第4話 姉

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 ナツとアキには6つ上に姉・来々美ここみがいた。

 共働きで忙しい両親に代わり、ナツとアキの面倒を見てくれたのは来々美だった。

 二人が幼少期を思い出すといつも側にいてくれたのは両親よりも来々美で、面倒見が良くて優しい来々美がナツとアキは大好きだった。


 来々美は黒髪を胸下まで伸ばしていて、チャームポイントは口の左下に3つある黒子ほくろだ。

 3つの黒子を線で繋げると三角になると、来々美本人は気に入っていた。

 ナツよりも来々美に懐いていたアキは来々美の真似をするのが好きで、来々美と同じ位置に黒ペンで口の左下に黒子を描こうとして失敗し、油性ペンだったので洗っても取れないと大泣きしたのは良い思い出だ。

 来々美と同じようにアキも髪を伸ばすのかと思ったが、来々美が『秋乃はショートの方が似合う』と言ったことでアキはショートヘアを貫いていた。


 そんな来々美が行方不明になったのは6年前だ。

 当時、小学2年生だったナツとアキが小学校から帰宅したのを確認してから、買い出しに行くと告げて帰って来なかった。

 いつもなら3人で一緒に買い出しへ行っていたが、その日は雨が降っていて滑ると危ないという理由で、ナツとアキに留守番を頼んで来々美は一人で買い出しに行ってしまった。

 天気が悪い日の買い出しはそうしていたので珍しいことではなかった。


『万夏、秋乃。おやつ買って来るから良い子で待っててね』


 二人にそう言って、家を出た来々美。

 ナツとアキは『行ってらっしゃい』と声だけ掛けて、宿題をしていた。

 来々美の顔は見なかった。

 ナツの視界の端に映ったのは制服を来た来々美の後ろ姿。

 それが最後に見た来々美の姿だった。


 一時間経っても来々美が帰って来ない。

 雨だから時間が掛かっているんだろうと、宿題が終わった後は二人でテレビを見たり漫画を読んだりして来々美を待っていた。

 だけど、二時間経っても三時間経っても来々美は帰って来なかった。

 両親の勤め先に電話しようかと二人で話し合ったけれど、両親から緊急時以外は電話するなと言われていたので止めた。

 ナツとアキが不安になっていると、母親が帰って来て来々美が帰って来ないと泣きながら伝えた。

 母親は急いで警察へ通報し、女子中学生がいなくなったことは深刻な事態になった。


 警察により懸命な捜索が行われたが、来々美が発見されることはなかった。

 警察が最後に来々美と接触していたナツとアキに来々美の状況を聞いても不審な点はなく、捜索は打ち切りになってしまった。

 6年経った今でも、来々美は行方不明のままだ。


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