第30話 大家族になってしまった。
なんか腹が立った。
ので取り敢えずこの記録に書いてある奴らは全員俺の家に強制招待である。
まぁ今の生活に満足している奴はそのままにしておくけど。
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「お姉ちゃん…寒いよ。」
「大丈夫よ、大丈夫だから。」
私達は人攫いに攫われ、そして売られた。
そうして主人となった人間に暴力を受けていた。
だが、奴隷紋のせいで抵抗もできずに殴られるだけだ。
禄にご飯も食べれず、衣服も着れず。
この生活が一生続くのかと思うと、胸が苦しくなる。
死んでしまったほうが楽なのではないか?
「おい、爺さん。」
そんな時だった。
これからもずっと仕え続ける主と出会うのは。
「その子達買うから。」
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よーし。ようやく終わったー。
これで全員買い戻せたんじゃないだろうか。
「飛行」で行ったけどほぼ瞬間移動に近い速度が出ていた。
やっぱり魔力の質と込める量でスキルの効果は天と地の差がある様だ。
全員「瞬間転移」で俺の家に招待している。
まぁ取り敢えず帰るか。
「カデ、これで全員だな?」
「あぁそうだよ。」
どうやら間違いないようだ。
なら良かった。
「あ、あのーなんで私達はまた買われたんですか…」
む、そういえば事情を説明するのを忘れていた。
「え、えーとだな。」
可哀想だったから…くらいの理由しかないぞ。
「まぁ何となくかな?」
うん。ふわふわしてる理由だけどこれでいいだろう。
「皆本当に済まなかった!」
カデ三人組が土下座している。
「お姉ちゃん。もしかしてこの人達私達を売った人じゃ。」
買い戻した子たちが騒ぎ出す。
「俺からも頼む。こいつらを許してやって欲しい。」
少し歯車が狂ってしまっただけなのだ。
人並みの生活を送れていたらこんな事にはならなかった筈だ。
「私はご主人様の言う事に従うよ。」
紫色の髪に、白い瞳の子が言う。
「んじゃわ、私も!」
赤い髪に、燃えるような瞳の子も同調する。
「「「わ、私も!」」」
「ありがとう。皆。ほらカデも泣いてないで。」
「皆、ぼんどうにばびがどう。」
何言ってんだよこいつ。
鼻水と涙でグチャグチャである。
「取り敢えず皆お風呂入ってきてくれ。そしたらご飯にしよう。」
「「「はーい!」」」
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「ちょっと、あなた!」
「ん?あ、体調戻った?」
「お陰様でね。」
「ご飯食べた?」
「食べたわよ。」
一問一答の様な会話だ。
「んじゃ、君は自由だよ。お金なら俺が出すから。」
「え。」
「ん?あぁ金額なら多分大丈夫だよ。俺はお金結構持ってるんだよ。」
「いやちょっと待って。」
「ん?」
「えーと、私はここにいては駄目かしら?」
「……」
「……」
「ど、どうして?好きに生活できるんだよ?」
なんでこの家に居たいとか言うのだろう?
「貴方に恩を返したいから。部屋が足りないって言うならそこら辺の床で寝るしここの雑用とかあなたの役に立つことなら何でもするわ。」
「恩を返すとか別にいいよ?」
「あーもう!駄目なの?駄目じゃないの?どっちなのよ!」
エルフの女の子はそう言いツンッとする。
「君が居たいなら別にいいけどさ。」
「なら決まりね!これからよろしくね。」
「うん。よろしくね。」
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カデ達はその場でまだ泣いていた。
「おーい。お前ら?飯食ったらお前達は自由だけど。どうする?費用なら俺が出すけど。」
「「「え。」」」
3人共驚いた様な表情をしている。
「え?いやだから自由にすればいいんじゃn」
「頼む!あんたに仕えさせてくれ!」
「………」
「え?」
「俺はあんたの人柄に惚れたよ!頼む!雑用でも何でもするから!」
「え、いやちょっと、m」
「頼む!」
「お願いでヤンス!」
「お願いダゾ!」
「あー!もうわかったって!好きにしろ!」
一人のマイホームが一日足らずで4人増えました。
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はぁ。いやまあ別にいいんだけどね?
また新しく土地とか買ったほうがいいだろうか?
賑やかになるのはいい事か。
そんな事を考えながら魔力で服を作る。
奴隷の子たち何人居たっけ?
『合計で8人です。』
んじゃ8着作りますかね。
ガラッ。
風呂場のドアが開く音がした。
「そこにタオルおいてあるからそれで体拭いてー。」
念の為言っておく。
「あとここのカーテン開けたら服置いてあるから、勝手に着てね。」
そう言い、俺はさっさとリビングに戻る。
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何なんだろう?あの男は?
何ヶ月か振りのお風呂に入り本来の美しさを放っている紫色の髪を乾かしつつ、そう考えに耽る。
毎日のように暴力を振るわれていた。
疲れた。死にたいと思っていた。
でもそんな時に彼は現れた。
「この子買うから、白金貨2枚でいいだろ。」
とんでもない程の大金を前の主人に投げつけ
そうして私を美しいとしか言えない家に連れて行ってくれた。
そしてあろうことか、私にお風呂に入れと言ってきた。
奴隷なんかにこんなにも広く豪華な風呂を使わせるなんて何考えているのだろう。
しかも変な形?をしている、蛇口の様な物を捻ったら温かいお湯が流れてきた。
こんなの王族ですら使えないだろう。
これだけでも幾らするか分からないのだ。
「そこにタオルおいてあるからそれで体拭いてー。」
体をどう拭けばいいのだろうか?と考えていたら彼の声が聞こえてきた。
タオルってこれの事か?
そう思い手に取ると。
「何よ。この手触り。」
他の皆もこの質感に驚いているようだ。
これは高級品の絹?だろうか。
でも、触れているととても暖かく感じる。
彼に買われた際に治療されたのだが
その時の彼の魔力と同じ暖かさだった。
どうして彼はこんな得のない事をするのか。
どうしてただの奴隷にここまで優しくするのか。
その根本にある深い優しさを私達は感じた。
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