29. 誰にも言っちゃダメよ

中2もそろそろ終わりという頃。


かわしまと離婚する、福島県で面倒を見てくれる人がいるから引っ越す。


「引っ越すことも、引越し先も誰にも言っちゃダメよ」と念押しされていた。


小学校から鼓笛隊、中学校で吹奏楽に入った私はそれなりに楽しく、熱心に部活に通っていた。


割と強豪だったので全国大会へ出場するようなこともある部だった。


どうせ穴を空けてしまうので、土壇場は申し訳ないと思い引っ越すと告げられて直ぐに退部の意思を伝えた。顧問はすんなり受け入れたが部長は熱烈に止めに来た。私にやめて欲しくない事が2割、退部をとめたという手柄の欲しさ2割、こんな説得しちゃう私に酔ってる6割って感じのドラマチックな止め方だった。


正直こいつのいい子ぶってる(影で後輩を悪くいう)所が大変好かなかったので頑なに断るのが少し楽しかった。


しかし他の部員や、担当楽器の先輩はいい人が多く

担当楽器の先輩の卒業コンサートでは泣きすぎて上手く楽器が吹けないくらい懐いていた。


私も退部するのは本意では無いので切ない気持ちではあった。


いざ引越しの日。

かわしまとは慰謝料はなし、家の引き払いはかわしまの担当。ということであった。


今まで家事炊事をほとんど私がしていて

私たちのためにはしてくれなかったお母さんが


かわしまが引き払う家のためにそれは綺麗にゴミなどをまとめていた。


かわしまが引き払うから掃除なんてせんでええやんと散らかしまくっていたのに。


正直腹もたった。


じゃあ、駅に向かおうか。とタクシーに乗り込む瞬間に「あっ!忘れもんしたからとってくる!!」とかおりも連れて部屋に戻る。


かおりと2人、できる限りのゴミ袋を破って中身をぶちまける。


出てきたタオルや衣類を排水溝に詰め込み、全ての水栓を開ける。


爪楊枝、ドックフードやキャットフード、ばらまけるものはばら撒く。


皿は投げる、割る、壁に穴を開ける。


ものの10分程度だと思うがとんでもなく大暴れして散らかしまくった。


電気も全てつけて部屋を後にした。


団地だったので、下の階の人には水漏れなどでご迷惑をお掛けしたかもしれないが、かわしまへの怒りはこんなものでは晴らせない。しかしもう二度と会うこともないであろうかわしまへの最後の復讐だった。


後日、福島県へ着いたあとのお母さんの留守電に「あれはいくらなんでもやりすぎやろ!!」と怒りのメッセージが入っていたがお母さんは「なんやこいつ、、、」となって無視していた。

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