6 翌日

 みんなで親睦を深める会は楽しかった。


 で、その翌日。

 俺たちは選抜クラスの教室で授業を受けている。


「ねえ、ギル。一つ聞いていい?」


 隣の席のルリアが俺に耳打ちした。


 座学が退屈になって来たんだろうか。


 ルリアって時々こういうふうに授業中に話しかけてくるんだよな。


「この間の模擬戦で、ギルが使った魔力剣――あれって何? あたしも見たことがない術式だった」


 勝負の決め手となった『十二本の魔力剣の同時生成&射出』のことを言っているんだろう。


「あれは俺のオリジナルだよ」

「へえ。ああいうの、他にも持ってるの?」


 ルリアが身を乗り出した。


「あたしもああいう術式、開発しようかなぁ。あれ、すごく強かった」

「はは、本当は対多数用の術式なんだ。試合ではとっさに出しただけだよ」


 俺は苦笑した。


「偶然上手くハマっただけだ」

「ううん。してやられた、って感じだよ。この前はあたしの完敗」


 ルリアが微笑み、それから悔しそうに眉を寄せた。


「次はあたしが勝つからね」

「負けず嫌いだなぁ」


 それでこそルリアって感じだが。


「俺も聞いていいか、ルリア?」

「ん、何?」

「試合でルリアと俺の加速魔法合戦みたいになっただろ? あのときルリアは加速状態からさらに加速した……【アクセラレーション弐型】を使った形跡はなかったけど、なんだったんだ、あれ?」


 俺は彼女を見つめる。

「ルリアのオリジナル術式か?」

「……あれは術じゃないよ」


 ルリアが首を左右に振った。


「えっ」

「――秘密」


 ルリアがまた首を左右に振った。


 その横顔に憂いの表情のようなものが浮かんだ。


 ルリア……?


「女には色々と秘密があるものなの」

「なんだよ、それ」


 俺はキョトンとする。


 もしかしたら、彼女にとって『聞かれたくない何か』だったのかもしれない。

 と、


「そこ、何を話している」


 教官ににらまれた。

 彼女は以前に学園が異界人に襲われた際、その異界人に精神支配を受けていたらしい。


 そのことに責任を感じ、一度は辞表を出したらしいんだけど、学園長に説得されて辞意を撤回したんだとか。


 めちゃくちゃ厳しいけど、授業には真摯だし、生徒想いのいい教官だ。


 ……『一周目』の世界では、異界のモンスターの襲撃の際に生徒たちをかばって殺されたんだよな。


「――変えなきゃな、そういう未来を。全部」


 あらためて思う。


 こうやって『一周目』とは明らかに違う流れで進む学園生活を過ごしなが

ら。


『二周目』の世界は、絶対に滅亡から救わなければと――。







***

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