第25話 コンビ名決定
それから二週間が経過し、その間ネタ作りとネタ合わせに励んできた私たちお笑い研究部メンバーは、いよいよその成果を明日披露することになった。
それぞれのコンビ名も決まっていて、三場君と福山君のコンビは『サンプク』。
これは三場君のサンと福山君の福をプクと読んで二つを合わせたものだ。
私とヨッシーのコンビ名は『P&P』。ちなみに、PはプリティーのP。
私たちが二人とも可愛いからって、ヨッシーが命名したんだけど、当然のごとく私は反対した。
けど、三場君が『面白いからそれでいいんじゃない』って言ったものだから、それ以上強く言えなくて、結局そのまま押し切られる形になった。
「明日いよいよみんなの前で漫才を披露するけど、ここまで来たらもうジタバタしても仕方ない。今日の活動はネタの順番をチェックするだけにして、明日に備えよう」
三場君はそう言うと、いつものように福山君と話し合いを始めた。
「じゃあ、私たちも始めようか。まず最初は学校ネタを三つ披露して、その後は──」
ネタの順番をチェックし始めた途端、ヨッシーが含み笑いを浮かべる。
「何がおかしいの?」
「いや、ネタを一つ増やそうと思うんだけど、ダメかな?」
「どんなネタ?」
「時事ネタなんだけどね。昨日俳優の○○が不祥事を起こして謹慎になったでしょ?
それをネタにしようと思ってね」
「ああ、そう言えば、ネットニュースになってたね。でも、今から増やして間に合うかな?」
「コンパクトにまとめれば、すぐ終わるよ。だからいいでしょ?」
「仕方ないなあ。じゃあ、順番のチェックが終わったら、ネタ合わせしようか」
「サンキュー」
私たちはネタの順番をチェックすると、新ネタを軽くネタ合わせし、その後帰路に就いた。
就寝前、私は昼間三場君から受け取ったノートに目を向ける。
【やあ! 三場健人だぞ。いよいよ明日、みんなの前で漫才を披露するわけだけど、今の心境はどうかな? えっ、緊張してるって? はははっ! バカだな。カラカラより、俺の方がもっと緊張してるっつーの。ほんと、緊張して胃に穴が開いちゃったよ。……というのは冗談だけど、それくらい緊張してるってことだ。はははっ!
で、話は変わるけど、最近ヨッシーとうまくいってる? あいつ気分屋だから、扱いが大変だろ? 今日もネタの追加を頼まれてたけど、無理に引き受けることないからな。嫌なら嫌って、ハッキリ言ってやればいいんだ。そしたらあいつも、あまりわがままを言わなくなるよ。
実は俺もコンビを組み立ての頃、福山のことで苦労したんだ。基本的に福山とヨッシーはよく似てるからな。あいつ、自分の考えたネタだけ押し付けて、俺が考えたネタには見向きもしなかったんだぜ。それでも、最初は福山の気の済むようにやらせてたんだけど、さすがに我慢できなくなって、俺の意見もちゃんと聞いてくれって言ったんだ。そしたら、分かってくれたよ。で、その日からお互いに意見を出し合いながら、ネタを作っていったんだ。
まあそれでも、ネタのことで口論になることはあるけど、基本的にどっちかがどうしても嫌な場合、そのネタはボツにしてるから、そこまで揉めることはないんだけどな。というわけで、明日はお互い全力を尽くそうぜ。あばよ!】
読み終わると、私はすぐさまシャーペンを手に取り書き始める。
【やあ! 池本カラスウリだぞ。いやいや、ケンケンより私の方が全然緊張してるから! 私なんか胃に穴が開くどころか、胃全体が溶けちゃったんだからね。あははっ! まあ、もちろんそれは冗談だから本気にしないでね。
ケンケンが福山君と時々言い合いみたいなことをしてたのは知ってたけど、そういうことだったんだ。わがままな相方を持つと、お互い苦労するね。でも、私たちは部長と副部長なんだから、立場的にそれくらいは我慢しないといけないなんだよね。
私とヨッシーもこの二週間の間にいろいろあったけど、なんとか漫才を披露できるところまでこぎつけたから、最初の頃に比べると大分進歩したよ。
あとは私たちの漫才がクラスのみんなに受け入れられかどうかだけど、今は不安より期待の方がはるかに大きいんだよね。
それだけネタに自信を持ってるってことだけど、過信して調子に乗らないようにしないとね。というわけで、明日また会いましょう。アディオス!】
本当は今からちゃんと眠れるか分からないくらい不安なんだけど、お笑い研究部副部長として、そんなことを書くわけにはいかない。
私は眠れないことを覚悟しながらベッドに入り、無理やり目を閉じた。
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