第4話 女神降臨
女神の降臨。王国の記録では100年以上ぶりのこと。
光に包まれ宙空に浮かぶ女神は、この世のものとは思えない美しい姿をしている。
遠巻きの貴族たちの中には跪いて祈りを捧げる者、涙を流す者までいる。
「ああ、女神様!」
「なんとお美しい…!」
女神は慈愛に満ちた声で人々に語りかけた。
(聖女を殺してはなりません。かの者はわたくしの代理人。敬い、丁重に扱いなさい)
女神の言葉を得た血まみれの聖女エリカが叫ぶ。
「ほ…ほら!わ、私は聖女なのよ!私を殺そうとした奴ら、女神様、て、天罰をお与えくださいっ!」
女神は聖女に微笑む。
(聖女を傷つけるは女神への冒涜。女神を軽んじる者たちに罰を与えま…)
ガッ!
瞬間、鈍い音と共に女神の言葉が止まった。
気がつくと女神の額に深々と矢が突き刺さっている。
(な…!なぜこれ…)
ガンッ!ガンッ!
次々に女神の頭に矢が刺さる。
「射手隊!ありったけの矢を撃ち込んで!攻撃する隙を与えてはなりません!身体は虚像です!」
声を張り上げて指示を出すメイリーン。いつの間にかホール吹き抜け二階に配置された射手隊が声をかけ合い、絶え間なく矢を浴びせかける。
「第二陣、撃てっ!」
「魔法を撃たせるな!一気に倒しきれッ!」
「聖鉄の鏃だ!化け物、喰らえっ!」
次々に矢が刺さり、女神の頭がハリネズミのようになる。
(ヤ…ヤメロ…ワタ…クシ…ハ…メガミ…)
女性の声だったはずの女神の声は蛙の鳴き声のような声に変わっている。
聖女エリカが泣き叫ぶ。
「ウソ!ウソ!女神さまぁっ!」
貴族たちも騒めく。
「女神様になんて罰当たりな!」
「許されん!」
抗議の声を上げる者がいたが、即座に衛兵に取り押さえられる。
その様子を目ざとく把握したメイリーン。激しい叱責を件の貴族たちに飛ばす。
「愚か者!女神の見た目に惑わされ善悪の区別もつかないのですか!それでも国を支える貴族か!」
喝を入れられた者たちは震え上がる。
見れば頭に大量の矢が刺さった女神は、ハリネズミのような黒色の球体と化している。美しく見えた肢体は幻のように消え去ってしまった。
「シリュー隊長!」
メイリーンは側に控える勇者に合図を出す。
「承知!」
乾坤一擲、跳び上がったシリューは聖剣を振りかざす。袈裟懸け一閃。
宙空に浮かんでいた黒い物体は真っ二つに両断されて落下した。
残ったのは人の頭ほどの大きさ。割れた黒い石。
「これが…、長きに渡り我が国を苦しめてきた者の正体です」
メイリーンはため息混りに呟いたのだった。
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