第6話 2年1組の様子

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 ナツが佐々木から幽霊の目撃情報の噂を聞いた時間とほぼ同時刻。

 2年1組の教室でアキも同じように幽霊の目撃情報を級友の女子から聞いていた。

 ナツの予想通りに2年1組では噂好きの女子たちで幽霊について話が盛り上がっていた。

 黒髪のロングで、口の左下に黒子ほくろが3つある女性の幽霊。

 その幽霊を見てみたいという意見が出た。


「ねぇ、行っちゃう?」

「え、でも……」


 中学生は好奇心旺盛で多感な時期だ。

 やるなと言われればやりたくなるのが人間の性だ。


「その幽霊の目撃場所って、カミシロ山付近なんでしょ?」


 カミシロ山。

 その場所は土栄中学校の裏にある私有地の山で、山奥には小さな祠が祀られている。

 関係者以外立ち入り禁止で、《男子禁制》の山である。

 男性がカミシロ山へ足を踏み入れるとその者は呪われると言われていた。

 しかし《男子禁制》ならば、女性は足を踏み入れても大丈夫というわけではない。

 私有地の山なので、無許可で入ったら不法侵入になってしまう。


「私たちは女だから呪われはしないけど、もし侵入してカミシロ山の所有者に見付かったらやばくない?」

「その時は素直に謝れば良くない?」

「バカね、学校に連絡されるじゃん」

「親にもバレて先生たちと一緒にお説教のパターン」

「うわ、きっつ」


 土栄中学校では、性別関係なくカミシロ山へは足を踏み入れてはならないと注意喚起を呼び掛けていた。

 生徒は各家庭でも親から耳に胼胝が出来るほど聞かされていた。

 2年1組の女子たちの家でも例外ではなかった。


「見付からなきゃ大丈夫だって!  ねぇ、カミシロ山に行ってみようよ」

「やだよ。親に怒られたくないし」

「うちは下手したらスマホ没収されちゃう」

「それ、一番嫌かも」


 カミシロ山へ行こうと誘う女子に対して、乗り気でない女子が多かった。


「ノリ悪いなぁ。怖いの?」

「怖いっていうか……」

「ちっちゃい頃からお母さんたちがしつこく言ってるでしょ? 呪われないはずの女の人も行かないのはそれ相当の理由があるんだよ」

「いや、そもそもカミシロ山は私有地の山なんだってば」


 足を踏み入れてはいけない理由は明白なのに、それでは行きたがる人間がいるのは何故なのか。


「つまんないつまんない! ねぇ、アキは行くでしょ?」

「え?」


 自分の名前が呼ばれ、顔を上げるアキ。

 先程から女子たちの会話を聞いてはいたが、話してはいなかった。


「どうしたの、アキ。なんか難しい顔してるけど」

「アキって幽霊ダメだっけ?」

「ううん、平気」


 アキは幽霊の類いがダメなのはナツであることを言うつもりはない。


「ごめん。あたしもカミシロ山へ行くのは遠慮したいかな。うちはお母さん、怒ると怖いし」

「そんなぁ~」

「ホームルーム始めるぞ、お前ら席に付けー」


 アキが誘いを断ると、担任が教室に入って来たので女子たちは急いで自分の席へと戻り、話は終わったのだった。


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