34. ひろくん

軽自動車でむかえにきたのはひろくん。

32歳。メガネをかけていて、今で言うボブくらいの髪の長さ。茶髪で流していた。


私を見ると「あー写真通り!よかったー」と言う。


美人局で実は怖いおじさんが出てくるかもとか写真と違う人が来るかもなどと警戒していたらしい。


私は世間知らずすぎてそういう当たり前もあるんだと学んだ。


意外にも本当にひろくんは身体を求めず、ご飯を食べさせてくれ、遊びに連れて行ってくれ、帰り際に2万から3万を生活費として渡してくれた。

それも会う度に。「助けてあげるから、こんな事しないようにね。」と。


おかげで身体を売らずに済んだ。

神様だった。


しばらくして普通に恋人同士になる。

16歳と32歳の恋人。


友達にも20ということにして紹介してくれていたし、実家住まいだったがそこにもよく連れていってもらった。お義母さんと二人暮しだった(私と出会った頃お義父さんは癌で他界)が、お義母さんも優しくて、かわいくて、仲良くしてくれていた。幸せだった。


平日は学校に行き、週末や休みはひろくんとずっと一緒にいた。ひろくんはスロプロで生計を立てていたが、当時とんでもなく儲けていた。

私も手伝う事があったが2人で一夜40万ほど儲けた日もある。


とある土日にいつも通りひろくんの家に泊まっていた。

かおりもお友達の家にお泊まりだったらしい。

月曜日の早朝にかおりから電話

「つってる」


急いで帰る。私の家は郡山市。ひろくんの家は福島市。車で1時間ほどかかる。


帰ると既に警察とギャラリー

無表情のかおり


警察に「身元の確認をお願いします。」と言われ

確認しに行く。


お母さんの亡骸を確認。


あれだけお母さんといい仲になろうとしていた塾講師は知らんぷり。なんの手出もない。こんな事になって迷惑ですという感じだった。


誰も知らんぷりの中未成年のわたしとかおりだけ。


市の職員の方たちが手配してくれた簡単な葬式を済ませ呆気なくお母さんは骨壷に収まった。


あんなに辛い生活を強いたお母さんなのに、

ほっとしてないと言うと嘘になるがいざ亡くなると涙が止まらなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る