第9話 リジョイン パート1
統一歴4057年3月30日
現在の銀河では多数の種族や国家が存在し、宇宙航行をはたしている。そして現在の「人間」の定義は「一定の文明があり、思考力、コミュニケーションがとれる存在」としている。異星種族同士がコミュニティを作るのも当たり前の時代となった。
この宇宙は「三大勢力」とされる"コヴナント連合"・"シタデル評議会"・"ユーリシア連邦"以外にも多数の国家が存在している。大抵は前述した三勢力のいずれかに与する事がほとんどであるのだが、少数ながらいずれの勢力にも加担しない国家(”中立国”と呼称される)が存在する。彼らは「三大勢力による利益と権力の独占」を指摘しており、「銀河間特務捜査機関(ISIA)の捜査権は既存の国家間条約の反故を促し、大国による非正規仲介を安易に行うための道具である」と批判しているが、この世界は弱肉強食「弱者の意見が通ることはあり得ないのだ」
〜コヴナント支配領域 衛星コルラトゥス〜
恒星にほど近く、岩石と鉄が地表の9割以上を占める惑星"キトゥン"と同じような岩石衛星"コルラトゥス"は300年以上前まではコヴナント有数の鉄鉱、レアメタル、金、ウラン等の資源開発惑星・衛星として栄華を極めたが、数千年間に渡って資源を回収し尽くした結果、この星系の主要産業が完全に立ち行かなくなり、それに伴い人口流出が加速していき、いつしか忘れ去られた星系としてヒッソリと佇んでいたのだが、この立地に目をつけたISIAがすぐさまコヴナントと交渉を行い、キトゥンとコルラトゥス、そして星系全体の所有権を手にした。
~カルパステーション ISIA保有の大型複合施設~
この大型施設はもともとレアメタルの採掘基地として使われたいたが、ISIAが接収した現在では大型の軍事訓練施設や大規模な居住コロニー、最新鋭の医療設備、防衛システム、研究施設、中規模な指令部、広大な施設を移動するためのモノレールを備え、コヴナント領域のISIA支部や捜査官たちの活動に欠かせない基地となっている。
~カルパステーション 屋内訓練所~
タタタン! タタタン! パラララ! パラララ! 様々な銃声や訓練を受けている者達の雄たけびが鳴り響くこの訓練所にギャレスとアーセルスがいた。
タン! タン! タン! ギャレスがセミオートのDCS56で訓練用の標的を撃っていると、不意に「なぁ!ギャレス!」というアーセルスの声が響く。
「どうした?」ギャレスが銃にセーフティをかけ、薬室から弾を抜き、銃からマガジンを外してアーセルスのもとに歩み寄る。
「一戦手合わせしてくれないか?」そう言って一本のゴム製のナイフをギャレスに投げ渡す。
「・・・さっきまで連中は?」ギャレスは先ほどまでアーセルスと戦っていた者達を思い出したが、アーセルスが「あいつ等の事か?」と目線を向ける。
そこには地面に倒れ伏した者、メディック部隊によって治療を受けている者など死屍累々が積みあがっていた。
「まさか・・・アレ全部お前が?」ギャレスはダラダラと冷や汗をかきながら引きつった笑みをアーセルスに向ける。
「あー・・・まぁ大丈夫だろ・・・多分」アーセルスも少し気にしているのか目線をそらす。
「まぁ気にしても仕方ないだろ!ほらやるぞ!」「あのな・・・上の人達に小言を言われるのは誰だと思って・・・」「それともなんだ、負けるのが怖いのか?」アーセルスがフンと鼻で笑い、あからさまな挑発をしてくる。
「後悔するなよ?」ゴム製ナイフを握りしめたギャレスがアーセルスを睨みつける。
~しばらくして カルパステーション 医療棟~
ここ医療棟では多数の医者、看護師、
この医療棟の清潔感ある白い廊下を歩くフルーム、訓練終わりなのだろう白色のバトルアーマーを装備し、MP5Eというエネルギーサブマシンガンを携帯しながら周囲の様子をうかがう。
(なんか慌ただしいような気が?)担架で運ばれる怪我人の多さに少し疑問を覚えるフルーム。
ふと担架に運ばれている者達の中に身に覚えのある人影が居た気がした。
その人影が運ばれた治療室に入るとそこには、ギャレスとアーセルスが仲良く治療を受けていた。
「何してるんですか?」二人の事を呆れたようにジトっとした眼差しで二人の事を見ているフルーム。これに対して大人しく治療を受けているアーセルスが「これには深いわけが・・・」としどろもどろに答えるが、よく見ると治療のため露出した腕や足には痣や生傷がいくつも存在し、鼻からと口には出血の痕、首元にも極め技か何かで締め付けられた痕が残っていた。
ギャレスのほうにも同じように痛々しい生傷が全身に点在しており、アーセルスとは違い打撲痕が多く、かなりの力で殴られたことが窺える。
「・・・でアーセルスの挑発に乗って二人で戦っていたら思いのほかヒートアップして気づいたらこんなにボロボロになってたと?」ギャレスの腕に包帯を巻き、薬用ジェルを塗り込むながらフルームが2人の事を睨みつける。
「「ハイ・・・」」フルームの治療を受けている手前何も言えない二人。
「それにアーセルス!他の捜査官や訓練生達までも医療棟送りにしたと聞いていますが?」フルームが怒りのあまりドスの効いた声に変っていく。
((これは長くなりそうだ・・・))ギャレスとアーセルスはこれから始まるであろう長期戦にため息を吐き、憂鬱とした表情に変わっていく。
~カルパステーション 実験棟~
この実験棟では、ISIAだけでなく他国の法執行機関の装備開発や犯罪組織から回収した武器・兵器の解析、ISIAと協力しているごく一部の民間軍事会社との共同開発も行っている。
~同時刻 実験室 B-21~
物々しい重厚な扉によって閉じられた実験室、その中では防爆性のアーマーとフルフェイスマスク、ヘルメットを着込んだスミスが一人ポツンとたたずんでいた。
「録画できてるか?」スミスが大きなガラスに向かって声を上げると、「オッケーいつでもいいよ」スピーカーからリコの声が大きく響く。
スミスが腕に着けている小型マイクに向かって「これより"RE21"ーコードネーム"ウォーハウンド"、バージョン6-2のテストを開始する」と語ると、腰につけていたタブレットを操作し始める。すると背後にたたずんでいた1.6mはありそうな四脚ロボットが動き始める。
ガシャガシャと動き始めた"ウォーハウンド"はしばらく周囲を散策した後、立ち止まりウィーンという音と共に機体上部についている大型の銃器が作動すると、眼前に複数の人型の人形が現れる。レックスはドン!と上部の銃器から弾丸が発射される。すると800m以上は離れている標的に命中させると、続けてドン!ドン!と標的を撃ち抜いてく。
「対人レールキャノン"EPG98"の800m~1000mまでのテスト終了。次、"フェリックス"迫撃砲のテスト開始」
スミスがタブレットを少し操作すると、今度は小型の筒状の煙突のような物が"EPG98"のすぐ後ろで動き始めた。
ポン!という炸裂音が響くと同時に小型の球体が飛び出し、260m先にある人形の密集地帯に球体が着弾すると、その周囲一帯が炎で包まれる。
そのまま何発か迫撃砲を撃ち込むとスピーカーから「スミス!レックスを緊急停止させて!内部気温が急上昇してる!このままじゃ迫撃砲の砲弾が暴発するよ!」と耳が壊れそうな程の音量が実験室全体に響く。スミスが急いでタブレットを操作し、ウォーハウンドを緊急停止させると、ガラスのすぐ隣にある扉から防護服を着込み、手に消火器を持った人達がレックスの元に駆け寄ると、消火剤をレックスに向け吹きかける。
「今回も失敗だな・・・」スミスはマイクに向かって落ち込んだ声で結果を報告する。
~カルパステーション 食堂~
カルパステーションの大型食堂、ここには数百人職員が同時に食事がとれるだけの広大な空間と彼らの胃袋を満たす良質な食事が提供される。
「うーん・・・モーターとバッテリーの耐熱をどうするかだね・・・」リコがハンバーガーを食べながら目をつむり、考え込んでいる。
「なぁオルカ、なにか良い案はないか?」スミスがパスタをすすりながらオルカのほうを見る。
「俺はレールガンや迫撃砲なんかの兵器アドバイザーとして呼ばれただけで細かい部品は専門外だ」オルカは気に留めることもなく寿司(人類が見たこともない色味のネタ)を頬張る。
「お!三人もここに居たのか!」聞き覚えのある声がスミス、リコ、オルカの耳に入る。声のした方を見るとギャレス、アーセルス、フルームが食事をトレイに載せて向かってきているのが見えた。
「あぁ、お前らもメシを食いに・・・ギャレス、アーセルス、その傷どうした?」オルカが2人の傷痕について問いただすと、優しい声色で「まぁ少し・・・」と語るフルームが2人を睨みつける。
~しばらくして~
「ということがあったんですよ」フルームがひときわ大きなため息を吐く。
「何やっての・・・」リコもギャレスとアーセルスを呆れた眼差しで見つめる。
ギャレスとアーセルスは思うところがあるのか、サッと目線をそらす。
「そういえば!そっちのプロジェクトはうまくいってるのか?」ギャレスが咄嗟に話題をすり替えようと焦った声でリコ、スミスに話しかける。
「うーん・・・”現状はどん詰まり”とだけ言っておこうかな」スミスが苦悶の表情を浮かべる。
そもそも何故キーパーズはこのカルパステーションに滞在しているのか、その理由は二週間以上前にさかのぼる。
~3月10日 カルパステーションロビー~
休暇が終わると本部から「直ちにカルパステーションへ出頭せよ」という命令が降ったキーパーズは命令されるがまま、カルパステーション行きの船に乗せられたのだった。
長い船旅を終え、カルパステーションのロビーへ歩みを進めると、強化外骨格と重装アーマー、数々の重火器を装備した数十人の警備隊に出迎えられる。「少し待て」鋭い眼光をしている警備員の一人がタブレットを操作しながらキーパーズ一人ひとりの顔を確認していく。
「出頭命令が出ているな。案内のドローンに従って"中央棟 管理局長室"に向かえ」
無愛想な警備員の指示通り、ステーションを案内するドローンに追従する6人。
~25分後 管理局長室前~
目的の部屋の前まで来た6人だが、その顔には疲労の色が浮かんでいた。
「長くないか?」「このステーションの大きさは噂に聞いていましたがここまでとは・・・」
キロ単位での長さを誇る廊下、ステーションを結ぶモノレール路線、気が遠くなる程の時間待たされるエレベーター、移動するだけでも一苦労するほど巨大なこの建物群にウンザリし始めるキーパーズ。
「もうすぐだ、気を引き締めるぞ・・・」ギャレスが深く、深呼吸をすると、扉の横にあるインターフォンを兼ねた端末を操作する。
端末に備え付けられているスピーカーから少し、しゃがれた声で「誰だ?」と聞こえてくる。
「キーパーズのリーダー、ギャレス・ヴァガリアンです。出頭命令を受け、ただいま到着いたしました。」
「入れ」
シュンと音を立て、自動で扉が開く。
「失礼いたします」ギャレスを先頭に残りのメンバーも入室していく。
中は華美だが落ち着いた様相をしており、正面の壁にはISIAのロゴがステーションと同じようにその存在を大きく主張している。入室して右側に大きなラック、そこには数々のトロフィーやメダルが飾られている。反対には大きな窓が存在しており、ステーションの全体と暗黒を思わせるような宇宙空間が眼前に広がっている。そして部屋の中央にある大きな机、そこに腰掛け、手に持っているタブレットと睨めっこしており、カッチリとした制服とその胸に輝くいくつかのメダルを付けた初老のプロフェッサーの男。そのすぐ隣にある来客用だろうか、お世辞にも豪華とはいえない椅子に白衣を羽織った薄緑色の鱗をした若いゲルコニアンの男が座っている。
「キーパーズただいま到着いたしました」ギャレスが敬礼の構えをとる。
まず初老のプロフェッサーの男が口を開く。
???「初めまして。諸君らの華々しい活躍の噂はここまで聞こえているよ」そう言いながら手に持っていたタブレットを机の上にそっと置く。
「とっ自己紹介がまだだったな、ワシはこのカルパステーションの管理人兼代表の"レリオル・ヴァス・リョーク・クフゥ・バレン"・・・長いから"バレン管理局長"とでも呼んどくれ。そしてこちらが・・・」バレンがゲルコニアンの男に向け手を差し出す。
「初めまして!私は"ソーコル"!ISIAの"テクノロジー部門の代表"をしている!」ソーコルと名乗ったゲルコニアンが早口で捲し立てると、突然ガバッと立ち上がり、リコの元にズカズカ歩み寄る。
「なっ何?」リコの元にずいっと顔を近づけるソーコル、すると・・・
「貴方が"リコ"ですね!噂はかねがねお聞きしています!連邦軍では数々の無人兵器開発に関わり、その全てが素晴らしい戦果を挙げていると!あぁそうですよね!学生の時からあれ程ハイスペックなドローンを作ってしまうのですから!あの連邦主催のドローンレース大会は私も観戦してましてね!私もスカウトしようとしたのですが、連邦軍のスカウトに一歩先を越されたんですよ!」
「はは・・・どうも・・・」
ソーコルの止まることを知らないマシンガントークに圧倒され、上半身が後ろに反れ、苦笑いするしか出来ないリコ。
(あのリコが圧倒されてる)ギャレス達が遠巻きに眺めていると、「うん?あんた、”ISIAテクノロジー部門代表”って言ったか?」オルカがソーコルに尋ねる。
するとソーコルのマシンガントークがピタッと止まる。全体を見渡し、「ゴホン、失礼」そう言って乱れた白衣を整える。
「改めて、私はISIAのテクノロジー部門代表のソーコル。今回の召集に答えてくれて感謝します。」
そう語ると、バレンが先ほど机に置いたタブレット操作すると、部屋が暗転し中央に”犬にも似た全高1.2m・全長1.6mほどある四脚ロボット”が投影される。
「昨今、犯罪者達の装備の質が向上しているのは現場をよく知るあなた方なら感づいているでしょう?従来の武器に加え”軍用のレベル6フルアーマー”、”高性能ドローン”、”軍用サイボーグの義体”、他の捜査官による報告によれば化学兵器まで!ただでさえ各惑星にいる警察組織や法執行機関は苦戦を強いられているのにこのままでは我々ISIAまでもが危険にさらされる。そこで!”現行兵器の改良並びに新兵器開発を推し進めるプロジェクト”がつい最近、総司令によって認可されました。」
ソーコルが仰々しく身振り手振り交えながら話しを進める。
「このプロジェクトのためにISIAのみならず、銀河全域から信頼できる科学者、エンジニアをかき集めています。もうおわかりいただけますね?そう!リコ、スミスあなた達にもこのプロジェクトに参画していただきます。いえ・・・これはもう決定事項なのです!拒否権はありません!」
ソーコルが強く両手を握りしめ、真剣なまなざしで見つめる姿から本気でやり遂げるという熱意が伝わってくる。
「で・・・俺達はそこに映っているいるロボの開発に協力してほしいと?」スミスが興味ありげにホログラムを凝視しながら訪ねる。
「お察しの通りです。詳細は私ではなく、実験棟B-21で開発の主導している民間軍事会社"ヴァイタル・アームズ・テクニクス"のエンジニア"レジーナ・マリン・ガルシア"と話してください・・・うん?」ソーコルが右腕に着けているデバイスからピピっと音が鳴る。
ソーコルがデバイスに夢中になっている間ギャレスはオルカの顔が険しくなっていることに気づく。(ヴァイタル・アームズ・テクニクスで何かあったのか?)
当のソーコルはデバイスの画面としばらく睨め付けたと思うと、「何!!」と何かに驚いた様子を見せ、バレンに「私が主導しているプロジェクトで大きな進展があるのでこれにて失礼します。後はバレンさんに任せていいですね!!」と早口でまくし立てる。
バレンが返事をする間もなくソーコルは白衣の裾をはためかせ、どこにそんな脚力があるのか、かなりのスピード駆け出し部屋を出ていく。
バレンは慣れているのか特に気にすることもなく「あー・・・そういうわけでリコ、スミスは件のプロジェクトに参加してくれ、残りの4人にはこのステーションの訓練施設にいる訓練生に対する指導や協力体制にある法執行機関の隊員達との訓練に参加してくれ。諸君らの休暇終わりの肩慣らしにちょうどいいじゃろ。ここの滞在手続きはすでに済ませておるから各々別命あるまで待機せよ。」
「了解しました!では失礼いたします!」ギャレス達が敬礼の構えをとり部屋を後にする。
しばらく廊下を進むとギャレスが小声で「オルカ、少し話があるんだが良いか?」と尋ねると、「別に構わないが・・・どうした?」とオルカが首を傾げながら答える。
「みんなは先に行っててくれ!オルカと一緒に少しやる事があるんだ」
「分かった。先に行ってるぞ」アーセルスが皆を引き連れ、廊下を進んでいく。
しばらくして周囲に人がいないことを確認すると、ギャレスが真剣な顔をしてオルカに尋ねる「ヴァイタル・アームズ・テクニクスと何かあったのか?」
オルカは一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったように目をパチパチさせたが次の瞬間、表情をこわばらせ不快感を隠そうともせず「それがどうした?」とギャレスを睨みつける。
ギャレスはオルカから発せられる圧にたじろぐが、「悩みや不安を抱えて任務に支障をきたして欲しく無いし、お節介と思われるかも知らないが、何かいざこざがあれば俺も協力したいだけなんだ!」と大きく吠えるように答えるが、その震えるような声を聞けば、必死に去勢を張っている事などすぐに分かるだろう。
オルカは怒りを顕にして「確かに俺はフリーランスになる前"ヴァイタル・アームズ・テクニクス"に身を置いていた事もあった!だがそれはお前には関係ない事だろ!」と咆哮と聞き間違えるほどの大きな声を張り上げる。
この激しい口論で周囲にポツポツと人だかりができており、彼らがヒソヒソと小声で話している内容には「警備チームを呼ぶべきか?」という声も聞こえて来る。
周囲の状況とギャレスの啞然とした表情を見たオルカはハッと我に返って、「あー・・・悪いな」俯きながら片手で顔を覆い隠す。
「まぁ・・・なんだ、俺とあの傭兵連中には少し”個人的”ないざこざはあるが、仕事で公私混同は絶対しないからそこは安心してくれ」先ほどの荒々しい表情と声が一変して、優しく慈しみさえ感じる態度でギャレスに語りかけるオルカ。
「じゃ」と片手をあげその場を立ち去ろうとするオルカ、「あの!まっ!」ギャレスが焦って腕を伸ばしてオルカを止めようとするが、オルカがクルリと振り返り、「しつこいぞ」と優しく諭すよう語りかけてくるの見て何も言えなくなってしまった。
~現在~
「ギャレス聞いてる!」リコの声でハッと我に返るギャレス(オルカはまるで何事なかったように・・・気にしてるのは俺だけか?)チラリとオルカを見るが、いつもと変わらない様子に悶々としている。
「で・・・あの傭兵連中とはどうなんだ?」アーセルスが食事を口に含みながリコに尋ねる。
「”ヴァイタル・アームズ・テクニクス”の事?エンジニア部隊としか交流がないけど、かなり腕がイイね!色んな専門家が勢ぞろいしてるし、皆がやるべきこと理解してくれてる!逆に戦闘部隊はどうなの?」
「ふむ・・・まぁ特筆事項は特にないって感じだな、腕は悪くない。俺やギャレスほどじゃないがな!」アーセルスが同意を求めるようにチラッと目を合わせる。
「あ、あぁ・・・ところで”ヴァイタル・アームズ・テクニクス”ってどんな連中なんだ?俺は彼らと関わりがなくて・・・」
「俺も知ってる事なんかネットに転がってる情報くらいだが確か・・・オルカ、あんた元々ヴァイタル・アームズ・テクニクスに雇われていたんだろ?何か知らないか?」
「そうだな・・・」オルカが一瞬、顎に手を添え何かを思案した後、「よし!俺が"業界最大手の民間軍事会社"について一から教えてやろう。オルカ先生の言うことをよく聞くように」
「はーい」リコが気の抜けた返事をかえす。
「まず!奴らのことを"民間軍事会社"と言うのは間違ってる。正確に言い表すなら・・・"軍産複合体の集大成"ってところだな、兵器の生産、開発、卸売り。それだけじゃ無い、国家、種族、宗教、思想を問わず腕の立つ正規軍やフリーランスの傭兵を雇い込んでる。人数だけで言ったら・・・中小国の軍隊とそう変わらないな」
「そこに加えて彼らの持つ最新の武器とテック、資本力、彼らと契約を結んでる政治家や著名人とのコネが合わされば、もう敵なしだな」スミスがやれやれといった様子で首を横に振る。
???「あら!あなた達のチームにはウチの元従業員も所属してるのね!」どこからか女性の声が聞こえてくる。
声のした方を見てみると、黒を基調とした長袖の作業着を身に着け、胸に”スパムを掲げる義手”のバッチを付けた若い人類の女性がコチラに歩いてくるのが見える。
「"レジーナ"、あんたか・・・」「アンタの部下はどうした?」スミスやリコ、オルカは既に顔見知りのようだ。
「アタシの部下は先に休ませるよ・・・とそちらのお三方とはどういう関係なんだい?」レジーナと呼ばれた人類の女がチラッとギャレス達に目を配る。
ギャレスが席を立ち「初めまして、私はこのチームのリーダー、ギャレス・ヴァガリアンです」
「あらご丁寧にどうも、私は”レジーナ・マリン・ガルシア”、ヴァイタル・アームズ・テクニクスから派遣されたエンジニアチームの代表よ」
両者が歩み寄り、握手を交わす。
「あなたのチームには感謝してるわよ。この2週間でプロジェクトが大きく前進したのは彼らのおかげと言っても過言じゃないんだからね」
「なぁ、そのプロジェクトってのはどんなモノを開発してるんだ?」アーセルスが疑問をなげかける。
「よくぞ聞いてくれたわね!」レジーナが”待ってました!”と言わんばかりにイキイキと話しを始める。
「この多機能型四脚戦闘メック-”ウォーハウンド”、こいつは数年前からISIAと我々ヴァイタル・アームズ・テクニクスが共同開発を続けてきた機体でね。ハイグラフィティサーモ識別カメラでの高精度計算サイトと360°全方位をカバーするセンサーアレイで周囲の状況の把握と敵味方の識別が可能、背面と後部に二種類の武装を搭載でき、専用のキットを使えば5分もかからず武装の切り替えでるわ。装甲には軍用サイボーグの外皮にも使われるラマアンドハイ合金に合成ナノチューブを混ぜ込んだ我が社完全オリジナル!さらに駆動系には・・・」
この時彼女の話しが15分以上続くとは思わなかったが、アーセルスが一つだけ学んだことがある
(技術屋連中に質問するのはやめておこう)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます