『時期』
「わたし、時期。今が――時期」
彩乃は伏し目がちに、か細い声でつぶやいた。
「時期? 時期って何の事」
隆生は彩乃のハミケツを元気よくなでながら問い掛けた。
彩乃はもともとハミケツをするタイプだった。が、この頃の彩乃のハミケツ具合は異常だった。下着やズボンの縫い目からすらもハミケツするという有様なのだった。そのため、ジーンズを履いた尻の部分だけぼんやりと淡く肌の色が露出していた。
「わたしの母も祖母も、二十年に一度、大ハミケツの時期が来るの。わたしも――」
「ええと、君は二十歳になったばかりだから……と云うことは初めての大ハミケツの時期なのかい」
彩乃は照れながら目を閉じ、おだやかな波のようにゆったりと曖昧に頷いた。
「赤飯を炊くか」
「ありがとう」
「ようし!」
隆生はキッチンに立つと、小気味良いリズムで米を磨ぎ出した。相変わらず左手に元気よく彩乃のハミケツをこねくり回しながら……。
(了)
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