不遇な一人の男が、夢破れて故郷の鄙びた
土地へと戻る。暫くの間、生まれ育った
村でゆっくりして再起を目論む。一方、
役所勤めの夫との間に一子をもうけた女。
村の閉塞感に辟易としながらも子供の為に
不承不承の生活を営むが。
この村は何処かおかしい。
だが、その本質を指摘する事が出来ない。
何故なら、この土地は今でも日本各地、
何処にでもあるのだから。
異様な鴉の群れ、そして蔓延する謎の病。
四方八方から雁字搦めにされた村の中で、
他所からの視点を持つ者達は、漠然とした
不安と共に様々に思いを巡らせる。
この構成が、非常に秀逸であると驚く。
これは『呪い』なのか、それとも
『疫病』なのか。或いは…。
ホラーとしてもミステリーとしても、更に
鋭くエッジの効いた人間ドラマとしても
素晴らしい作品だろう。
こういう本格ミステリーホラーが在る、と
言う事を是非にも知って欲しい。