第20話 白騎士団の流儀

「くそ!王国軍か!」


 視覚妨害魔法による白い霧が晴れると、そこには整然と展開された白装束の一軍。


 王国参謀メイリーン直下の白騎士団。


 白装束は霧に紛れるためなのだろう。リザードマン軍は背後から攻撃を受けるまで、その存在を察知できなかった。不可避の一斉射撃を受け、瞬く間に残存兵力の7割を失う。


 次の矢をつがえた白騎士団。今度はリザードマン王ガルマンに狙いを定めている。


「逃げ場はありません。武器を捨て捕虜になれば助命はします」


 白装束の指揮官メイリーンが透き通った声で降伏勧告する。


 リザードマン王には二択しかない。


 降伏か、死に物狂いの特攻か。


(指揮官は若い女だと?なめやがって…。よし、目にモノ見せてやる…)


 ガルマンが選んだのは後者だった。


 あの女を討ち取り、包囲網を突破して逃げ帰る。


 自国に戻れば、まだチャンスはある。


「わかった…!降参する!降参するから矢を向けないでくれ!」


 メイリーンがピシャリと即答する。


「あなたは要求する立場にありません。武器を捨て手を上げなさい」


(く、くそ。なんとかならんか)


「待て!待て!部下と相談させてくれ!」


 なんとか窮地を脱しようとするガルマンの意図を見逃さない女性指揮官。


「二度目です。あなたは要求できません。武器を捨て手を上げなさい。次はありません」


 とりつく島もないと悟るや激昂する王。


「この!行儀よく出てればつけ上がりやが…」


 彼が最後まで言葉を発することはなかった。


 全身に矢が突き刺さり、気づく間もなく絶命したからだ。


「侵略者の要求は一切、受け付けません。全員、武器を捨てなさい」


 冷厳な態度で告げるメイリーン。


 王を失ったリザードマンたちは迷うことなく武器を捨てた。


 騎兵隊を率いて追撃してきたフォウト町長が感心する。


「あのしぶといガルマンをあっさり仕留めるとは。やるなぁ」


 フォウトの姿に気づいたメイリーンが笑顔で手を上げる。


「フォウト町長!勝ち鬨お願いします!」


 応える町長。


「よし!勝ち鬨だ!みんなっ!よくやった!!」


「おおおおおおお!!!」


 ただちにゴドアの町へ勝利を伝える伝令が走って行く。


 かくして辺境の町を巡る攻防戦はあっけなく幕を閉じたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る