第7話 エラーコード

統一歴4057年2月14日


現在の銀河では多数の種族や国家が存在し、宇宙航行をはたしている。そして現在の「人間」の定義は「一定の文明があり、思考力、コミュニケーションがとれる存在」としている。異星種族同士がコミュニティを作るのも当たり前の時代となった。


この銀河のおいてサイボーグ(身体の機械化)はユーリシア連邦と一部の連邦賛同国を除いてほとんど普及していない。昨今の生物学・遺伝子学の発達によって部分的なクローン生成が可能となっている。このテクノロジーによって四肢や重要な臓器を損傷しても数か月あれば回復することが可能となった。サイボーグは機械部分のメンテナンス、部品輸送などの点からも軍隊からは否定的な意見が多い。連邦と連邦賛同国は進んだロボット工学や生体工学をサイボーグテクノロジーに応用しており、連邦正規軍の全員がサイボーグではないが一部の特殊部隊や特技兵が装着している。


~連邦領域 バルドクニアンの母星ギャター~


ここギャターはバルドクニアンの母星である。惑星全体が極寒の環境で暖かくても-10℃、最も寒い時は-100℃まで冷え込むが連邦のテクノロジーや工業化による影響で温暖化が進み、現地のバルドクニアン達は「寒いどころか暑いくらいだよ」と語っている。また連邦で「最も質の良い物」が作られる惑星でも知られ、年がら年中休みなく日用の消耗品から最新鋭の軍艦まで、ありとあらゆる物を生産している。なおこの惑星に来訪する者は耐寒環境適応スーツを持参することを推奨している。


~ISIA ギャター支部~


ISIAギャター支部は一見すると小規模な鋳造工場のように見える(明らかに過剰な警備システムに目をつむれば)が、内部は大きく印象が変わり、小ぎれいなオフィスに重装警備部隊、大量の量子サーバなど一般の工場では考えられないほどの設備と人員が配備されている。


ここにキーパーズの5人が招集されていた。


「ブリーフィングルーム」と呼ばれる部屋に、キーパーズと「ギャター支部所属の戦略情報分析官」が数名、そしてギャター支部の「支部長」である「オリグ・テロン・フェーバー」と呼ばれるバルドクニアンが神妙な面持ちで話し合っている。


「キーパーズ諸君、ギャター支部の来訪を歓迎するが、さっそく任務の話しに移らせてもらう」


オリグはテーブルの上にホログラムを投影し、情報を表示する。


「今回の任務は”とあるブツ”を回収してもらうことだ」ホログラムの画面が変わり、”蜘蛛に似た1メートルほどの大きさをしたメカ”が映っている。

「こいつは”アカミネテクノロジー”が開発した”SIS-2”・・・通称”アラクネー”。

 アラクネーは光学迷彩や熱赤外線迷彩ねつせきがいせんめいさいも搭載して発見は非常に困難。また自らのボディをコンパクトにすることで最小60センチまで小さくでき、高性能カメラやサーモグラフィー、赤外線探知でありとあらゆる場所が偵察可能、付属の銃器を取り付けるだけで、”暗殺任務”もこなせる。極め付けは高度な軍事AIを搭載しており、使用者がコマンドを与えなくとも自動で動き、自ら思考し、完璧に任務を達成する優れた製品だ。だが・・・アラクネーを運んでいた輸送車が襲撃を受け、奪われてしまった」


オリグが苦虫を嚙み潰したような顔し、ホログラムの画面が変わり、ある動画が映っている。


 これは、ある兵器輸送用装甲車の車載カメラの録画映像のようだ、運転手と警備員が和気あいあいと話していると突然爆音とともにカメラが大きく揺れた。どうやら大型トラックが装甲車の右側から衝突してきたようだった。

「大丈夫か?」と車内では乗組員同士で安否確認をしていると「何だコイツら!」という叫び声が聞こえた。装甲車の全方位を銃や刃物を持った人間が包囲しているのが確認でき、その包囲している人間達は明らかに普通では無かった。

 「腕と銃が一体化した者」「驚異的な跳躍力で装甲車の上に飛び上がった者」「体からチューブやケーブルが露出している者」等、明らかに一般の使用範囲や安全利用を大きく損なう程の身体改造とサイボーグ強化をしている人間達、それが何十人もいたのだ。「落ち着け!この装甲車は破られることはない!中で待機して増援が来るまで・・・」と言いかけると装甲車のフロントに乗り上げて来た「有機的な部分が見えないほどの機械化をしているドラゴニュート族のサイボーグ」が右腕に装着(正確には一体化)している"パイルバンカー"と呼ばれる爆発性の武器でフロントガラスを爆発させると同時に、映像が途絶えた。


「コイツら・・・"シンタックス"の連中か?」


リコがボソっと1人呟く。


「この映像は約5時間前に撮影されたモノで、場所は68番高速道路だ。そしてこの現場から数時間程、車で移動すればシンタックスの支配領域シマが存在する。まずはここ”エイジシティの重工業区”にある”シンタックスの拠点”を当たると良いだろう。詳細はGDP(ギャター警察)の協力者から送信される。何か質問は?」


「シンタックスとは一体どんな連中ですか?」


ギャレスが質問する。数秒するとピピッとスマホにデータが送信され、「たった今シンタックスについてのデータを送った。他は?・・・無いか、なら出動してくれ」


キーパーズは任務を開始した。


〜移動中の装甲車にて〜


オリグの協力者によると襲撃者達は"アラクネー"を含め複数の兵器を盗んだ後、車で逃走。監視カメラの映像やITS(高度道路交通システム)による追跡では、ラオグォンインプラント工場と呼ばれる場所が最有力候補としてあがっており、キーパーズはそこに向かっている最中である。


「リコ、お前"シンタックス"について何か知ってるのか?」

アーセルスがリコに問う。


「まぁ連邦出身なら名前くらいは聞いた事ある人が多いんじゃ無いかな?連邦でもトップクラスにタチが悪いギャング組織だからね。僕やスミスはもちろん、連邦で治安維持活動をしているなら一度は戦ったことがあると思うよ」


「まぁ端的にいうと"身体改造と機械化こそ新しい生命体になれる崇高な行為"と考えている狂人どもさ。崇高な存在になれるなら自身の安全は二の次で新しい義体や電脳(機械式の脳)、インプラント(電脳に埋め込みさまざまな能力を向上させるチップ)が出るたびに自分達や無関係な民間人を利用して"人体改良"を続けている奴らさ」


リコとスミスは一度やり合った事があるようだ。


「あんな改造を何度もしているのは自分の体を痛めつけるのと同じようなモノだ!何故シンタックスはそのような事を?」


フルームがリコとスミスに尋ねている。


「さぁねー狂人達の考える事はよく分からないよ。でも彼らの持つテクノロジーや義体化の知見を拝見してみたいけどね」


リコはテクノロジーに興味津々な様子だ。


~エイジシティ重工業区 ラオグォンインプラント工場~


ラオグァン工場から少し離れた場所へ装甲車を止めて作戦を考えていると、工場から「ドカーン!!」と激しい爆発が聞こえた後、間髪入れず激しい銃声が聞こえてきた。


「ゆっくりしてる暇はないようだ。行くぞ!」5人は急いで装備を整えた後、工場の搬入口らしき場所を見つけ、そこから侵入した。


工場の内部に侵入するが未だ激しい銃声が鳴り響いているが、シンタックスの姿は一人も見つけていない。

無線を傍受したリコが「あの銃撃戦にここのシンタックス全員を向かわせているみたい」と報告してくる。


(なら銃声の元へ急ぐか?)とギャレスが考えながら通路を進んでいると、「みんな隠れろ!」とアーセルスが叫ぶ。

急いで5人が隠れると、 ダララララ!! と激しい銃声と共に大量の弾丸を撃ち込まれた。「天井に固定式自動ターレット!少し待っててね」リコがターレットを見つけると、腰に装着している”軍用タブレット”を操作し始める。「あと少しで・・・ハイ掌握!ターレットをハッキングして仲間として認識させたからもう大丈夫」ものの4分足らずでハッキングしたリコの手腕を見てアーセルスが「ヒュー さすが」と感心している。


「さすがに警備システムは作動してるか・・・この様子だと、どんなトラップがあるかわかったもんじゃないな」フルームが周囲を警戒していると、先ほどから鳴り響いていた激しい銃撃音が近づきつつあるのを察知した。


「かなり近いな・・・こっちだ!」フルームについていくと銃声がどんどん近づいてくるを感じる、そして”製造所”と書かれた扉を開けると激しい銃撃戦の真っただ中で、キーパーズはシンタックスの背後を取っていた。


キーパーズが偵察してみると「9~10人ほどのシンタックス」と「全身を重装甲アーマーで固め、LMG(ライトマシンガン)を豪快に撃っている正体不明の人間」が互角の戦いをしていた。よく見ると多数のシンタックスの死体があることから正体不明の人間は相当な手練れであることが窺える。


「あたし達シンタックスを敵に回して無傷タダで済むと思うなよ!!」

「兄弟姉妹の恨みだ!!」


さすがに数で押されているうえ、連戦続きなのか物陰に隠れて出てこなくなってしまった。


「リーダーどうする?」スミスがギャレスに問う。

「シンタックスをせん滅して、あの人間を救助する。なにか事情を知ってたら聞き出すぞ!」ギャレスが4人にシンタックスせん滅を指示する。「了解!」これを聞いた4人は素早く戦闘態勢に入る。


先ほどまで撃ち合っていた正体不明の人間にとどめを刺そうとするシンタックスだが、背後から奇襲を受けて一気に5人も倒されたシンタックスの連中は、先ほどまでの勇猛な様子が一変し逃げ腰になってしまっている。


「おい!5人もいるなんて聞いてねーぞ!」

「いいから殺せ!でないと”ヴェルンスキー”に殺されるぞ!」


キーパーズは攻撃の手を緩めない。スミスがグレネードランチャーで一人吹き飛ばし、ギャレスが正確無比なDCS56の射撃を叩き込みまた一人倒す。残りのシンタックスが3人だけとなった彼らは恐怖のあまり身を寄せ合っていると、物陰に隠れていた男がLMGをシンタックスの3人に向け掃射し、バラバラになぎ倒してしまった。


「お前らは何者だ!」アーマーを着込んだ人間は手に持っているLMGの銃口をキーパーズに向けながら話しかける。


ギャレスが「我々はISIA捜査官のチームだ!シンタックスの連中に用があっただけであなたとは殺しあう気はない」と語りかける。


しばらくお互いに銃口を向けあい警戒していると、「わかった!話しをしよう」とアーマーの人間がLMGを下げ、キーパーズも武器をおさめて何とか平和に話し合いができそうになった。


重装甲な人間は「このヘビーバトルヘルメットも限界だな」と言い、頭が見えないほどの重装甲なヘルメットを外すと中から黒と白の模様混ざりシャチに近い造形をしている”リタニアン”の男が出てきた。


「ISIAの捜査官がこんなところに何の用なんだ?」リタニアンがギャレスに質問する。


「我々はアカミネテクノロジーから盗まれた多数の兵器の回収するのが目的でここに来ました」ギャレスが答えるとリタニアンが”もしや・・・”という顔をして「それはつい最近の”アカミネテクノロジーの兵器輸送車がシンタックスに襲撃された事件のことか?」と尋ねる。

ギャレスが「どうしてそれを知っているんですか?」と驚いているとリタニアンが答える「俺はソロで活動するフリーランスの傭兵でなアカミネテクノロジーから相場より少し高い報酬で雇われてる。目的はアカミネテクノロジーの最新兵器”アラクネー”の回収だ」


これを聞いたギャレスは少し考え、あることを思いつく「あの・・・我々と手を組みませんか?お互いに同じ目的を持っているんです悪くないかと」リタニアンは「敵の敵は味方ってやつだな・・・いいぞ乗った!」


こうしてISIA捜査官と傭兵の共同戦線が結成された。


工場内で情報を集めている6人、「そういえば名前を聞いていませんでしたね」リコが傭兵に話しかける。

「”ダスク”だ。本名は・・・まぁこの業界だからな、察してくれや」とダスクが語っていると。


「リコ!こっち来てくれ!」とスミスがリコを呼んだ。「どーしたの?」リコとダスクが近寄る。

「この保安室にあるPCなんだが、セキュリティを無効化できそうか?」「このセキュリティは・・・多少改良されてるけどまぁ楽勝だね」

リコはタブレット端末をPCに接続して作業を始めた。

「ここをこーして・・・リブートすれば・・・よし!セキュリティ無効化」リコがあっさりセキュリティを無効化した。

「さて何が見つかるかな?・・・おっ監視カメラの映像があるね」


2時間前の監視カメラの録画

「お前ら!今日の仕事は完璧だったが、奪った兵器をクライアントに渡して残りをブラックマーケットに流してやっと金が手に入る。それまで気を抜くんじゃねーぞ!」と見たことがあるドラゴニュート族のサイボーグが指示を出している。

「念のためアラクネーと高く売れそうなブツは”フラック”へ移送する」


「手がかりを見つけたな」


~ISIA ギャター支部~


工場をGDPに任せ、ギャター支部に戻ってきた6人はフラックの情報共有と襲撃作戦を考えている。


オリグが作戦についての説明をしている。「フラックはシンタックスが支配下に置いている民間の宇宙港だ。ギャターから密輸したいときは大抵ここを使う。フラックはシンタックスの連中にとって輸送網の中核のような存在だ。もしなにかあればギャター中のシンタックスが全員やって来るだろうから目標のアラクネーと持てるだけの兵器を回収したのち素早く撤退する」


割り込むようにダスクがある人物の画像を見せながら話しをする。

「フラックに手を出すならコイツに注意したほうがいいな」と言うと、車載カメラや監視カメラで見てきたドラゴニュート族のサイボーグが映されている。

「”ウェロルド・ヴェルンスキー” 通称”パイル”・・・シンタックスの上級幹部にしてジャターのシマを一任されてる男だ。ハイグレードの電脳やインプラント、各種義体がそろっているうえ元連邦軍所属で実戦を何度か経験している狂犬のようなサイボーグでな、コイツとの衝突は避けれないとみていいだろうよ」


ダスクが説明し終わるのを待っていたオリグが話しを続ける。

「ゴホン、民間宇宙港フラック"から"密輸品が出てきているが、フラック自体は違法行為の証拠が無いためGDPが直接関与できない、そのため"アラクネーを含めた収奪品の奪還"または"フラックで騒ぎが発生した時"のみGDPが出動する手はずになっている。これでブリーフィングは終わりだ、質問は・・・無いな。では始めてくれ」


ブリーフィングを終えた一同はフラックへ向かう。


~移動中の装甲車~


ダスクが工場で装着していたのと同じ重装アーマーを着ているが武装がLMGからSG(ショットガン)に換装している。


「ダスク・・・工場で持ってたLMGは使わないのか?」アーセルスがダスクに武器について尋ねる。


「軍人とは違い傭兵は自分で武器を決められるからな。状況ごとに装備を切り替えるのは常識だぞ」

ダスクがSGに弾を装填しながら答える。


「みんなそろそろ到着するぞ!リコはドローンで偵察と支援、残り5人で直接内部に侵入する。静かに事を済ませるのが理想だがいざって時に備えてGDPの特殊対応部隊が待機している。最優先目標はアラクネーの回収、可能なら他の兵器も回収する」


ギャレスが作戦の確認をしていると キキィー と装甲車が停車し、「到着だ」とスミスがみんなに伝える。


~民間宇宙港フラック~


宇宙港といえど民間のため規模はそれほど大きくなく、小規模なターミナルといくつかの格納庫と倉庫、そして小規模な離着陸場が存在するだけである。シンタックスが支配してるため普段から民間人の出入りはほとんどないが、アラクネーの件があるのだろうシンタックスが完全封鎖を行っている。


フラックから少し離れた場所からリコがピジョンドローンで偵察を行っている。


「目標のアラクネーや兵器類は今のところ見えないね。警備はシンタックスの連中が大勢と・・・メック(二脚戦闘用ロボの総称)が数十体、いやターミナルや倉庫内にもっといるかも・・・あとは工場で見たターレットが何基かってところだね。みんなは無事侵入できた?」


偵察と情報支援に徹しているリコ以外の5人に連絡を入れる。


「離着陸場から侵入してターミナルの内部へ入る」


ギャレスが報告しているのを横目にダスクが「非常用出口」と書かれた施錠されている扉をピッキングで解錠している最中だ。


ガチャっと解錠された音が響く。ダスクがピッキング道具を片付けSGを構える。スミスがすぐさま扉を開くとダスクがクリアリングしながら内部へ侵入し、残り4人もあとに続く。


「ヴェロルドの奴は何であんなピリピリしてやがるんだ?」

「アンタ知らないの?例の兵器はとんでもない金になるからね、上層部は皆んなピリついてるよ・・・(ボソっと周りに声が聞こえないように話しかける)ねぇいっそのことアタシたちで売っぱらっちまわない?」

「辞めとけ、ヴェロルドを裏切ったヤツがどうなったか見てきただろ」

「この義体のメンテナンスに案外コストがかかってるからね。15万コームくらい欲しいのよ」

「そりゃお前、腕に火炎放射器を付けてるからだろ」


内部へ進んでいると3人ほどのサイボーグが談笑している部屋を発見し、慣れた手つきで静かに無力化する。


パスっ サイレンサーの発射音と共に3人のサイボーグが急所を撃ち抜かれる。


5人が部屋の内部へ入ると、そこは「異常」としか言い表わせない場所だった。十数台の手術用ベット、ベットに繋がっている大量のファイバーケーブル、部屋の至る所にあるモニター、そして大量の血痕や不必要と言わんばかりに手足や臓物が乱雑に捨て置かれている。また部屋全体が「赤い不気味な照明」やシンタックスのシンボルマーク「真っ赤なゴーグルを付けた機械の頭蓋骨」に包まれており、部屋の異質さを物語っている。


「噂には聞いていたがここまでとはな」流石のアーセルスも顔をしかめる。


「軍にいた頃にも何度かシンタックスとやり合ったが、やっぱり慣れないな」「しかもコレを何も知らない民間人にも強制させてるんだ。許されてなるものか」連邦出身のスミスとダスクは不快感をあらわにする。


「ひとまず目標の捜索を続けるか」ギャレスの一言で4人が我に帰り、捜索を行うがこの部屋に無かったため建物内をさらに進んでいく。


ターミナルを捜索し続け、10人以上のシンタックスを倒しているが一向に目標が見つからない。キーパーズの5人は慎重に進んでいると、突然天井からドローンとターレットが出現し、5人に弾幕を浴びせる。 ガガガー! と強烈な射撃音が聞こえてくるが5人は間一髪、遮蔽物に隠れる事ができた。

スミスが「任せとけ」と言うとJACK-8の弾倉に"EMP"と書かれた弾頭を装填し、ドローンとターレットに向けて撃つ。すると バスーン! と青白い光が周囲に広がると同時にターレットとドローンは機能を完全に停止した。


スミスが放ったのは「EMPグレネード」と呼ばれる対機械特攻を目的としたグレネードである。


この"携帯型EMP兵器"は統一歴3723年の戦争でコヴナントが連邦の機械兵器によって多数の損害が発生したため、連邦の「機械兵器を無力化するが生身の生命には傷をつけない」というコンセプトの元、コヴナント軍とコヴナントの国営軍事企業"バリアアーマメンツコープ"によって共同開発された。現在では「強力なEMP兵器開発のコヴナント」と「EMPに耐性を持つ機械兵器の開発を行っている連邦」によるイタチごっこの様相を呈している。


〜フラック ロビー〜


5人が従業員用通路からロビーに入る。ロビーは静寂そのものであったが突如、大勢のシンタックスが姿を現し襲いかかって来た。


「来たぞ!」

「やっちまえ!」


キーパーズの5人に向け銃撃を行う。だがキーパーズの周りには遮蔽物がなく危険な状態だったが、ダスクが「俺の後ろに隠れろ!」と叫び4人はダスクの後ろに隠れた。ダスクに敵弾が集中するが強靭なアーマーによって無傷で前進する。


ガキン! ガキン!


アーマーが敵弾をはじく音、そしてキーパーズとシンタックスが激しく撃ち合う音が響く。


遠距離にいるものにはアサルトライフルやサブマシンガンで撃ち抜き、不用意に近づいたものにはダスクのショットガンで吹き飛ばす。


無事に遮蔽物に身を隠せた5人だがダスクのアーマーの限界が近く今にも壊れそうだが、フルームが右肩に備え付けられていたホースの繋がった小型のエアフォームからダスクのアーマーに泡状のコーティング剤を吹きかけると破損していた部分がみるみる修復していく。「このアーマーは脆いし一時的なものなので無理は禁物ですよ!」ダスクに注意を促す。


「感謝する!」そう言いながらダスクはショットガンを撃ち一人倒す。


キーパーズとシンタックスの戦いは激しさを増し、銃撃音や爆発音が絶え間なく響いているとパトカーのサイレンが外から聞こえてきたかと思えば完全武装で胸や背中にGDPと明記されている特殊部隊が突入し、シンタックスを攻撃し始めた。彼らは「GDP所属の特殊部隊でありキーパーズの支援を行うために出動した」とリコから説明を受けた。


「ここは我々に任せろ!君たちは目標を回収するんだ!」特殊部隊の隊長が無線でキーパーズに伝える。


キーパーズと傭兵の5人は援護を受けながら急いでロビーを離れるとリコから「格納庫の動きが激しいからそこを、待って・・・"ヴェルンスキー"の姿も確認!アラクネーがあるのはおそらくそこだ!格納庫に急いで!僕もすぐに行く」と指示を受けた5人とリコは格納庫へ向かう。


~フラック 格納庫~


格納庫の周辺でもGDPとシンタックスが戦闘を繰り広げている。まずリコのホークドローンがシンタックスに攻撃を開始し、すぐさま5人の射撃が側面から射撃を行う。GDP、ドローン、キーパーズの多方面攻撃を受け格納庫周辺を守っていたシンタックスは全滅した。


「支援感謝する」GDPの隊員が感謝を述べる。


「格納庫への侵入はできそうですか?」ギャレスが質問する。


「作業員通路やガレージ、窓にいたる全ての侵入口が封鎖されておりどうしようも出来ない状況です」と答える。


さらに軍用タブレットと睨めっこしているリコから報告を受ける「格納庫のドア制御システムに侵入したけど開錠コマンドを受け付けないから手動ロックか溶接で完全封鎖してるね」


キーパーズ6人とGDP隊員達が次の一手を考えているとスミスが何か思いついたようだ。


「単純な事じゃ無いか!扉が無ければ作れば良い。リコ!ピジョンドローンで格納庫の脆い部分を調べてくれ。俺が爆薬で吹き飛ばす」「りょーかーい、早速スキャンを始めるね」


リコはピジョンドローンで格納庫の脆弱部を見つけ出す。

「ガレージの扉に仕掛けて!簡単に破壊できるうえサーマルで内部を見る限りシンタックスの奴らはガレージからの侵入を警戒していないから突入に最適だよ」


「わかった!」スミスはバックパックをから爆薬を取り出し手際よくセットしていく。


突入の準備を終えた一同にギャレスは指示を出す「爆破と同時にグレネードを投入したのち素早く制圧する!スミス!」この言葉を合図にスミスが爆破の合図を行う「いくぞ 3.2.1 点火!」


ドカーン!


激しい爆発と共にグレネードが格納庫内に投げ込まれていく、内部に居たシンタックスは爆発で吹き飛ぶ者、激しい閃光と爆音で右往左往する者、催涙ガスによって呼吸困難に陥る者などで混乱状態だった。この混乱に乗じてキーパーズとGDPが突入し内部にいたシンタックスを射殺、無力化、拘束していくと格納庫にあった星間旅客機の扉が勢いよく開き中からヴェルンスキーと奴の取り巻きが現れた。


「行くぞお前ら!俺たちの金と兵器を奪われてたまるか!」と叫ぶと右手に所持・・・いや一体化している大型のオートキャノンから発射された砲弾がダスクに命中した。


ガキン!とアーマーが壊れる音が聞こえたと同時にダスクは吹っ飛ばされてしまった。フルームは急いで駆け寄り物陰にダスクを運び込んだ後フルームはバックパックから医療器具や医薬品を取り出して意識が無いダスクの治療を始めた。


一方ヴェルンスキーとその取り巻きを相手しているギャレス・スミス・リコ・アーセルスとGDP隊員達は苦戦を強いられていた。ヴァランスキーの持つオートキャノンに加えて、右肩に装着している「レールガン」による精密攻撃、左手にバリアアーマメンツコープ製の「偏光フィールド型シールド・・・フルーリオ」と全身を覆うナノカーボンを混ぜたラマアンドハイ合金の重装アーマーは「重戦車」と形容するに相応しい防御と攻撃力を兼ね備えている。加えて取り巻き達も銃器だけで無く、ロケットランチャー、火炎放射器、大量のメックやドローン等なりふり構わない攻撃に苦しめられている。


「何でヴェルンスキーの奴は平気そうなんだ?普通は重すぎてまともに動く事もできそうに無いはずだが?」


「あのオートキャノンは12キロ近くある。民間の義体だとまず耐えられないな。おそらく軍用の・・・それも相当高性能な義体だろうな・・・マズッ!」戦闘の最中ギャレスの疑問にスミスが答えていると敵の一人がロケットランチャーをスミスに構えていた。撃たれる前に気づいたスミスは急いで伏せる。


バゴン!


「スミス!大丈夫!?」「問題無い!・・・とヤバい!」今度はスミスに向かって高い機動力で急接近する敵が見える。その敵の両腕から刃が飛び出しており、キラリと光る赤熱せきねつの刃先から鋼鉄をも切り裂けそうな事が伺える。


「バラバラに切り刻んでやるよ!!」


スミスとアーセルスが射撃するが華麗な身のこなしで全て避ける。高性能な義体、映像処理に特化した義眼や電脳とチップを装着すれば発射された弾丸を「見て回避」する事も可能となる。


「ぶった斬ってやるよー!」


敵は大きく飛び上がってスミスの射撃を避けた後、勢いを衰えさせずにスミスに向けて刃を自身の体ごと振り下ろす。


ザン! と切り裂く音が聞こえたが間一髪スミスは避ける事ができた。だが流れるようにもう片腕の刃をスミスに向けて振り下ろす。大勢を崩したスミスはその凶刃を受けそうになる。


ダン!  スミスに斬りかかろうとした敵は頭を吹き飛ばされ、ドサリと音をたてて動かなくなった。銃声がした方を見るとアーマーが壊れ、傷だらけのダスクがショットガンを構えていた。


「ダスク!無事だったのか」「フロートからは応急処置と戦闘用アドレナリンを注入してもらってな。意識もハッキリしてるし痛みは無い!」


と豪語しているダスクに「それは一時的なもので2、3時間もすれば激痛が走るでしょうから無茶は禁物ですよ!」フルームが注意を促す。


「感動するのは後にしてヴェルンスキーをなんとかしてくれ!」取り巻きをある程度片付けたアーセルスがヴェルンスキーから制圧射撃を受け助けを求める。GDP隊員達がヴェルンスキーを撃つがフルーリオシールドや重装アーマーに弾かれ傷一つつけれなかった。


「そんなモノが効くわけねーだろ!」先ほどの攻撃のせいかヴェルンスキーが激昂してしまいオートキャノンやレールガンを見境なく撃ち始めたうえ、リコから悪いニュースが飛び込んでくる。「シンタックスの通信を傍受!あと10分でギャター中のシンタックスがやってくるよ!」


シンタックスは警察や軍の封鎖を無理矢理突破してきているようで最短で10分というタイムリミットが発生した。キーパーズとGDPはヴェルンスキーを倒すための火力が存在せず、本部からの増援を待つしかないがそれではシンタックスの増援が到着してしまう、一同が打開策を練ろうとしているとダスクがシンタックスのシンボルマークの描かれた貨物コンテナが目に入り、内部に侵入する。しばらくすると「この貨物コンテに来てくれ」と無線でギャレスに連絡を取ってきた。


ギャレスがコンテナの中を覗くと大量の銃器があったがダスクが一際大きなガンケースを運んできた。「シンタックスの奴らこんなモノまで持っているとは」そう言ってケースを開けると分解されてはいるが「反物質対戦車ライフル AT9」のパーツが全て存在していた。ギャレスが「これなら威力は十分だろう。だがフルーリオシールドで弾かれてしまうぞ!」「そういう時に仲間が必要なんだろ?」ニヤリと笑うダスク。


ダスクは無線で「奴をぶっ殺すプランが決まった。この中で一番狙撃がうまいのは?」と聞くと「狙撃?ならギャレスが適任だな」スミスが推薦する。「ギャレスお前はあそこから撃て」ダスクが指をさす数百メートル先には星間旅客機の上部を整備するためのゴンドラが存在していた。「ギャレスはあのゴンドラで待機。スミス!EMPグレネードを撃つ準備をしておけ。リコ!ヴェルンスキーの義体をスキャンしてみろ!あの高出力な武器やシールドを使えるだけの発電装置がどこかに装着しているはずだ。俺、アーセルス、フルームで奴と取り巻き連中の注意を引く。一勝負だ!さぁ気張れよ!」


ギャレスはゴンドラに向かい、スミスは陽動を兼ねた爆破タイプのグレネードランチャーを撃ち込み、リコがピジョンドローンでスキャンを行う。フルームは負傷したGDP隊員達の救護と支援にまわり、アーセルス、ダスク、GDP隊員がヴェルンスキーの注意を引く。


「ちゃちな武器しかねーのか!?俺を殺したいなら軍艦をもって来ることだな!!」ヴェルンスキーは相変わらずオートキャノンやレールガンを撃ち続けている。


ギャレスはゴンドラに到着し、AT9を組み立てているとあることに気づく(薬室に一発とマガジンに・・・弾が無い!!)


AT9のマガジンには弾が入っておらず薬室に入っている1発しかなかったため、これを外せばヴェルンスキーを倒す手段は無くなるということを意味していた。(この1発を外せば・・・)ギャレスに不安が生まれるがリコの「スキャン完了!心臓と左脇のちょうど中間に高エネルギー反応!そこに外部ジェネレータがあるはず!」と「EMPはいつでも行ける!」というスミスの報告を受け、準備は着々と進んでいることがわかる。


だがここに来てリコから更なる報告が飛び込んでくる「EMPでシールドや義体が停止するのは数秒ほどしかもたない。それを過ぎればジェネレータの急速充電で義体OSシステムとシールドが復活する!」と聞こえてくる。


標的までは数百メートルほどしかないが1発限りで撃てる猶予は数秒間だけというプレッシャーが重くのしかかる。


AT9に備え付けられているバイポットを展開して手すりに固定するとギャレスは「ふー」と一呼吸いれた後スコープを覗き 「こちらギャレスいつでも撃てる」 と一報をいれる。


ダスクが「よし・・・やるぞ!」と呼びかけるのを合図にダスク、フロート、アーセルス、リコ、GDP隊員達による一斉掃射がヴェルンスキーに襲い掛かる。


「ぐっ!」さすがの猛攻にシールドによる防御を優先するが、スミスのEMPグレネードが直撃する。


ヒューン という音とともにシールドと義体が停止した。


(チッEMPか!だがそれぐらい4秒ほどでシステムが復旧するから問題ない!)と考えているヴェルンスキー。


数百メートル先のゴンドラではヴェルンスキーの動きが止まったことを確認したギャレスがAT9の引き金に指をかける。


(大丈夫、俺はやれる) 息を止め、冷静に、冷酷に引き金を引いた。 


ダギューン!! 


一つの大きな銃声が鳴り響く、AT9から放たれた弾丸はヴェルンスキーの”心臓と左脇の中間部分”に大きな穴を開け、そこからバチバチと火花や機械部品にオイル、血が漏れ出ている。


「お見事!さすがだな」

「相変わらずいい腕してるね」

スミスとリコがギャレスに賞賛の声を送る。


「あ?・・・なんで?」とヴェルンスキーが気の抜けた呟きをすると膝から崩れ落ちる。うつぶせになるとヴェルンスキーの体に異変が起き始める。「がっぐががが」と苦しそうにうめき声をあげ、全身が大きく痙攣し、助けを求めて床をのたうち回る。


「ジェネレータが暴走を始めたか・・・」

「あれはもう救いようが無いな・・・まぁ無法な狂犬には妥当な末路だな」

GDP隊員達が哀れみの眼差しを向ける。


「安心している暇はないよ!あと7分ほどでシンタックスの増援がなだれ込んでくる!」

「聞いたか?急いで目標回収と脱出を始めるぞ!」リコの報告やアーセルス呼びかけを聞いた一同がハッと我に返り目標の捜索を開始した。


~数分後~


格納庫に保管されいる一機の星間旅客機を捜索していたGDP隊員から「目標発見!」と連絡が入る。


ギャレスやフルーム、その他のGDP隊員達が星間旅客機の貨物室を覗くと、”アカミネテクノロジーのロゴが入ったケース”のほか”ドローンやメックの試作機”、そして目的の”アラクネー”を確保したギャレス達は本部に回収を手配するがシンタックスすぐそこまで迫っている。


時間が足りないと判断したダスクは格納庫の外にある貨物運送用トラックに目を付けた。


「ここでシンタックス相手にやりあうよりマシな方法があるが聞いてみるか?」


まず目標を貨物運搬用トラックに載せてフラックから離れる、その後安全な場所で確実に回収する。


この案を聞いたギャレス達は「その方法が安全か・・・」と納得し、確保した兵器類をトラックに載せていく。


しばらくして兵器運搬を護衛するタレットやドローンを操作しているリコがあることに気づく。(ダスクがいない?)

すぐさまピジョンドローンの高性能カメラやサーモグラフィーで格納庫をスキャンすると目立たない場所でもぞもぞ動く人影が見えた。


格納庫の一角でダスクがヴェルンスキーの死体をハゲワシのごとく漁っている「このシールドは使えそうだ」と言いフルーリオシールドを懐に隠し持つ。


「粗雑な死体漁りは感心しないな」


ダスクが声のしたほうを睨むとそこにはスミスとリコが居た。


「こいつにはもう必要ないだろ。それともなんだ?”人間の尊厳がどうの”とか言いたいのか?」


「そういうことじゃないよ」と言い放ち「あ?」とダスクが訝しんでいるのを横目にリコがあるデバイスを物言わぬ死体となったヴェルンスキーの左腕・・・フルーリオシールドがあった部分に取り付ける。


「これは格納庫で見つけた”3世代前の旧式の偏光シールド”でね、これに少し電力サージを加えると」とリコが取り付けたデバイスにスミスが携帯している小型の発電機をケーブルでつなぎ、”過剰充電”を行うと パチン と何かが弾ける音と共にデバイスから火花が発生する。


「これでジェネレータの暴走でシールドが壊れたかのように見せかけれる」

「それに大まかな部品やシステムは最新のシールドと似ているし細かい部品は弾けちゃってるから簡単には見分けがつかないよー」

スミスとリコがいたずらっ子のような無邪気であくどい笑顔を見せる。


「何でこんな事をする?」ダスクが2人に尋ねる。


リコが親指と人差し指に少し間を開けた”少し”のジェスチャーをしながら「すこーしだけ協力してほしいことがありまして」と答える。


格納庫の備品室らしき部屋に来たリコ、スミス、ダスク、の目の前に大量のケーブルや物理ポートにつながれている小型のノートパソコンが1台置かれていた。


リコは軍用タブレットをノートパソコンに接続し、容易くセキュリティを突破する。


「あったコレコレ」リコが嬉しそうにデータを閲覧しているがそれはシンタックスが開発した兵器やサイボーグテクノロジー、手術手技、企業から盗み出したドローンやメックの設計図、新型爆薬の製造・保管方法などのおおよそ合法とは思えないデータが大量に存在している。だがリコはためらいもなく自分の所持するタブレットにデータをコピーしていく。


(なにに使うつもりだ?)ISAI捜査官のチームが違法なデータを自分のモノにしていくのを目の前で行われているのに困惑を隠せないでいる。


ダスクの困惑した顔に気づいたのかスミスが疑問に答える「あんたが死体漁りしているのと同じ理由だよ。コイツ等には必要無いが俺達には必要なテクノロジーだ」

「でも警察や人道派なんかの分からず屋どもは”危険なモノ”ってだけで禁止にしようとする。それが本当に腹が立つんだよ」

リコは昔になにか因縁があるのか怒りをあらわにする。


(なんだコイツらも俺と一緒なだけじゃないか)とダスクは自分と同じような思考の持ち主が居て少し安心している様子だ。

「なぁリコ、スミス今度一杯飲みにいかないか?あんた達とはいい酒が飲めそうだ」


「なら俺たちのチームに入らないか?給料も良いし、多少の特権ってやつも与えられるし」


「特権てなんだ?」


「ISIA捜査官に与えられる簡易的な法執行権や武器所持禁止区域でも武器を持てたり、まぁ色々な優遇券みたいなものだよ」


「ふーん・・・その話乗った」そう言ってダスクはスミス、リコと握手を交わす。


ほの暗い協力関係を祝っていると「ダスク、スミス、リコ脱出するぞ!」とフロートからの呼びかけられ、スミスは「すぐに向かう」と伝えると3人も脱出を急ぐのであった。


~フラック脱出後~


目標をGDPの部隊任せ、ダスクの治療を行うためISIAギャター支部の医務室に集っている6人


「あいたたたた」投与された鎮痛剤やアドレナリンが切れたのだろう痛みを訴えるダスクは、フルームを含めた数人の衛生兵や医者から治療を受けている


「それで我々のチームに入ってくれるのは歓迎しますが、本当に構わないですね?」ダスクにチーム加入の是非を問うギャレス


「だから言ってるだろ。安定した収入が手に入り、良い友も見つけたしな」そう言うとダスクはチラッとスミスとリコに目線を向ける


(リコとスミスに何が・・・イヤいつものリコは誰からも好かれるからな)とギャレスは納得する


「ではこれからよろしくお願いします」「おぉよろしく」ギャレスとダスクは握手を交わす。


~4日後 ISIAギャター支部 支部長執務室~


支部長執務室にオリグ支部長、キーパーズのギャレス、スミス、リコ、アーセルス、フルーム、ケガの治療を終えたダスク、そして”アカミネテクノロジーの代表”が感謝の意を示し、ダスクへ報酬を渡すために赴いている。


アカミネテクノロジーの代表と名乗った高級そうなスーツを身にまとっている人類が感謝を述べる「ISIA捜査官の皆さん本当にありがとうございました。弊社を代表して感謝申し上げます。そしてダスクこれが報酬です」とタブレットをを操作する。


ダスクがスマホの画面から口座を確認したのだろう「確かに」と納得した金額が得られたようだった。


「では私はこれで失礼いたします」と言ってアカミネテクノロジーの代表は部屋を出ていった。


「諸君よくやってくれた。目標の奪還はもちろんだが長年に亘りギャターの悩みの種だったシンタックス上級幹部ヴェルンスキーの排除も成し遂げるとはな、現在のシンタックスは新しい上級幹部を決めるための内輪もめで大きく動けなようだ。私からも感謝しているよ」シンタックスとヴェルンスキーに悩まされてきたのだろう嬉しそうにしているのがよくわかる。


「そういえば本部からメッセージを預かっている”困難な任務続きで心身ともに疲労がたまっているだろうから2週間の休暇を与える”とのことだ。後ダスクチーム加入の手続きはこちらで処理しておくからゆっくり休んでおきたまえ」


こうして任務成功と新メンバー加入、そしてこれまで出来なかった初任務達成の祝いも兼ねた休暇が始まった

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