第14話 探索

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 アキと典子はカミシロ山付近を探索していた。

 カミシロ山へは入らずに、目凝らしながら幽霊を探していた。


「ねぇ、のりちゃん」

「なぁに?」

「のりちゃんってさ、霊感ある人?」


 幽霊を探すといっても、幽霊が見えなければ意味がない。

 幽霊を見るには霊感が必要となる。

 霊感とは簡単に言うと幽霊を確認出来る能力のことで、詳しく解明はされていない。

 霊感がある人の幽霊の確認方法も人それぞれで、【見える】【聞こえる】【感じる】などがあるようだ。


「私? 霊感あったら良かったなぁ~」

「ってことは……」

「私に霊感はない! アキは?」

「あたしもないんだけど……」

「え、そうなの?」


 霊感がない同士が幽霊を探していたという事実に気付く二人。


「嘘でしょ、のりちゃん。霊感ないのに探索しようって言ったの?」

「だってぇ~。幽霊を見ることはなくても別の収穫があるかもしれないじゃん。目の前にカミシロ山があるんだよ?」


 アキが顔を上げてカミシロ山に目を向けると、木々が生い茂っていて先は見えない。

 空は暗くなって来ていて、夜に近付くにつれ不気味さが増していくようだ。


「明日、学校行ったらみんなに自慢しようよ。楽しみだね!」


 アキとは違い特に何も感じないのか、典子は楽しそうだ。


「自慢というかみんなに報告するの自体止めようよ」

「どうして?」

「カミシロ山には入ってないけど、今はその前まで来てるし。バレたら先生たちに怒られるよ」

「大丈夫だって! アキは心配性だな~」

「のりちゃん、もう家に帰ろう」


 此処でやっと、アキは典子へ『帰ろう』と言えた。


「えぇっ。もうちょっと良いじゃん~」

「ダメ。今、何時か分かんないし。今は19時までとはいえ、帰りが遅いとのりちゃんのお母さんとか心配するでしょ」

「分かった分かった。そういうアキだって、ナツくんと親が心配するんじゃない? あっ、お父さんは単身赴任中だっけ?」

「うん。お父さんとはしばらく会えてないんだ。お母さんは心配するかな? ナツは心配というより怒ると思う。今日も夕飯作るのナツになっちゃった」

「料理作れるお兄ちゃん良いなぁ~。私もナツくんみたいなお兄ちゃん欲しい~!」

「うるさいだけだよ」


 アキは典子の手を引いて踵を返す。

 典子は嫌がらずにアキと手を繋ぎ直して歩いている。

 何も収穫がなかったが、何も起きないことが一番良い。


(ナツ、怒ってるかな?)


 スマホを持っていないから、今何時か知ることが出来ない。

 確認はしてないが典子もアキと同じく一旦は家に帰ったようで、手ぶらだった。


(早く帰ろう)


 歩く。

 歩く。

 歩く。


 カミシロ山は私有地の山だが大きさは広く、カミシロ山付近でも距離はあった。

 行きは何とも思ってなかったが、アキと典子は結構な距離を進んでいたようだ。


 歩く。

 歩く。

 歩く。


 複雑な道はなく、ただ来た道をそのまま戻れば良い。


「あ、れ……?」

「どうしたの、アキ?」


 典子と手を繋ぎながら歩いて、歩いて、歩いて。

 アキはあることに気付く。


(さっきから景色が変わってない、気がする……)


 結構な距離を歩いたのに、土栄どえい中学校の校舎が見えないのだ。

 目と鼻の先ではないが、カミシロ山は土栄中学校の裏にある。

 行きは見えなくても、戻る時に土栄中学校の校舎が見えないとおかしい。


「………」


 そのことに気付いて、アキは自分の顔から血の気が引いていくのが分かった。


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