第20話 安藤との通話
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「……アキがカミシロ山へ行ってる?」
『う、うん……。うちのクラスで話題になってるんだけど、ナツくんって幽霊の噂って知ってる?』
「知ってる」
カミシロ山の名前が出て来た時点で、幽霊の噂が関係していることはナツにも察しがついていた。
『そっか。それで今日、一緒に帰ってる時に典子がカミシロ山付近に行こうって誘って来て……』
「アキは行くって言ったのか?」
『ううんっ。アキも私たちも注意したから典子はすぐに諦めたよ。そのまま真っ直ぐ帰ったはずだし……。でも……』
「安田典子は家に帰って来てない」
『うん。えーと、鞄とかはあるから一回は家に帰って来たんだろうって典子のお母さんが言ってて……』
アキと同じ状況に、ナツの眉間に皺が寄る。
『ねぇ。典子とアキがカミシロ山へなんて行くわけないよね?』
「さぁな」
『ナツくん、否定してよ……』
「なぁ。なんで今、この時間帯なんだ?」
『え?』
「親がいるならもっと早く子どもを探すはずだろ。19時過ぎても帰って来なくて焦り出したのか?」
『典子は門限ギリギリに帰ることが多いからね。最近は遅くても18時半には帰ってるみたいだから、30分くらい前に典子のお母さんが私たちの家に電話して来て発覚したの』
「そうか」
『アキのスマホにも電話したりL*NEしたりしたんだよ? でも全然既読にならないから今、家電に電話したってわけ』
アキは除け者にされたわけではないようだ。
「アキのスマホは今、自室にあるから繋がらない」
『えっ、そうなの? もうっ、何やってるのよ!』
「オレに言わないでくれ」
『あ、ごめん。……と、L*NEかなり来てる』
ナンバー・ディスプレイを確認してなかったが、安藤も家電から掛けて来たようだ。
「なぁ。アキも帰って来てないこと伝えてもらって良いか?」
『え、お母さんってまだ帰って来てないんでしょ? バラして大丈夫なの?』
「此処まで来たら隠し通せねぇよ」
『それもそっか。えーと、それならどうしよ?』
「何が?」
通話が終わると思ったのに、安藤はまだ何かあるらしい。
『アキが帰って来たとか何か分かったら私に連絡して欲しいんだけど、私、ナツくんのL*NE知らないや。アキのスマホは……ロック掛かってるよね?』
「今みたいに家電で良いだろ」
『あっ、分かった。佐々木だ! ナツくん、佐々木と仲良かったよね?』
「だれ?」
『佐々木静流!』
ナツは『別に仲良くねぇよ』という言葉は飲み込んだ。
『何かあったら佐々木にL*NEして。佐々木も今、情報提供手伝ってくれてるの』
「3組を巻き込むな。それに……」
『じゃ、そういうことでナツくんお願いね!』
「あっ、おい!」
ナツの意見を聞かず、安藤との通話が終わった。
「……ったく、面倒なことになった」
ナツは頭痛の範囲が広がった気がした。
そして、
「カミシロ山へ行ったかはまだ分かんねぇけど、アキと安田典子が一緒にいる可能性が高いな」
もう少し情報が欲しいナツは、スマホを操作するのだった。
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