第13話 バイブ音
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家に帰って来たナツはいつも通りに夕食の準備をしていた。
オムライスを作るから米はいつもよりも多く炊いて、炊き上がった米でチキンライスを作った。
ナツは具なしのシンプルなチキンライスが好きだが、アキはたまねぎや肉などが入った具ありのチキンライスが好きで好みが違う。
入れる肉も豚肉か鶏肉かでも喧嘩するくらいで、ナツとアキにとってオムライスは面倒くさいメニューの一つだった。
そんな中で今日、ナツが作るチキンライスはアキ好みの方だ。
「帰って来ねぇ」
ナツが時計を見ると、18時を過ぎていた。
上本家に門限などは特にないが、帰宅部のナツとアキは家にいる時間帯だ。
友だちと遊ぶ時などは、行き先・目的・帰宅時間を報告してお互い把握し合っていた。
ちなみに
「既読つかねぇ」
スマホでアキへL*NEしても、既読にならずにイラつくナツ。
今度はアキのスマホに電話を掛けて見る。
ブーッ、ブーッ、ブーッ
「ひっ!」
何故か家の中からバイブ音がして、びくつくナツ。
「な、なに……? 何処から……?」
ブーッ、ブーッ、ブーッ
鳴り続けるバイブ音。
怖くなって、ナツはスマホの電話発信を中断してしまう。
すると、バイブ音は止まった。
「……き、気のせいか」
再度、アキのスマホに電話を掛ける。
ブーッ、ブーッ、ブーッ
また、家の中からバイブ音が鳴った。
「っ、まさか……」
次は電話発信は切らずにスマホを持ちながら、ナツは恐る恐るアキの部屋へ向かった。
ブーッ、ブーッ、ブーッ
ナツがアキの部屋に入ると、学習机の上にスマホが置いてありバイブ音が鳴っていた。
「あのアホ! スマホ持たずに出掛けやがった!」
バイブ音の正体が分かって安心する反面、アキがスマホを所持してないことが判明してナツは頭が痛くなる。
「……流石に19時には帰って来るか。いくらアキでも校則を破ることはしねぇだろ」
スマホの電話発信を中断して、アキの部屋から出るナツ。
「薄焼き卵破れたら、アキのにしてやる」
まだ焼いていないオムライスの卵。
ナツにはまだオムライス店のようなチキンライスの上に乗っている厚みのあるオムレツは作れないし、そのオムレツを縦に切ったらふわとろ卵が広がるというのは夢のまた夢。
ナツの作るオムライスは盛り付けたチキンライスの上に薄焼き卵を乗っけるシンプルなものだ。
一般家庭では多いオムライスの作り方ではないかと思う。
「母さんは今日、20時過ぎには帰って来るんだから早く帰って来いよな」
ナツの一人言はアキには届かない。
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