第5話 考えるナツ
.
(さて、どうすっかな)
授業中、級友の佐々木から幽霊の目撃情報を聞いたナツは考えていた。
幽霊の目撃情報は2年3組だけの話題ではなく、
最初に何処の誰が幽霊を目撃したのかは判明しておらず、噂が一人歩きしている節があった。
(黒髪ロングの女の幽霊の目撃情報なんてごまんとある。幽霊なのに
誰かが『幽霊を見た!』と言っただけで伝言ゲームのように広がって噂になることなんてよくある話だ。
そのため、誤報の可能性が高い。
ナツにとっては幽霊の目撃情報が嘘でも本当でもどうでも良かった。
ナツが気になっているのは、目撃された幽霊の姿が姉・
(顔に黒子が多い人もいるけど、口の左下に黒子が3つあるなんて具体的過ぎるだろ)
“顔”に黒子が3つではなく、“口の左下”に黒子が3つ。
黒子の位置がピンポイントで目撃された幽霊に当て嵌めているのがナツは納得がいかなかった。
(口の左下に3つ黒子がある人はそんなにいない。幽霊の正体は
もしかしたら口の左下に3つある黒子の位置は縦や横に一列に並んでいるかもしれない。
まばらについてるかもしれない。
幽霊の黒子の位置を考え出したらキリがなかった。
(つーか、何でオレが幽霊について考えなきゃいけねぇんだよ! 考えて寄って来たらどうすんだよ。くそっ、佐々木が余計なこと言うから怖くなって来た……)
頑として認めないが、ナツは心霊現象などの怖い系が大の苦手だ。
テレビの心霊番組など明らかに創作だろうと分かる映像でも見るのが嫌で避けている。
今だって本当ならば幽霊について考えたくないのに姉が関係しているかもしれないと思うと、いつものように避けることは出来ず怖くても考えなければならなかった。
(……違う違う。今、最優先で考えなきゃいけないのはアキだ。学校全体に広がってるなら、アキだって噂を聞いてるはずだ。アキのクラスの女子は噂好きが多いから盛り上がってるだろうな。オレが思い浮かんだなら、アキだって幽霊の正体が姉ちゃんかもしれないって思い浮かべたはずだ)
双子だからか、ナツとアキは考え方や感じ方が似てるところがあった。
(……いや、アキはアホだからな。アキのことだから噂をただ聞いて終わるか。オレの考え過ぎか)
教師の板書をノートに書き写しながら、考えを巡らせるナツ。
「………」
そんなナツを佐々木が心配そうに見ていることをナツは気付かなかった。
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます