第6話 夕食


 最低限の防御施設を作り終わった俺とエリザは、さっそく居館の中を確認することにした。


 玄関。

 和風だからもしかしたらと思っていたが、やはり靴を脱ぐ方式らしい。文化の違いに関しては……ふよふよ浮いているエリザなので心配はいらないだろう。


 玄関から伸びるのは短い廊下。そのままT字で縁側に合流するらしい。

 廊下の両脇にあるのはそれぞれ12畳ほどの和室。これは俺とエリザの私室ってことでいいか。

 ふすまがあるので、和室の奥にも部屋か廊下がありそうだ。


 とりあえず縁側へ進むと、左奥にあるのはトイレ。右奥にあるのは台所のようだった。


 他にも部屋がありそうな雰囲気だが、もう日も落ちたので夕飯の準備をはじめた方がいいだろう。


「そういや、エリザは幽霊だろ? 何か食うのか?」


「お腹はすいていませんが、美味しいお料理ならごちそうになりますわ」


 自分で作る気はなしと。まぁ貴族令嬢なので仕方ない。むしろ手料理を作られた方がビックリだ。


 俺とエリザは台所に足を運び色々といじったりしてみた。

 さすがに冷蔵庫や電子レンジといった電化製品はないが、魔石を使ったコンロがある。空気中の『魔素』というものを消費して火を出すらしく、あまり長時間は使えないが魔石の交換をする必要はないらしい。

 長時間使用する場合は自分で魔素の代わりに魔力を補充すると。


 水道はないが、シンクは設置済み。少量の水は初級の水魔法で出すのが常識らしい。


「さて、何を作るかねぇ」


 前世では一人暮らしが長かったし、師匠から訓練と称してサバイバル生活をさせられたこともあるので一通りの料理はできる。問題があるとすれば今から下準備をするのは面倒くさいことか。


「よし、肉を焼こう」


 ステーキだ。ステーキはすべての問題を解決する。


 なぜかエリザが胸を張った。


「ふふ、元公爵令嬢であるわたくしに、安いお肉は通用しませんわよ?」


 エリザはきっちりとフラグを打ち立てて――



「――うまーい! ですわー!」



 俺の焼いたステーキを食べて絶叫していた。この公爵令嬢、面白すぎである。


 使ったのはD.P.で交換できるステーキ肉のうち最も安いヤツだったのだが……、創造神への不満をフォークに込めて、お肉を穴だらけにしたことが効いたようだ。


 決して、エリザの舌がバカなだけではない。と信じたい。



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