一人だけで近付いて、渡して帰ろう。それを、何度か続けて、心を許してくれるのを待とうぜ」

祐樹が言った。


「僕がその役をやります」

伊織は、嬉しそうに言った。

 みんなは、優しそうな伊織が適任と賛成した。



 五人の娘たちがまたいた。伊織は一人みんなから離れた娘に近づき、やさしい笑顔で牛の干し肉を差し出した。娘は固まった様子で、逃げ出さなかった。伊織は、袋に入った干し肉を一つ取り出して、一口食べて見せた。


「あげるよ」

伊織は、干し肉を娘の手に持たせた。


 娘は笑顔の伊織に親しみを持って見つめて、受け取りやさしい目をして、お辞儀をした。伊織は、肉を食べながら、手を振ってその場を後にした。



「見知らぬ優しそうな若い男が、何かくれたよ」

アミが言った。

「何をもらったの」

エリが言った。


「美味しい。牛の干し肉ね」

と言って、サトは手に取り食べた。

 みんなも食べて、喜んだ。


「私たち、ここ長いこと、牛なんて食べてないね。みんな年だから、無理は出来ないし、こんな大物を捕れないよね。怪我することが多く危険らしいからね」

トシが、言った。


「それなら、仲間に入れてもらおうよ」

マイが、言う。


 

 伊織はみんなの待つ所へ戻った。


「可愛い子に渡しました」

伊織は、にこにこしている。


「どんな反応」

祐樹が、尋ねた。


「驚いて、動けなかったのかな。でも、袋から一つ出して肉を食べて見せると、安心したのか袋を受け取って、お辞儀をしましたよ。それで、手を振って帰って来ました。良い感触でした」


「それは良かった」

颯太が言った。


「これからも、気長に続けましょう」

陽斗が言うと、みんな頷いた。



 みんなはここから離れて行き、狩場へ急いだ。四人は、意気盛んになり、また牛を捕えた。やはり、口に合うのか、ほかの野獣より牛を狙う事が多かった。でもその内に、飽きたら別の野獣を物色するのだろう。


 あの娘たちは、住み家へ戻った。もらった干し肉をみんなに分け与えた。子供たちは、いつもの食べ物と違い、嬉しさのあまり飛び上がって喜んだ。みんなで話し合い、友好的に交際出来れば良いという結論だった。しかし、狩りの腕前などを覗き見したりして、もう少し様子を見ようという事になった。

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