第6話 だまされる女
(やった!この女、だまされた!)
聖女エリカは狂喜乱舞する。
(エリカ!よくやりました!さすがわたくしの選んだ聖女です!)
エリカの意識とつながる女神も喜色を隠せない。
これでエリカが女神の核に触れば、その瞬間、彼女の保有する大量の魔力を吸収し自分は復活する。瞬く間に忌々しい反逆者どもを皆殺しにできる。
(女神の実体化を解いた程度で勝ったと思うなど、やはり人間は甘いこと。その油断が命取りなのですよ)
しかし、メイリーンの次の一言が女神に衝撃を与えた。
「なお、女神の核ですが一部のみ削ってお渡しします」
(…!削る!わたくしを削るって!エリカ、ダメです!断りなさい!」
(え…、ダメなんですか?どうせ媒介なんだし、ちょっとあれば、なんとかなりません?)
せっかく交渉が上手くいったと思ったエリカは面白くなさそうだ。
(削られすぎたら復活などできません!早く撤回させなさい!)
(ええー!もう!女神様、不便!)
そうこうしている間に、エリカは再度、猿ぐつわを締められてしまった。
「あっ…ちょ…まっで…ぐ!」
今度は厳重に処置され、まともに声を出すことさえできない。
(エリカ!エリカ!なんとかなさい!)
(そ、それどころじゃありません!アゴが動かない!苦しいっ!)
エリカはパニックになり、精神状態が乱れた結果、女神からの交信を受け取れなくなる。
(エ…リカ!わたくし…力を振るえないまま…終わ…許せな…)
女神の悔しがる声が途絶え途絶えに伝わってくる。
「無駄ですよ」
メイリーンが床に転がる女神の核に呟いた。
「全部、聴こえてますから」
(…な!なぜ!わたくしの念話を盗聴するなど…!普通の人間にできるはずが…!)
永きを生き精霊神の領域に差し掛かった自分。その魔法に干渉可能な人間など存在するはずがない。
(お前は何者だ!)
得体の知れない存在を目の当たりにして、長年の演技で染みついた女神の口調すら忘れる。
メイリーンは他の誰にも聴こえないよう、念話で答える。
(私は先代聖女の隠された弟子。後継者とされた者。ただ、それだけです)
(まさか…!お前は本物の…、聖女!)
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